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21st Century Girl in the Post Valentine's Day Concert [音楽のこと]

本日の「ワンコイン市民コンサートシリーズ第87回」はスペシャル・プログラム。
POST-VALENTINE’S DAY CONCERT(ポスト・ヴァレンタインズデー・コンサート)2019』と題された、『若手フレッシュアーティストたちによるピアノリサイタル』。
梅春を迎えた大阪大学会館のステージに百花繚乱?! 9名のお若いピアニストが居並びます。

百花繚乱というには、員数的には91人ほど足りないような気もしますが、若々しくて、初々しくて、瑞々しくて、清々しくて、愛々しくて、美々しくて、可憐で清純で麗しやかで淳朴でナイーヴでイノセントな、いわば一騎当千・・・というと、ハードル上げ過ぎでしょうか。セクハラ?
んン!? 一騎当千だったら、百花どころか、万花・・・正確には九千花繚乱じゃん!!
と、まァ、計算はともかく、お若くてフレッシュ。もしかしたら、その分まだ演奏家としては、開花には至らない蕾なのかもしれません。が、ではそれが聴くに値しないか?! ・・・というと、そんなことはありません。

と、思い出されるのは、2016年02月14日のヴァレンタインデー。その日開催された「シリーズ第51回」は『7人のフレッシュアーティストが贈るバレンタインコンサート』と題された、7人の乙女たちによる共演、競演、協演、響宴となった、華やぐピアノ・スペクタキュラー、ときめくピアノ・ファンタジアで、花も恥らうヴァレンタイン・スペシャルな、きらめく予感のジュブナイル・コンサートでした。
その時ステージに並んだのもフレッシュな”チョコレートがけのイチゴ”たちでしたが、その企画が3年振りに戻ってきて、今回は聖ヴァレンタインの日から一週間遅れで『POST-VALENTINE’S DAY CONCERT』。
3年前にもご出演されたチョコイチゴちゃんからお二人、藤村星奈さんと久保英子さんが今回、成長してちょっとビターになった姿を見せてくれるようで、もうお一方は2012年07月15日の「シリーズ第3回」で堂々のソロ・リサイタルを演じた須鎗幹子さんが7年振りとなる演奏を披露くださる。
そのお三方に初のお目見えとなる6名を加え、華やいだステージとなること間違いなし?!
こうもお若い、うちの息子さんと同世代のフレッシャーズが揃うと、つい保護者気分でドキドキハラハラしちゃうのですが・・・。

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平日開催とあって、ちょっといつもと違う雰囲気。開場なったホールではまだ常設のヴィンテージ・ピアノ、1920年製Bösendorfer252がチューニング中。
他所ではあまり拝見することが叶わないのですが、ここ大阪大学会館のバルコニー席からピアノの調律作業を眺めるのはちょっと特別な時間。齢百年に迫る古い発音装置がその大きなボディに内蔵する弦を整えられて、楽器としての居住まいを糺す時。
9名のフレッシュ・アーティストが控え室でキャピキャピと(?)、あるいは緊張の中、ドレスに着替えるその時間に、ステージで彼女たちを待つピアノも改めてのドレスアップ。
今回からチューナーさんも変わったようで、耳に馴染んだヴィンテージ・ベーゼンも、若い淑女たちに合わせてか、いつも以上にもの柔らかでやや閑かな響き。繊細というのともちょっと違うし、研ぎ澄まされた鋭利なサウンドでもなく、軽やかでいて懐深いニュアンスを含んだ音色。88鍵に4つ加えられたエクステンドベースが円やかさのためのシークレット・コンポーネント、隠し味でしょうか。
1928(昭和3)年に旧制浪速高等学校の校舎として建てられた旧イ号館こと大阪大学会館の講堂はもとより音楽専用ホールでもなく、音響的には良いとは言えなくて、ステージ上のピアノの位置が数センチ変わるだけで音の広がり方も変わってしまう。なにせ古いホールで、1階席では低音域が音ではなく振動として響く気がして、それでワタシはその声音が館内に広がる様を照覧すべくバルコニーを定席としています。ガルニエ宮の5番ボックス席に居座る怪人ならぬ「旧イ号館の快人」。あッ、サングラスにポニーテールで、やっぱり怪(しい)人ですかね。
そこで聴いている限りは、いつも以上にもの柔らかでやや閑か。それでいて、細かいラメを少量塗したような燦きが観える今日の声色。艶やかな顔料系の色気を感じさせる音色。調律で改められたその音から今日の演奏を夢想するのが密かな楽しみ・・・なのですが・・・。

