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嵐山愉楽 [散歩・散走]

今日は祝日、春分の日。
「自然を讃え、生物を慈しむ(愛しむ)」ための休日なのだとか。
今年は桜の開花が早いとのことで、ここ京都でも16日に開花宣言されて、それを聞くと矢も盾もたまらず思い立ったが吉日で、きょうのお庭巡り&きょうのミュージアム探訪と合わせて、夜明けとともに独り花見と参ります。


平年よりも12日も早く、史上最速となる桜開花宣言。そう言われると、いわゆる地球温暖化の影響かしらとも思ってしまう。
開花といっても満開の見頃にはまだ遠く、お花見には時期尚早かもしれないが、盛りの頃は混み合って花盛りより人盛り、言われるところの「密」になっちゃう恐れもあって、一足お先に、まだ誰も来ない時期のまだ誰もいない時間にお花を独占しちゃおう作戦。

今日のお散歩の本来の目的地はお庭とミュージアム。
ではあるのですが、どうせ脚を運ぶのなら色々と欲張っちゃおうと、暗いうちから起き出していの一番に嵐山
ええ、自粛だなんだといっても京都では一二を争う観光スポットで、衰えたとはいえ混み合う昼日中はウロウロしたくないところ、出来ない場所。人影まばらなうちに、お目当ての場所がオープンするまでの間に、お花見がてら今日のお散歩、朝の散策を楽しみます。

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まずは竹林の小径へ。
竹の秋にはまだ間があるのでしょうか。ワタシの背丈の14~15倍ほども丈高く伸びた孟宗竹は青い葉を繁らせて、その足元にの気配もない。
春になったとはいえまだキンと冷たい風の中にシュッと伸び上がる竹林が俗念や余念を払うフィルターのようにも見えて、その中に続く小径は真理へ至る正念の道にも思えて、そこを行くだけで糾されるように感じます。
姿こそ見えないのだけれど、そこここからウグイスやメジロ、ホトトギスなどでしょうか、リハーサルめいたぐぜり鳴きから正しくチューニングされた正調の初音を披露し合って、法法華経に長忠兵衛、本尊掛けたか、さながら早朝の歌合戦。
若竹色に老竹色、緑のグラデーションに色を重ねるのは椿の花。透明感のある白は瑞々しく、春めいた乙女色はいかにも愛らしい。


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始発は9時ごろ? てか、運行しているのでしょうか?


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髪は長い友達というし、またロング・ヘアーにしましょうかね。えッ、そういう意味じゃない?!


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大河内山荘の脇を掠めて、トロッコの駅から御髪神社
そのままハイキングコースを辿って行くわけにもいかず、そこで折り返し。途中で折れて、亀山公園へ。
人影なく閑散とした園内の所々、木々の合間に歌碑、『小倉百人一首』を刻んだ石碑が置かれる。
鎌倉時代の初め、藤原定家が選んだ秀歌撰、それを選定されたのがこの辺りにほど近い小倉山の山荘であったことから『小倉百人一首』と通称され、その所縁から後世に「小倉百人一首文芸苑 屋外展示施設」として100の歌碑が作られ、そのうちの49首がここ亀山に置かれる。
石に刻まれるのは定家さんの墨蹟を写したものか、連綿体のくずし字は読めなくて、これでは歌留多は出来ません。

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嵐峡
の上に突き出す展望台からの眺望は、一部にが混ざるモザイクあるいは迷彩柄めいた山肌と眼下の川面。
先ほど通ったトロッコ嵐山駅に発着するトロッコ列車(嵯峨野観光線)や保津川を下る観光船を見下ろすことが出来るが、トロッコの始発まであと2時間余も待たなければいけない。川下りがスタートするのも多分その頃でしょう。ってか、このご時世にどちらも運行しているのかしら?
あとの予定もあって、そんなには待っていられない。殊の外寒いし。
それでも、麗らかな陽光を受けて、動くものがない静かな渓谷の風景の中、花に囲まれ鳥の囀りや鳴き声を聴いていると、ヴィジュアルを受け持つのがお花で、それに吹き替え、ヴォーカルを担当するのが鳥たち、さながら野外ライヴのようでもあって風流韻事、都人を真似て歌のひとつもひねってみようかと思ってしまう。

