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いちょう祭2019でガムラン!! [音楽のこと]

2019年05月03日。元号が改まって、超大型連休のド真ん中。
今日も大阪大学豊中キャンパスへ通学するのですが、いつもの「ワンコイン市民コンサート」や「日曜ガムラン」ではなく、とびっきりのスペシャル・イベント。
大阪大学の創立記念日(5月1日)を祝し、全学をあげて新入生を歓迎するとともに、教職員・学生の親睦及び地域との連携を図ることを目的に毎年開催される春の大学祭「いちょう祭」の開催日(2日・3日)で、学部・研究科、研究所等主催の行事や学生団体による協賛行事の一環として、文学部音楽学研究室を拠点に活動するジャワ・ガムランのグループDharma Budaya(ダルマ・ブダヤ)の定期演奏会が催され、ワタシもその末席にガムラン奏者として加わることになっているのですが・・・。

ダルマ・ブダヤは中部ジャワスタイルのガムラン・セットを演奏するグループとして、大阪大学を拠点に1979年以来演奏活動を続けていて、キャンパス内での定期演奏会に加えて、各地で公演も行いながら、ガムランに関わりたいという希望をもつ多くの人にその場を提供すべく、初心者から参加出来るジャワ・ガムランのワークショップ「日曜ガムラン」を主催していて、ひょんなご縁でワタシもそこに2016年12月から通わせて頂いています。
同じキャンパス内で催される「ワンコイン市民コンサート」と日時が重なることも多いのだけど、それがなければ月に一度の体験教室に参加して、その練習成果(?!)をご披露することになるのが定期演奏会で、年に二回の大学祭、春の「いちょう祭」と秋の「まちかね際」がその会場となります。
ワタシは、2016年12月から参加で、足掛け4年目。これまでも、春と秋合わせて4回の大学祭にも出演参加させて頂いて、今日が5回目。4年で5回ともなれば、ベテランまではいかないにしても、そこそこのものだと思うでしょ? 思いなさい!!
でも、そう簡単でもないんです。

ジャワ・ガムランは西洋音楽とは全く様式の異なる音楽で、大雑把に言っちゃうとかなり大らか。ファジーなんだけど、フレキシブル。バリ島のそれは激し目で、同じジャワでも地域によって曲調に差異があり、ダルマ・ブダヤが演じる中央ジャワのそれは概してはんなりと雅やか。
それに用いられる楽器は主に青銅製の打楽器で、チューニングも曖昧で、叩く位置によって音が変わっちゃうし、西洋楽器の音律に慣れた耳だとちょっと気持ち悪く感じることもあるのですが、いざ演奏が始まるとその曖昧さが重なって、いい感じのゆらぎとなって、これが実に気持ちいい。
単独で演奏しているとそうでもないのですが、アンサンブルになるとそれぞれのピッチのズレが音の揺らぎ、うねりとなって、カラードノイズ(colors of noise・有色雑音)のひとつ、ピンクノイズっぽいのでしょうか、癒し系の音色に転じて耳を擽る。ミミがこちょばいッ!!
それに時によって、インドネシア・ジャワの歌が加わったら癒し効果倍増。踊りや影絵芝居まで加わったら、ヒーリング・エンターテインメント。
大らかで曖昧で揺らいでいるから初心者が参加しても大きく外さない限りアラが目立ちにくい? ・・・のも利点のひとつ(マジか)?
ガムランの音階は、ほぼほぼペンタトニックに近くて、音域も1オクターブから、一部の楽器で2オクターブ程度とシンプルなのですが、本来は譜面、スコアも無くて、聞き覚えが基本としながら、そうもいかずに便宜上用いられるのが数字譜で、1から7の数字が並ぶ、まるで乱数表。
何から何まで慣れ親しんだ西洋音楽と異なるのが面白いところ。ハマっちゃうと抜け出せない。