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15h00。ピアノの準備も整って、フレッシュ・アーティストのうち前半を担う4名がバックステージにスタンバイして、いよいよ華やいだ春めく演奏会の開演。

本日のご出演者と演奏曲目は(演奏順に)、

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大西 和香
(おおにし のどか)さん。
兵庫県学生ピアノコンクールB、C、D部門地区銀賞。日本クラシック音楽コンクールピアノ部門全国大会中学生部門入選。第11回べーテン音楽コンクール全国大会ベスト10賞。現在、兵庫県立西宮高校2年生。
演目は、セルゲイ・プロコフィエフ作曲「ピアノ・ソナタ第3番 イ短調 作品28 『古い日記帳から』

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藤村 星奈
(ふじむら せいな)さん。
第35回兵庫県高等学校独唱独奏コンクール金賞ならびに姫路市教育長賞。第1回ベートーヴェン国際ピアノコンクールアジア高校生部門第2位。第17回宝塚ベガ学生ピアノコンクール大学生部門奨励賞。第28回日本クラシック音楽コンクール高校の部全国大会入選。兵庫県立西宮高校音楽科を経て、現在、武庫川女子大学音楽学部演奏学科1年生。
セルゲイ・プロコフィエフ風刺(サルカズム) 作品17

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徳永 紗絵子
(とくなが さえこ)さん。
ヤマハヤングピアニストコンサートB、C部門金賞。いずみホールでのファイナル推薦演奏会に度々出演。ピティナ・ピアノコンペティションB級全国大会入選、C級、D級、F級地区本選優秀賞。兵庫県学生ピアノコンクールC部門地区金賞。全日本学生音楽コンクール大阪大会小学生の部入選。現在、兵庫県立西宮高校2年生。
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 『告別』 作品81a」より第2、3楽章

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澤田 愛音
(さわだ あかね)さん。
第32回、第33回兵庫県高等学校独唱独奏コンクールピアノ部門銅賞。第34回日本ピアノ教育連盟ピアノオーディション関西地区E部門奨励賞受賞。また、学内オーディションに合格し「甲子園会館の音楽會」に出演。現在、武庫川女子大学音楽学部3年生。
カミーユ・サン=サーンスアレグロ・アパッショナート 作品70

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梅井 美咲
(うめい みさき)さん。
幼少期よりピアノ、エレクトーン、作曲を始める。数々のコンクールにて入賞。2018年6/22~24日の3日間(5公演)、ブルーノート東京の『BLUE GIANT NIGHTS』のライヴで、上原ひろみ、熊谷和徳、K.S.オラクルの各氏との共演を果たす。クラッシックの作曲を学ぶ傍ら、ポピュラーからジャズまで幅広いジャンルの作曲と演奏に取り組み、独自の音楽性を探究している。2018年度ヤマハ奨学金の受給対象者に選ばれる。現在、兵庫県立西宮高校音楽科作曲専攻2年生。
ご披露されるのは、自作自演悲しい時は

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久保 英子
(くぼ はなこ)さん。
第68回全日本学生音楽コンクール高校の部大阪大会入選。第39回ピティナ・ピアノコンペティションF級全国大会ベスト11賞。第34回兵庫県高等学校独唱独奏コンクール最優秀賞ならびに神戸新聞社賞。第71回TIAA全日本クラシック音楽コンサート審査員賞。第1回京都国際音楽コンクールG部門審査員特別賞。兵庫県立西宮高校音楽科を経て、現在、東京藝術大学音楽学部2年生。
セルゲイ・ラフマニノフ楽興の時 作品16」より第1番 、第2番、第4番

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林田 彩愛
(はやしだ さえ)さん。
第31回兵庫県高等学校独唱独奏コンクールピアノ部門金賞。第19回KOBE国際音楽コンクールB部門優秀賞。第27回日本クラシック音楽コンクール大学生の部全国大会第5位。第19回泉の森フレッシュコンサートに出演。また、学内オーディションに合格し「甲子園会館の音楽會」に出演。現在、武庫川女子大学音楽学部演奏学科4年生。来年度より同大学専攻科進学予定。
三善晃ピアノ・ソナタ」より第2、3楽章