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水鳥がまだ眠るのか、水温が低くて川面に遊べないのか、岸に屯ろする桂川(保津川大堰川)まで下って時間調整。09:00になるのを待って、お庭の散策。
今日、03月20日から特別公開となった大本山天龍寺塔頭 大亀山宝厳院獅子吼の庭」を訪ねます。
1461(寛正02)年、細川頼之聖仲永光を開山に招聘して創建された臨済宗天龍寺派の寺院。
借景回遊式となるそのお庭は室町時代の禅僧策彦周良禅師によって作庭されて、江戸時代の京都の名所名園を収録した「都林泉名勝図会」にも掲載されるという。
残念ながら策彦さんがデザインされた当時のものは応仁・文明の乱で焼失し、桃山時代に豊臣秀吉によって再興されるが、明治になって天龍寺塔頭、弘源寺内に移され、2002年に現在の旧妙智院跡地に移転された、古くて新しいお庭。まァ、京都中のお庭の大半は似たような状況で、オリジナルが残る方が珍しいでしょう、多分。
それでもその設計思想に手を加えられてはいないはずで、巨石も焼けたりしないはず。
昨年も一度訪れたのですが、それは暑い最中。春には春の風情があって違う面持ちとなるのか、お庭のそこここに配置された巨石に込められた意匠がまだ理解し切れていなくて、今日の再訪。


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枯山水「苦海」全景


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「舟石」の目指す先は「瀧門瀑」あるいは「三尊石」


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三尊石」の前に叩頭くのは「獣石群」。小さな獣たちが大獅子になりたいと願い・・・


平安時代から続く庭園様式のひとつ、枯山水。ここにもそれがデザインされているのだけれど、用いられているのが砂や小石ではなく、他と異なり直径100㎜ほどの持ち重りがしそうな丸石で、そこに見立て、風な石製フィギュアを並べることで小さな世界を形作っている。
それは「苦海」とタイトルされて、そこを渡るための「舟石」が手前に置かれ、舳先が目指すのは「瀧門瀑」で、「鯉魚石」はすでにそこに至っている。
中国、李膺の故事、『登竜門』を造形化したのはともかく、石造りの瀧に沿う「観音石」に加えて、その右側に三つ並んだ「三尊石」と「獣石」。
観音さま一尊でも尊いものを両侍を加え、三尊像として、御利益三倍増?
鯉に加えて獣がいるのは、庭園中央に控える「獅子岩」との関連で、「獣石」が「三尊石」のご利益によって「獅子岩」となったというストーリーを見立てているのでしょう。鯉が瀧を登って龍と成ったという故事からの変相で、テーマとヴァリエーションが重なる。
獅子岩」があってこそなのでしょうが、それを「苦海」の近くに置かず離れたところにあるというのは、距離の隔たりは時間の隔たりで、三尊のお力を以ってしても百獣の王となるのは簡単ではないということでしょうか。
三尊石」も「苦海」の淵ではなく、少し離れた場所にあって、お導きの「舟石」は用意されていても、苔で覆われたお庭全部が「苦海」から続く広大な海原を表しているようにも思えます。穏やかに凪いで揺蕩うような海面。
舟石」が「瀧門瀑」や「三尊石」までは運んでくれるけれど、そこから先は自分の力ということなのでしょうか。そうなら、とても広大で、穏当、平穏に見てても果てしなく、解脱は仏の助けだけでなく、自ら時を掛けてということを表しているのかも知れません。


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「碧岩」、これは?