ダルマ・ブダヤのメンバーは10名前後?? それぞれ別に職業をお持ちの方々なので、全員がいつも揃うわけでも無いようで、その時々に応じて助っ人が加わったり、そういう意味でもかなりフレキシブル。
日曜ガムラン」もワタシが通い出してからも、こちらは出入り自由のワークショップでもあって、随分参加者が増えたような、そうでも無いような・・・。ましてや、大学祭での定期演奏会に出演してやろうなんて怖いもの知らず猛者は限られる。
しかも、今回はゴールデンウィーク、超大型10連休のど真ん中。お休みのようで、皆さんかえってスケジューリングが難しいようで・・・。それでも今日は、インドネシア・ジャワからの留学生を交えて17名(18?)。なかなかの大所帯です。
かくいうワタシは盆も正月もゴールデンウィークも関係なし。連休なんて望んでもいない。遠出出来ない憂さ晴らし(?)は、青空の下でのガムラン演奏。

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いちょう祭2019」での『文学部・文学研究科 ガムラン(インドネシアの民族音楽) コンサート及びワークショップ』は豊中キャンパスのほぼほぼド真ん中にある文学研究科芸術研究棟横の屋外スペースが会場で、コンサートは13h00開演予定。
ですが、屋外スペースでの楽器や客席の設営、ゲネプロがあるので、集合は09h30。
学祭2日目の朝は静けさの中にあって、模擬店のブースがずらりと軒を連ねるメインストリートにも人影は少なく、その仕込みもまだこれからといったところ。

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手作り感がカワイイ♡っしょ?!
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頭にストールを巻いていますが、「君の名は」のコスプレではなく、陽射し対策。
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メザシみたくなっているコイノボリはダルマ・ブダヤのマスコット
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一番大きな銅鑼は神聖だからお花(本来はお線香も)を手向けます。事故現場ではありません。

三々五々とメンバーが集って、会場設営から。
いいお天気に恵まれて、今日はアウトドア・ライヴ。空地にゴザを広げて、倉庫から重い楽器を運んで、手慣れた風にレイアウト。
段取りがついたところで、本番前のゲネプロ。プログラムに即した、通しのリハーサル。
屋外演奏日和は陽が高くなるにつれて気温も上がり、まだ暑さに慣れていない身体に直射日光がキツイ!! アタマが熱い!!!! 金属製の楽器の上で目玉焼きが作れちゃう??

今日予定されている演奏曲目は、何れも中央ジャワの伝統曲から選りすぐりの5曲。ワタシたち「日曜ガムラン」メンバーが演奏に参加するのは2曲目と3曲目で、それ以外の楽曲では横に控えることになります。
ガムランは担当する楽器が都度変わるのでその移動も考えながら、まずはひと通りプログラム通りにリハーサル。
それから、「日曜ガムラン」組が加わる楽曲を改めてお浚い。
もう少し高い位置からタボ(バチ)を振り下ろして、力強く大きな音を出せとのご指示。屋外なのでチカラいっぱいで大丈夫と言われても、今までとフォームが変わっちゃったら・・・。愛情を持って接しながら大きく響かせろとの仰せですが・・・。

それもまァ、ほぼほぼ及第点? リハーサルを終えて、お昼休憩。1時間足らずの間に昼食を摂って、着替えて、数名のメンバーはチラシ撒きまで。ワタシは専ら卒煙ブースで緊張を解します(サボるの得意!?)。

そして、運命の13h00!!

本日のプログラムは、
1. ランチャラン トロポンバン~ラグン・ギト ペロッ音階 ヌム調(Lancaran Tropongbang ~ Langen Gita Laras belog pathet nem)
2. ランチャラン ルノ・ルノ ペロッ音階 ヌム調(Lancaran Rena-rena lara’s pelog pathet nem)
3. ラドラン マニス ペロッ音階 バラン調(Ladrang Manis laras pelage pathet barang)
4. クタワン キナンティ・サンドゥン スレンドロ音階 ヌム調(Ketawang Kinanti Sandung laras slendro pathet new)
5. ラドラン ティルト・クンチョノ ペロッ音階 ヌム調(Ladrang Tirta Kencana laras plog pathet new)

どれもが中央ジャワの伝統曲で、「ランチャラン」や「ラドラン」、「クタワン」というのが楽曲の様式を表し、ガムランには「ペロッ音階」と「スレンドロ音階」、ふたつの音律があって、それぞれに「~調」といったスタイルのヴァリエーションが存在し、組み合わせが色々、変幻自在でフレキシブル。その場でのチューニングが出来ない青銅製の打楽器群は「ペロッ」と「スレンドロ」の二つの音階に合わせて各々用意することになります。それで、足の踏み場も無いほどに、大きな打楽器群が犇めくことになります。