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田村 果林
(たむら かりん)さん。
来音会ピアノコンクール金賞。全日本学生音楽コンクール中学校の部、高校の部大阪大会入選。日本クラシック音楽コンクール高校生の部全国大会第3位。寝屋川市アルカスピアノコンクール第2位。ローゼンストック国際ピアノコンクール第4位。摂津音楽祭リトルカメリアコンクール奨励賞。兵庫県立西宮高等学校音楽科を経て、東京藝術大学音楽学部を2018年3月に卒業。
フレデリック・ショパンバラード第1番 ト短調 作品23

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須鎗 幹子
(すやり みきこ)さん。
ヤマハピアノ演奏グレード2級取得。相愛高校音楽科首席卒業後、ヤマハ奨学金を得てパリ、エコール・ノルマル音楽院に留学。フランス音楽国際コンクールソロ部門、連弾部門各1位。パリにてリサイタル開催。Diplom Superiur execution取得。日演連のリサイタルシリーズの出演者に選ばれ、いずみホールに於いてソロリサイタル開催。NHK-FMに出演。ニューヨークシンフォニックアンサンブル他オーケストラと共演。多数の演奏会に出演している。
フランツ・リストバラード第2番 ロ短調 S.171

と何れも名曲で、侮り難い難曲揃い。

1番バッターの和香さんが打席に入って・・・じゃない。Bösendorferに向かって、幾分かはんなりと響くプロコフィエフ。いきなりフォルテシモで続く8分音符の連打でさえ優しくてもの柔らか。
もしかして、和香さんは「シリーズ第51回」にご出演された大西晴香さんの妹さんですかね。
バルコニー席のセンターに陣取っているからといって、ワタシは審査員長でもなければ評論家のセンセーでもないので個別のコメントは控えましょうね。

(まァ、総評さえも憚られるのですが)、

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クラシック音楽は(時に)楽譜の再現性を問われます。作曲家の先生が魂込めたスコアに忠実に、その意図を汲み取りながらの演奏が求められもします。
でも、ね。それじゃあ、演奏家の個性が発揮出来ない。
今日ご披露いただくのは比較的新しい楽曲ですが、もっと旧い作品ではそういった表現力に乏しいチェンバロや(ハンマー)クラヴィーアで演奏していたこともあって、強弱記号も添えられていない、場合によってはテンポの指定すらない、無論フィンガリングの指示もないので、譜面だけに依存していては演奏など出来るはずもなく、例えば彼女たちは日々通う学校のクラスや師事する先生方からのご指導、アドバイス、あるいはリスペクトするプレイヤーの演奏を参考にしながら、そこに自分の創意工夫を加えるわけでしょ。
今日の9人は(多分ほとんど)平成生まれで、なんなら「21世紀の女の子(21st Century Girl)」でしょ。ポケベル・ピッチ世代どころか、ダイアル式のアナログ電話機の使い方を知らない、見たこともないような携帯電話世代~スマートフォン世代でしょ。塩化ビニル製のアナログ・レコードを知らない、見たこともないようなCD、デジタル音源な世代でしょ。つまるところ、ワタシたち「20世紀少年(20th Century Boy)」とは感性、音の捉え方が全然異なる・・・のではないか。下手すりゃ、聴覚や脳の構造すら違うのかもしれない。
「機動戦士ガンダム」で言うところのニュータイプみたいなもの?! 言葉の使い方や生活様式さえ隔たる、新しいルネサンスを迎えたヒトたちなんじゃないかとも思うわけ。
えッ、もしかして、T.Rexも(ファースト・)ガンダムも知らない世代か?!
まァ、とりあえず、その、ジェネレーション・ギャップも甚だしい彼女たちがどういう演奏を聴かせてくれるのか。21st センチュリーガールなフレッシュ・アーティストがどんなサウンドに仕上げるのかが気にもなっていたし、大いに期待もしていたのですが、そのパフォーマンスは期待を裏切らないものでした。
ちゃんと彼女たちなりの新しくてフレッシュなセンスを感じさせてくれました。