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威風堂々、風格の「獅子岩」


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銘は無いのだけれど、見ようによっては小さなライオン? 仔獅子?


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「座禅石」。これだけ苔むしているということは、どなたも座られていない?


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苔むすお庭は静謐の次元で、泰然自若、明鏡止水の境地に遊ぶ巨きなライオン。季節が変わり、周りの樹々が色相変化しても行運流水、惑わされることなく端然と過ごす。
では、「碧岩」の役割りは?
バブリーに沸き立つ海面か荒波にも見える「苦海」の丸石がコロナ禍にある現状を示すようにも見えて、穏やかな苔の海、その平穏な心境に至れない今、このお庭が示すものがちょっと感慨深く感じられます。
僅かばかりのことで戦々恐々としないよう、ライオン・ハートを持ちたいもの。
座禅石」の上で只管打座していようかしら。あら、ま、それではお宗旨が違う。


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シデコブシことスター・マグノリアの類でしょうか?


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間違いなくシダレザクラですよね?


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花びらの形が利休さん好み? 侘び寂び? リキュウバイ。


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渋好みな黒椿。マルグリット・ゴーティエも吃驚!?


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こちらにもこの時期に花をつける植物があって、今咲いているのは枝垂れ桜四手拳利休梅、そして黒椿シデコブシリキュウバイも花びらの形がとても特徴的で、茶人に好まれ千利休の命日に咲くと言われる利休梅はウメと言いながらバラ科ヤナギザクラ属。にもにも、見えるような見えないような・・・。
クロツバキもちょっと異様に見えて、春らしくない暗赤色。


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「この竹垣に竹立てかけたのは竹立てかけたかったから竹立てかけた」 様々な形式の竹垣が見られます。


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お茶室は無畏庵と青嶂軒。大正時代の作。


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お役を終えた渡月橋の親柱


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策彦
さんのデザインではないものも配置されていたりもするが、まァ、それもご愛嬌。石に教わり、花に癒されすればそれで結構。
そろそろいい時間になって、随分と暖かくなってきました。すぐお隣りの嵐山嵯峨文華館へ参りましょう。

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リニューアルされる以前は百人一首ミュージアム「百人一首殿堂 時雨殿」と名乗った、小倉百人一首や日本画をはじめとする京都ゆかりの芸術・文化を展示、振興するための施設。
こちらで現在開催中の企画展が『絵でよむ百人一首と源氏物語』。
1月末の開催予定がコロナ禍の自粛要請を受けて、今月8日からの公開となった催し。
百人一首」の世界を描いたかの様な、和歌に紐づく日本画の名品や歌仙絵。また、「百人一首」に選ばれた歌人のひとりである紫式部に因んで、『源氏物語』に関係する屏風などを展示するエキシビションで、千年以上の時を超えた魅力あふれる貴族文化の一端と、近世・近代の画家たちによるコラボレーション、一種の見立て、古典文学のヴィジュアル化。

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嵐山嵯峨文華館
は、一階に常設展示ギャラリーを含む3部屋の展示室とカフェ、ミュージアムショップ、二階は120畳の畳ギャラリーになっていて、「百人一首」に関する常設展示もあり、折りに触れて競技かるたや講演会も開催される由。
今回の企画展『絵でよむ百人一首と源氏物語』では、1F展示ギャラリーが<第1章 絵でよむ百人一首>の会場となり、2F畳ギャラリーが<第2章 源氏物語の世界>に当てられる、二部構成。


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百歌仙揃い踏み(半分ばかり座ってはるけど)


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ご本人のみならず、そのお住いが光源氏の邸宅「六条院」のモデルとなったとされる源家の融さん。


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どことのォ、しもぶくれのお貌がうちの奥方さまにも似ているような清少納言。女性はふくよかな方がよろしい・・・ということにしとこ。


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おやッ、ニューヨークでジャズ・ピアニストにならはったと思てたのに、こんなところに居てはったん?!