まずはダルマ・ブダヤのメンバーだけで、「赤い帽子」を意味する「トロポンバン」から歌の素晴らしき美しさを意味する「ラグン・ギト」のメドレー。ワタシたち「日曜ガムラン」メンバーは、各々楽器の隙間に控えてその演奏を聴くのですが、「トロポンバン」の激しいリズムにドキがムネムネ胸がドキドキ、「ラグン・ギト」のゆったりとした斉唱にほんわかと和んで、本番に臨んでいることも忘れてしまいそう。

が、そうもいかず、2曲目の「ルノ・ルノ」から出番です。

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ルノ・ルノ」でのワタシの担当楽器はサロン・ドゥムン
青銅製の鍵盤打楽器で、ガムランの骨組みとなる定旋律を演奏するサロン属のうち一番大きくて一番低いパート。西洋音楽のオーケストラで言えば弦五部のうちチェロ~バスといったような位置付け。
ペロッ音階」用は7鍵、分厚く重い、7つの金属板が並びます。眼の前には、主に定旋律を装飾する役割りを受け持つボナンが二台、グンデルや木製のガンバン、弦楽器のルバヴが整列し、背後には大きな銅鑼属、定旋律の節目を知らせるクノンクトックンプールゴン・アグンが控えます。テンポを司る太鼓、クンダン・アグンクティブンチブロンはすぐ目前。
周りの音をよく聴いてとご指導されているのですが、耳を悪くしちゃってから音を聴き分ける能力が極端に落ちて、反響の少ない屋外では振動を拾えないので、目の前の太鼓の手の動きをコンダクターとして曲の流れについていきます。
日曜ガムラン」組が入ったことで手が空いてしまうダルマ・ブダヤのメンバーは各々楽器の間に位置して、後見の役割り、信頼の置けるガイドさん。
ルノ・ルノ」はランチャラン形式で、ガムランの形式の中では一番シンプルなスタイル。・・・なのですが、そのシンプルな定旋律を、太鼓がもう終わりにしますという指示を出さない限り延々と繰り返し、油断するとどこにいるか分からなくてなってしまったり・・・。なかなかにスリリングであったりもします?!

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1曲終わって、ほっとする間も無く、3曲目の「マニス」。
こちらの担当はクンプール。一番後ろに控えるつり下げ式の大きな銅鑼。これも幾つもの音高が用意されているのですが、今日用いられるのは3と5と6の3つだけ。それを、先端を丸く大きな布で覆ったタボ(バチ)で叩きます。
お稽古の時は人数が揃わなかったりしたので、クンプールと一緒に一番大きな銅鑼、ゴン・アグンも担当、間に入って両手打ちしていたのですが、本番はクンプールのみ。これも後見が付いてくださるので心強いのですが、油断禁物。「ルノ・ルノ」以上に難曲で、序奏部Bokaのあと、A、A’、B、B’の4つのバートを繰り返すのですが、Aの後B'へ飛ぶこともあれば、B'からA’に戻ったり、B’を繰り返したり・・・、Boka→A→A’→A’→B→A→B’→A’→B’→A’→A→B’→A’→B→A→A’→A’、めっちゃ複雑。似て異なるものが続いて繰り返されたら集中していないと見失う。しかもその間、テンポが速まったり、半分以下まで遅くなったりで、目紛しいことこの上なし。本当に目が回りそう。太鼓の手が変わったり、ボナンがキッカケを作ったりと動きの指標があるにはあるのですが、手元の数字譜を追うのに必死のパッチ。夏日を受けてキンキラ輝く銅鑼が目の前を立ちふさいで、前の方の楽器の動きは見えないしィ。
マニス(Manis)」とは現地の言葉で「甘い」ということらしいのですが、演奏はちっとも甘くない?! でもね、それぞれのグルーヴがひとつのうねりになった時の気持ち良さ。緊張感、テンションよりもその揺らぎがもたらす癒しの方が優っちゃう。んン?! 緊張感を持って臨んでいないからミスタッチしちゃうのン?!