クラシック音楽の演奏を絵画で例えるなら、浮世絵のような版画・・・だと思うのですよ(あくまで個人的見解です)。
絵師(画工)が描いた版下絵をもとに彫師(彫工)が版木を彫り、摺師(摺工)がそれに彩色をして、色を重ねて作品(商品)に仕上げていく。
音楽に置き換えた場合、作曲家が絵師、先達が残した解釈や音源(今の時代だと映像?)が彫師、ステージで演奏するプレイヤーが摺師といったところでしょうか。
浮世絵の場合だと、絵師が主板に版下を書き入れて、彫りあがった主板のチェックもし、墨摺り(校合摺り)の段階で摺師に色差しの指定もして、それから漸く色版彫り、試し摺りを経て、作品(商品)として完成するが、音楽だと殆どの場合、下絵となる譜面から時代の隔たりが大きくて、もちろん絵師=作曲家に直接ご確認頂くことは出来なくて、先生や先輩やリスペクトするアーティストの演奏を版木として、演奏家が自身好ましいと思える、相応しいであろう彩色を施してのパフォーマンスとなる。
もしかしたら下絵(譜面)より版木(先達の演奏)に影響されたりもするのでしょうが、版木にある輪郭線に従うにしても色の濃淡やグラデーションの案配などは摺師であるプレイヤーに委ねられる。そして、それが時に応じて変化もするから「時間芸術」としての面白味が加わるのだと考えます。
先生のご指示・ご指導通りの演奏や憧れるアーティストの完コピということもあるでしょうが、演奏を重ねることで自分の解釈がそれを上回り、自分のスタイルを見出していくのでしょう。
今日の9名の演奏は、終演後のインタヴュウで彼女たち自身の口から語られたように、ご自身が工夫を凝らし、創意を込めた演奏であったように感じられました。短い持ち時間で僅かな演奏、それだけで判断することは出来ないでしょうし、まだまだそれが彼女たちの完成形でもないでしょうが、「21st センチュリーガール」らしいエッセンスを感じました。

そうそう、5番目に演奏された美咲さんは作曲科在籍とあって、自作自演。この場合、肉筆画ということになるのでしょうが、ご指導・アドバイスも受けるにしても、ほぼまるっとご自身の創意。しかも彼女は、リハーサル時に1920年製Bösendorfer252の音を調べてみて、予定していた曲目を本番時に差し替えちゃったとのこと。今日のベーゼンに似合った曲想、曲調であったと思います。

「時間芸術」として一瞬で通り過ぎて行く音楽。ピアノの音調との一期一会で変化する音楽。そして、それは世代によって変化してもいいのではないかとワタシは思います(あくまで個人的見解です)。
オーディエンスなんて勝手なもので、耳に馴染んだ定番的な演奏を期待しつつ、新規な解釈の刺激を求めてみたり、保守的な音に安心しながら改革的なヴァイブスを望んだりもします。ヴェテランの演奏が必ずしも、今の時代にマッチして、正調であるとは限らない、多分。
折しも、もう少しで元号も変わっちゃうらしい。「21st センチュリーガール」がその本領を発揮して、大いに活躍して頂ければと望みます。
出来れば、成長し艶やかに開花したパフォーマンスを拝見出来ることを期待します。

しかし、若い方々を観ていると、20th Century Boyなワタシも少年らしさが薄らいだ・・・どころか、老け込んじゃった?! といって、♪ I want to be your boy ♪ とは唄えないし、ねェ。セクハラ?

次回の「ワンコイン市民コンサートシリーズ第88回」は、『石川滋コントラバス・リサイタル<コントラバスの魅力全開:ソロ楽器としてのコントラバスから聞こえる歌>』。
読売日本交響楽団ソロ・コントラバス奏者、洗足学園大学客員教授でもあり、リサイタルでは他楽器のための曲にも取り組み、コントラバスのソロ楽器としての可能性を追求しておられる石川滋さんが、低音弦楽器の魅力を全開バリバリ!? 無伴奏ソロと、加藤あや子さんのピアノとのアンサンブルをご披露くださるリサイタル。
03月17日(日) 14:30開場、15:00開演。現在予約受付中ですので、御用とお急ぎのない向きは是非ぜひ。

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荻原哲

ともかく楽しかったです。あっという間に時間が過ぎました。一人一人音色が違うんだなあと密かに感心。
by 荻原哲 (2019-03-15 14:00) 

JUN1026

萩原先生、コメントありがとうございます。
本当に楽しい時間で、春らしい華やかさでした。
大阪大学会館のベーゼン252は齢百を数えて付喪神となって、ピアニストと対話が出来るのですよ、きっと。特に年若い女性プレイヤーがお好みで、彼女たちを助ける導くかのように彼女たちが望むままに歌ってくれるのだと思いますよ。
by JUN1026 (2019-03-15 23:55) 

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