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ケースまでゴージャスな江戸時代のかるた。金よ、キン!! Gold!!!! 勿体無うて遊べしまへん(庶民感覚?)


そのエキシビションが「百人一首」に関連することもあって、常設展のお部屋から拝見します(全ての展示室で各々一部が撮影可能となっています)。
常設展ギャラリーには、片方の壁一面に小さなフィギュアが100体並び、反対側はショー・ケースが置かれ折々の展示品が陳列される。古いかるたが数組とここで開催される競技かるたで授与される記念扇などなど。
100体のお人形は「百人一首」に選出された、定家さんご推薦の歌人の方々のお姿。歌仙絵や肖像画から写された立体像。大体1/10スケールくらいでしょうか。お顔が似ているのかどうかは定かでは無いのですが、それぞれお召し物もリアルに再現されて、それが100も並ぶのですから見応えたっぷり。艶やかなお衣装の女性像が少ない(21体)のがちょっと残念。
各々背景が金屏風ならぬ、お歌を記したボードになっていて、もちろん1番の天智天皇から100番の順徳院まで揃って、公園の石碑と違ってここでは活字体、英訳まで添えられて全然読み易い。
100体のお人形を観て、百首歌を詠んでいると、それだけで随分と時間を費やしてしまい、肝心の(?)97番・権中納言定家さんや57番・紫式部さんを撮り忘れてますがな。

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隣りのお部屋に移動すると企画展ギャラリーで、紅梅白梅を描いた二曲二隻一双の屏風は川合玉堂のお作。
今回の展示は「百人一首」が主題で、そこに読まれるものをビジュアル化すると・・・という見立て。「紅梅・白梅屏風」に当てられるのは、第9番・小野小町・・・でしたっけ?
その向かい側には横山大観霊峰春色」。横に並ぶのは児玉希望杜鵑」。

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次の部屋へ移ると、定家さんがお書きになったと伝わる「小倉色紙」から2点。
軸装された速水御舟雨中の桜」や冨田渓仙八重山桜図」、川合玉堂翠渓帰樵」などなどが並び、池田孤邨三十六歌仙図屏風」や木村武山大宮人」などがそれに連なる。

これらの歌が詠まれた頃から定家さんが秀歌撰とされた頃までは、百首歌から翻案、二次創作された風景画や静物画などはほとんど存在せず、ごく一部のヒトだけに知られた、秘かな愉しみだったのでしょう。
歌かるたに描かれるのは歌仙の肖像画で、歌に詠まれた風景や事象、人物や生物を絵画に写そうとはあまりされなかったのか、今回展示されるのは主に近世〜近代になって描かれた日本画。近しいテーマを詠んだ歌と描いた日本画を組み合わせて鑑賞しようと、千年の時を超えたコラボレーション。
一つひとつ拝見してみると、三十一文字の方が感情の発露が大胆で躍動的、絵画の方がそれを抑えて静謐な印象を受けました。よりコンテンポラリーな絵画から近しいものを拾ってみればまた違った風趣、味わいになったのでしょう。

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お二階の畳ギャラリーへ進みます。
履物を脱いだその先は、左手に嵐山大堰川を望む窓が並び、右手に120畳の大広間。窓からの眺望も絵のようですが、ギャラリーの3面に展示される「源氏物語の世界」は雅やかで華やか。

江戸時代の絵師、狩野山楽が描いた「源氏絵」。それが、拵えも豪華な六曲二隻一双の金屏風に貼られた「源氏物語 押絵貼屏風」。
源氏物語』の各帖から象徴的なシーンが描かれて、長いストーリーのプロット、ダイジェストのようでもあって、紙芝居的。どの帖から切り出したか、ヒントがあればワタシでも読み解ける。
山楽さんは、秀吉さんの命によって狩野派に名を連ねることになった、元は武士。狩野派の多くが徳川方に従って江戸に下る中、京都に止まり京狩野の系譜の礎となったお方。数奇な運命を経て、豊臣家が滅んだ後は松花堂昭乗さんに匿われ九条家の恩顧を得ることになったのですが、この屏風を作らせたのは、さて、誰なんでしょうね。
源氏絵」を読むのも、そうした来歴を推し量るのも面白くて、この屏風の前で相当な時間端座していたでしょうか。脚がしびれちゃって立てないくらい・・・。

