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今日は4手のシューベルト [音楽のこと]

本日も大阪大学豊中キャンパスに通学です。
冬が立ったというのに、昨日、今日と麗らかに晴れ渡って小春日を思わせるようなお日和で、大阪大学のシンボル、キャンパス内の公孫樹並木がその小春陽に映えてコバルトイエローに輝いて。枯れ落ちる時の物哀しげな風情より、まだ少し青みを残した葉とグラデーションする今の時候が一番眼に映えるようにも感じます。
コロナ禍でノンビリと紅葉狩りなど楽しめない状況ですが、今日は仕事がてら(?)、晩秋~初冬の風情を束の間楽しんで・・・。
と寛いでばかりもいられない。そろそろ関係者一同お集まりになる時刻。ワタシも大阪大学会館前で待機して・・・。


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今日はかなり以前からスケジューリングされていた「ワンコイン市民コンサート」の開催日。
・・・なのですが、「11月公演」も先月と同様に新型コロナ・ウイルス拡大防止対策としてオンライン化されて「オンライン市民コンサート」、残念ながらお客様をお入れすることが叶わず、インターネットを通じて動画配信されることになりました。
ワタシはそのアシストとして赴いたはずなのですが・・・。

先月は武久源蔵さんと宮崎貴子さんによる四手連弾盛り沢山でしたが、今月もピアノ連弾で、佐藤卓史さんと小倉貴久子さんによるパフォーマンス。
驚くほどに多作ながら未完成曲だらけ(交響曲 第7番 ロ短調「未完成」だけじゃあ無いんです)なシューベルト作品を、補筆しながらなおかつツィクルス化、全曲コンプリートをライフワークとされる佐藤さんと、「フォルテピアノ・アカデミー SACLA」を主宰し、数多くのCDや書籍をリリースされておられるフォルテピアノ奏者の小倉さん。
佐藤卓史さんは大阪大学会館での通常公演3回に加えて、B-tech Japan Osakaでの特別公演もされた、ワンコイン市民コンサート・アーティストのおひとり。
小倉貴久子さんは初のお目見えとはなるのですが、そのご活躍ぶり、フォルテピアノへの造詣から察するにヴィンテージな、会館常設の1920年製Bösendorfer Model250 Liszt Flügelも難なく御せるピアニストだと想像させてくださるお方。
二ヶ月続きにすごく贅沢なデュオは勿体無いことに、遺憾ながら無観客での演奏収録。大学の施設を使っていることもあってお客様を募ることが難しい状況下、それでもオンライン公演をお引き受け、遠路来阪くださったピアニストお二方。旧いホールに、もったいないオバケが出そうですな。

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そのお二人と対峙するのは勿論、リスト・フリューゲル
ワタシたちが入館する前にチューニングを終えたようで、二人のピアニストは早速に百年物のピアノの音を確かめて、そのまま指慣らしからリハーサル。
旧いピアノはキー・タッチからのレスポンスがモダン・ピアノと異なって、音域による差異も大きいのでしょう。おまけに、リスト・フリューゲルは鍵盤と内部に張られた弦が標準的なピアノより少し多くて音が豊満な分、それをバランスよく響かせるのは、特に連弾の場合難しくなってくるのでしょう。お二人は譜割りを入念にチェックしながらの予行演奏。ピアニスト(二人)と旧いピアノの鼎談(鼎弾?)。

ピアノ独奏ならばピアニストとピアノとの、声を発せず音を調べる対談(対弾?)。
それが連弾となると、ピアニスト二人の会話が加わって、バルコニー・・・(ネタの関係上今回あえてフランス語で)バルコン(balcon)からこっそり傍観していると、肩寄せ合って睦まじく談笑しているように見えて、時に演奏家二人が議論しているようにも感じられて、こんな感じでしょとピアノが割って入って仲裁しているようにも思えて、ピアノの発言力が高まったところがいい感じの仕上がり? 面白いと言っては叱られるかも知れませんが、この鼎談シーンも録画配信したいくらいですよ。演奏家のタマゴたちの参考になるのでは無いかと・・・。

気脈が通じ合い演奏の熱量が高まる中、録画収録用の機材設置でホール内を右往左往。今回は2台のカメラのうち1台をバルコン席に上げて、ワタシもそこで待機しながらリハーサルから本番まで聴かせて頂いたのですが、もうねェ、今日は暖かいというのにトリハダ物で、ゾクゾクしちゃうくらいのサウンドにお仕事を忘れてしまいそう。
キャパシティ400名のホール内、ステージ上にはプレイヤー2名とページ・ターナーさん、客席にはスタッフが3名きり。人いきれや衣摺れ、咳払いなどが無くて、リスト・フリューゲルの調べだけがその静寂を揺るがせて。
大事に扱われ、適切なメインテナンスとチューニングを受けたうえ、名プレイヤーが演奏するのですから、百年の時代を帯びながらも涸びることのないその音色は艶やかな色彩さえ感じさせて、今日の陽射しに映えるイチョウのコバルトイエローよりキラキラして見えるような気さえします。