それもどうにか凌いで(??)、4曲目と5曲目はオーディエンスの気楽さ。プレッシャーから解放されて、なんならゴザの上に足を投げ出して寝転びたいくらい。
4曲目の「キナンティ・サンドゥン」はジャワの古代詩を歌にしたものだそうで、これだけがスレンドロ音階、そのために用意されたのは木製のガンボンと青銅製のグンデルスルントゥムで、これらは音色がとても柔らかい。柔らかな金属音の上にはんなりとした歌唱が乗って、リラックスして聴いていると・・・、寝落ちしちゃいそう。

プログラム最後は「ティルト・クンチョノ」。黄金の水という意味だそうで、時に激しく流れ落ち、ある時はゆったりと揺蕩う川の流れを歌う美しい楽曲。心躍るかと思えば悠々緩々、弄ばれるようにその楽音に酔ってしまう。
西洋音楽で言うところのハーモニーは希薄、和声感が無くて、メロディーというほどの旋律でもなくて、音域は狭いし、使う音高も極限られたもの。リズムは、まァ、感じるのだけれど、グルーヴでもなければ、ヴァイブスでも無い。けれども、そのアンサンブルが齎すfrequency fluctuationがただただ気持ちいい。その気持ちいいと感じる原因を解明出来ないうちは辞められませんね。

コンサートは以上の5曲を以ってお仕舞い。
オーディエンスも想像以上に大勢詰め掛けて、用意した椅子が足りないほどの盛況ぶり。大きな拍手を頂きました。

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で、続けざまにワークショップ。ガムラン体験教室の始まり。
物珍しい楽器の周りには小さなお子様も交えてロウニャクナンニョ(っていうとセクハラになるの?)が雲集し、ワタシたち「日曜ガムラン」組が割って入れないほどの盛況で、その間に椅子や飾り物などの片付けをしてしまいます。
と、ご来場されておられたご年配のカップルから、音楽も素晴らしかったが、着ているお衣装がそれぞれに可愛いとのお言葉を頂戴したりして・・・。ええ、ワタシ(たち)の場合、何を着ていても可愛いのはカワイイのですが、めいめいおもいおもいのバティック・シャツが五月の陽射しに映えて、まァ、カワイイ♡ ワタシの場合、メ◯カ◯で買ったんですけど・・・。
賑わうガムラン体験教室、慣れない手つきで青銅製打楽器を叩く姿を見ていたら、初めてガムランに触れた2016年12月の大阪大学会館でのワークショップが思い出されて懐かしい。

和気藹々、大学祭での体験教室も14h30頃にお開き。
その後、来たる06月23日(日)万博記念公園内の民族学博物館での『音楽の祭日』に向けてのリハーサル。それに出演するのはダルマ・ブダヤのメンバーだけになるので、ワタシたちは三々五々、大学祭の他の催しを覗いたり、思い思いの時間を過ごし、16h00から再集合してのお片付け。手慣れた重労働もさっさと終わって、あとは楽しい打ち上げなのですが・・・、その会場予約は18h00から。
待ちきれずに、駅前の立ち飲みスタンドで学生さんたちと盛り上がっちゃって、打ち上げが始まる頃には、疲れもあってすっかり出来上がっちゃってたのは内緒の話し。炎天下でのハードワークの後の生ビールが美味すぎるんだもん(てへ)!!

ハードロックやヘヴィーメタルの対極にありながら、同じくらいの振幅でココロを揺さぶるジャワ・ガムラン。電気もコンピュータも使っていないから、ワタシからは一層遠いのだけど、ひとたびそこに身を預けると離れられないほどの魅力。解明出来る頃には『令和』が終わっちゃうか、ワタシの寿命が尽きてしまうか・・・。
今回も”完璧”と言える出来ではなかったのですが、パーフェクトになっちゃったらそこで打ち止め、次の楽しみを探しに出てしまうと思う。ドキドキワクワクしながら、手探りの演奏は次へのステップ、Stairway to Heaven(「天国への階段」by Led Zeppelin)・・・ということにしておいて頂きましょう。しておいてくださいね。
次は秋の「まちかね祭」ですか。そこでは92点くらいの仕上がりを目指します(てへぺろ)。

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