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同じく押絵貼の六曲二隻一双の金屏風に貼られた「源氏絵」は作者不詳。描かれるシーンは山楽さんのお手になるものとは異なるのですが、枚数は同じ。ブームがあったのか、これが定番のスタイルなんでしょうか。まずこれが飾れるお部屋があるというだけで贅沢ですよね。

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軸装された「源氏絵」は、三幅対が1組に二幅対が1組。土佐派藤原光貞が描いた「在原業平大納言経信伊勢大輔」と狩野派玉圓永信源氏五十四帖図」。
光貞さんが描いた三対の肖像画は「百人一首」と「源氏物語」を関連づける人物画でもあるのでしょう。
永信さんの方は、比較的細長い2枚の絵の中に五十四帖をギュギュッと圧縮。人物は描き込まれず、お屋敷やお道具、庭の様子だけを現した「留守模様」。
誰がどう動いたかを想像するのでしょうか。まさか、お人形遊びの書き割り背景に使ったのでしょうか。

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同じく「留守模様」はもうひとつ。こちらは狩野興也による巻子「源氏物語六条院庭園図巻」。
光る君が准太上天皇となった以降に暮らした、元は六条御息所のご邸宅跡。前東宮妃がお亡くなりになった後、そこを譲り受け、拡張工事されて、春夏秋冬をそれぞれモティーフとする四町からなる、壮大で豪華を極めた六条院
江戸期ともなり、江戸へ下っちゃったヒト達やのちに江戸に生まれたヒト達にとって、都の暮らしぶりは想像するにも手掛りとなるものが必要だったのでしょう。その頃には都は大半戦火に焼かれ、荒廃してしまっていたでしょうから、大宮人の雅びな生活様式も凋落しちゃって・・・。
源氏物語』を読みながら、光る君や多くの女性が暮らし遊んだお庭はどんな風だったのだろうと想い描くための儀形が欲しかったのでしょうね。
多くの写本が作られたうえ、『源氏物語』をビジュアル化する「源氏絵」。登場人物のプロフィールを紹介する「源氏系図」。そのライフスタイルを垣間見るための「留守模様」。あらゆる方面から手引きするガイドブック、副読本。
紫式部が著作権を行使してたらすごいことになってた?!  今と違って大量生産出来ないから、それほどの額にはならない?

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捕らぬ狸のなんとかはともかく、口元を隠してほくそ笑んでおられる(?)のは、北野恒富描くところの「紫式部図」。
恒富さんは明治から昭和のヒトで、平安時代の売れっ子女流作家とは一面識もないから想像の肖像画。モミジの透かし織りが入った袿の下の単はブルーのグラデーション。濃白と縹色をとりなすのは木蘭色でしょうか。
文机にしなだれかかるお姿は、軸装するために両サイドをカットしちゃったようにも見えるのですが・・・。

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円山応挙
源氏物語図屏風」。
円山派の祖が描く「源氏絵」は紙本金地着色の屏風絵。すやり霞が棚引く京の町に、左隻は邸宅の庭先、右隻は源氏車とそれに従う車副。
六条院の軒下に並ぶのは光る君と彼が愛した女性たちでしょうか。庭園には広大な池が作られ、舟が浮かび、そこにも雅な女房姿。
車に乗っておられるのは何方でしょう。牛が離されて、今まさに降りようとされているところなのでしょうか。