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1928(昭和3)年に建てられた旧イ号館こと大阪大学会館の講堂は音楽専用ホールではないので場所場所で音の聴こえ方が異なってしまうのですが、今日はお客様が居ないのをいいことに設営かたがた検証して回ってみたところ・・・、
エクステンドベースが加わった低音域中心の「響き」を味わいたいのなら1階席の前半部で、高音域の伸びと全音域のバランスの「拡がり」を観たいのであれば2階バルコニー席がオススメ・・・としておきましょう。
過去の例でも、ピアノの位置が数センチ動いただけで音の飛び方が変わってしまったホール。
聴衆の密度や窓に掛かるカーテンの開閉によっても響きは変わって、ピアノ独奏ならともかく、ヴァイオリンやチェロ、ヴォーカルなどとデュオやトリオとなるとさらにバランスが変わってしまいます。
その時々の条件でベスト・ポジションは変わってしまうのですが、ピアノ1台きりなら先の2択になってベストなお席は・・・。
公開演奏が再開された際には再々通って頂いて、演奏者の運指を追いたいというのなら別段、ここぞと思う場所を発見してみてください。条件が揃えば、リスト・フリューゲルが作るハーモニクスから「天使の声」が聴こえる・・・かも知れませんよ。

そうそう、あまりに心揺さぶられ肝心なことを忘れていましたね。

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今日はお二方で3曲演奏されて、オール・シューベルト・プログラム
佐藤さんと小倉さんの連弾ですから、シューベルトの4手連弾曲というところまでは事前に予測出来たのですが、完成作品、未完成を合わせるとそれが相当数あって、解説が入れられないから未完成曲は除くとして・・・。
佐藤さんのソロが1曲。お二人での連弾曲が2曲。
ソロとフォーハンズ1曲の曲名には共通の国名が付いて、もう1曲の連弾には別の国名が付きます。さて、なんでしょう?! 今回も、オンライン公開までヒ・ミ・ツにしておきましょうか。
コロナ禍の杞憂を払う嬉遊曲(ヒント出し過ぎ??)。
そういえば、先月の4手連弾で演奏された舞曲集もその国名が付いていましたっけ?
その際一緒に演奏されたチャイコフスキーの交響曲(4手連弾版)も壮大でしたが、今回は連弾のための作品。今では作曲家として知られるシューベルトも生前はピアニストまたはピアノ教師として名を馳せて、ピアノとピアノ演奏を知り尽くした彼が物した連弾曲。壮麗にして滋味深く、心髄に響くような連弾の神髄。
無観客で、シューベルトが夜毎主催し紳士淑女が集ったという「シューベルティアーデ」の賑わいは再現出来なかったのですが、バルコン席を独占させて頂いて、彼がピアノ教師として赴任したエステルハージ家の当主にでもなったような心持ち。侯爵閣下になったみたいで、講釈の多い侯爵閣下、愉悦に浸りカッカカッカと呵呵大笑?
見た目は、黒ずくめで、髪で半ば顔を隠して、オペラ座の桟敷席や暗がりに潜む怪人、オペラ・ゴースト=エリックのようなのですけどね・・・??

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何れにしても、役得を得て、贅沢させて頂いた一日。
録画配信で映像が残ってしまうからというだけでなく、聴衆のいないホールだというのに気合い十分、手を抜くことなく、タブレットやスマートフォン、あるいはパーソナル・コンピュータでご覧になるであろう何千人、何万人のオーディエンスに向けた極上の演奏。より多くの方に聴いて頂きたい、観て頂きたいという思いも込もっているのでしょう。先月の武久源蔵さんと宮崎貴子さんもそうであったように、リハーサルから本番を通じて一音入魂、プロフェッショナルなお仕事ぶりを拝見することが出来ました。

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今日は喜ばしい一日となりましたが、さて来月からの「ワンコイン市民コンサート」はどうなるのでしょうというのが気鬱のタネ。春から秋も、八ヶ月もお休みがあったのですが・・・。
先々までスケジューリングされてはいるみたいですが、ご出演が予定されてアーティストの方々の大半は海外在住で、COVID-19の第3波によるロックダウンが実施されようかという事態でもあって、阪大どころか来日、一時帰国さえままならない状況。
これが長く続くとは思えません。思いたくはないのですが、現にこれまでも、立春過ぎから、立夏、立秋、立冬と四立を一巡しちゃうな勢い。極上の演奏を独占する贅沢は有り難いのですが、それこそもったいないオバケに祟られちゃうので、折角の名演を多くの方と共感したいとも考えます。
公開演奏が再開されるのを心待ちにしながら、それまでは「オンライン公演」をお楽しみ頂きますようお願いします。
今回の佐藤卓史さんと小倉貴久子さんによるオール・シューベルト・プログラムも公開された際にはお知らせいたしますので、しばらくお待ちくださいますよう。

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