百人一首」からの視覚化を試みた絵画。うたごころなどまだまだ理解の及ばないワタシにはその紐付けが正解かどうかは判断出来ませんが、面白い企画であるとは思いました。
源氏物語』からビジュアル化した「源氏絵」。紫式部が没してから150年余経った頃から描かれ出した「源氏絵」。貴族、公家中心の世から武家の社会となって、暮らしぶりも変わって、読者層も変わって、雅びな世界への憧れが過ぎて「もののあはれ」が薄れちゃったのでしょうか。それでも、ひとつのジャンルとして長く続いていることを考えると、その影響力たるや相当なもの。今だに、漫画になったり、ドラマや映画化、それらも「源氏絵」としてもいいのでは・・・?

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ひととき風雅な世界に浸って、日頃の気鬱も多少晴れたでしょうか。
ストレスが軽減されたら、お腹が空いてきた?
何しろ早朝から竹林を抜けて山登り(?)までしてお庭を巡って、歩き通し。畳のお部屋で脚を伸ばしたのも束の間に、今度は脳細胞がフルに活躍して、カロリー消費がハンパない。
1階に降りて、カフェを覗くも、ちょっとね。
ここ嵐山は古くからの観光名所で、豪奢な別荘を改築した高級料亭から今時っぽいファストフード系まで揃っているのだけれど、あまりお上品なものはかえって舌に合わないし、といって、あまりにジャンキーなものもどうでしょう。胃腸が壊れて、食べられるものも限られる。

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京都といえばおばんざい。野菜を中心に、ちょっと贅沢な魚介にお肉。
昨年夏までおばんざいをバイキング形式で提供していたぎゃあていで「ぎゃあてい御膳」を頂きます。
ちょっと松花堂弁当を思わせる箱盆の中にはデザートを含む小鉢が12個。名物10日間熟成した西京漬けローストビーフを中心に、お豆腐に胡麻豆腐、スープがあったり、炊いたんやら焼いたんやら、おばんざいが少しずつ11品+デザート1品。赤米か湯葉丼がセットになって、ワタシは湯葉丼をチョイス。お味噌汁も付きます。
それがどういうお料理なのかは器を持ち上げると判る仕組み。12のうちの3つは日替わりになるというから、今日の組み合わせはどうなんでしょう。
ほぼほぼひと口ずつ位ではあるのですが、その分彩りがあって、眼でも味わえる。あまり刺激し合わないので、これだけとりどりでも違和感はないのでしょう。
甘いものは、抹茶わらび餅にきな粉とショコラ添え。別腹はもうちょっと余裕があるのですが・・・。

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お腹も満たされて、腹ごなしにブラブラと渡月橋を渡って中之島公園。お昼も過ぎて、天気も良く、初夏めいた暖かさになってきたでしょうか。人出も随分多くなったようで。
見ると、公園の中ほどに異様な造形物。草間彌生のカボチャがトゲトゲ化したみたいな。巨きなウニかしら? まさか、巨大化したウイルス?!
何かと近づいてみると、ヤノベケンジ作「渡月藻庵」という現代アート作品。4日間だけの展示のために、わざわざ穴を掘ってお水まで張っちゃったのね。小宇宙にしてお茶室なんですって。実家の庭に置きたいかなァ。
さて、何処へ行こうと考えiPhoneを見てみると、午後の予定が表示されて、メガネ・フレームのオーダー予約を入れていたのを思い出す。街中へ戻らなあきまへんがな。

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きょうの一枚はコレ。
某料亭の駐車場脇に咲いていたオトメツバキ。春らしい乙女色がなんとも愛らしくて。
「乙女」なんてもう死語? 手弱女なんて絶滅危惧種? ・・・なんてことを言ったら、世界中の女性から非難されて炎上しちゃう?
椿の花の貴婦人」は、気品と美貌と知性と教養の象徴でもあって、理想と憧れ。じゃあ、やっぱり希少種、絶滅危惧種?

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