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お寺でガムラン? [音楽のこと]

今日も今日とて阪大通学は、Dharma Budayaが主催するジャワ・ガムランのワークショップ「日曜ガムラン」で。
今月は、『まちかね祭(→記事参照)』があって、「ワンコイン市民コンサート(→記事参照)」もあって、これで三度目の通学。
こうしてキッチリ(?)レポートもアップしているのだから、そろそろ単位を頂いてもいいくらい?!


今日のワークショップは15時開始。ですが、楽器の移動、準備があって14時に登校。
重い楽器を、保管している部屋から会場となる講義室へと運び、セットアップ。
今日の「日曜ガムラン」にも多くの方が参加されて、その殆どがリピーター、いわば常連さん。
ワタシにしろ、『まちかね祭』で人前で演奏まで披露しちゃって、真髄まではまだまだ至らないにしろ、表層的には理解している・・・はず?
ということで、今日は極シンプルな楽曲を題材に、ガムランで用いる楽器に対する理解力をより高めようと強制的に担当楽器をシャッフルするフルーツバスケットターンオーヴァー大会。

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インドネシア・ジャワの伝統音楽で使う青銅製打楽器群。
木琴や鉄琴のような形状の鍵盤打楽器もあれば、吊り下げ型や平置き型の銅鑼の類いも有って、それぞれ、主旋律を奏でるものもあれば、区切りを示すもの、装飾的な旋律を担うものもあって、叩き易い、叩き辛いの差もあれば、得手不得手も出来てくる。
おまけに、ガムランは本来スコア、楽譜は使われないそうで、便宜上、数字譜を用いることになるのだが、そこに表されるのはほぼ主旋律と区切りの記号だけで、装飾的な旋律や太鼓の手数は示されない。よって、初心者は大体、記譜されている定旋律を担う鍵盤打楽器のサロン類に群がっちゃう傾向にある。
で、今回はホワイトボードには全てのパート譜が書き出されて、それぞれワン・チャンス、良くても悪くても一回ずつで受け持ち替えするガムラン・シャッフル。
無難な定旋律担当のサロン類から始めるか。チャレンジングな装飾担当楽器のボナンか、テンポを司る太鼓に挑むか。
と、それぞれ譲り合って、グンデルから開始、サロン・ドゥムン、それからボナンに移り、クンプールゴン・アグンを打って、太鼓を叩いて、最後はサロン・プキン。目紛しいけど、これがワーク・ショップの醍醐味?! ワーワー言ってるうちにほぼほぼ全パートを体験して、各々の役割り、それぞれの関係も理解出来た・・・?

重い青銅製の楽器を片付け、講義室を元の状態に戻したら解散。それが大体17h30頃。
今日はもうひとつジャワ・ガムラン絡みのイベントがあって、その開始が18h00の予定。
場所は中国自動車道沿いに立つ正福寺という寺院で、阪大豊中キャンパス正門からならほぼ直線。緩やかな下り坂でもあってクルマや自転車ならあっと言う間なのだが、駐車・駐輪出来るかどうか分からないので今日は徒歩。約1.5㎞の距離を歩くことになる。

しかし、お寺でジャワ・ガムランって?

会場となるのは浄土真宗本願寺派正福寺
1570(元亀元)年に、近江源氏の流れを汲む松本権之進定勝が、織田信長に敗れ、摂津国神津村小阪田(現伊丹空港内)に逃れ出家、教西と名乗り小庵を設けたことに始まる、由緒ある寺院で、境内にナムのひろば文化会館を建立し、多種の文化福祉活動を行っている由。
その文化会館では定期的に、お寺さんらしい座禅教室の他、お花やカメラ、こども英語、ヨガ、囲碁に加え、ピアノやギター、二胡、三味線、しの笛、コーラスなどの音楽系の教室も開かれ、折りに触れて、コンサートや落語会などのイベントも開催されているとのこと。

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今日拝見するのは、『報恩講』と『ジャワ舞踊とガムラン』の二部構成で、本堂で行われる『報恩講』に「天人の舞」としてジャワ舞踊が奉納され、その後ナムのひろば文化会館ジャワ芸能コンサートが予定されている。

報恩講』ってナニ?

浄土真宗の宗祖(開祖)とされる親鸞(1173年 - 1262年)の祥月命日の前後に、宗祖親鸞に対する報恩謝徳のために営まれる法要のことである・・・らしい。

ワタシの場合、実家にこそ月に一度、堺市寺町に1300年代から建つお寺さんから月参りの法要にお越し頂いて、つい最近は、父の通夜式、葬儀からその後の法要、一周忌、三回忌もワタシの休日に合わせて頂いて、お世話になったり、その都度お話しさせて頂いたりはしているものの、ワタシの方からお寺さんに脚を運んでこういった式典に参列することは殆ど無かった。

では、何故、今日ここに脚を運んだかと言うと、そこで奉納されるジャワ舞踊と、その後に催されるジャワ芸能のコンサートがお目当てで。

先日、大阪大学豊中キャンパスで催された、秋の大学祭『まちかね祭』。そこでジャワ・ガムランのコンサートとワークショップが行われ、そのコンサートにゲスト出演されたウィジャヤクスマ代表の西岡美緒さんからお誘い、お声掛けを頂いて。
その時頂戴したフライヤーを見ると、
【第一部】報恩講法要
[☆]?お勤め=「初夜礼賛」〈千年以上の歴史を持つ仏教の声明〉
※阿弥陀如来の御前で”浄土の天人”が踊ります!
〈ウィジャヤクスマ代表の西岡美緒さんの舞踊〉
【第二部】コンサート~ジャワガムランと舞踊~
★演目=ガムラン曲、人形劇ワヤン・カンチル、ジャワ王宮舞踊
※フィナーレは「讃仏偈」とジャワ舞踊
とある。
血中仏蘭西人濃度128%なワタシ、仏教的なことはまるで門外漢。それを多少なりとも知るにはいい機会でもあって、ジャワガムラン舞踊も拝見出来る。そして、何より女性からのお誘いは(原則的に)断らない主義!?
近くの阪大まで来ているついで・・・と言うと、罰があたる?!

というわけで、会場となる正福寺に着いたのが18時の10分前。
勝手が分からないままに、本堂と棟続きの庫裏を訪ねると、そこが受付。
来意を告げ、参加協賛費を支払い、パンフレットやら粗品(来年のカレンダー)を頂戴して、本堂へ案内される。
外陣には椅子が並べられ、参列者はそこに連なることになる。既にその大半は先客がおられる。
御簾で仕切られた内陣には御本尊の阿弥陀如来像をお祀りする須弥壇。
外陣と内陣の間、御簾の手前には蝋燭がズラリと並べられ、ちょっと異界な雰囲気で、ワタシ以外の参列者はどうやら勝手知ったる檀家さんで占められているようで、輪袈裟を掛けておられる。フランス軍用ベレー帽にサングラス、フランス・ブランドのフリース・ノーカラージャケットにコットンのストールを身に付けて、”天人”がお目当てという不心得者はワタシだけのようで・・・。ちょっとお尻がムズムズしちゃうような、居心地の悪さ。
おまけに、フリガナ付きのお経を記載した冊子まで手渡されて、読経しないといけないのかしらン、そんなの聞いてないし・・・的な・・・。ココロは仏蘭西人なれど、日本語は読めます、話せます。度胸で読経も乗り切ろう。
何事も経験。万事がお勉強だと心得れば、これも”学び”。そう考えると、苦になることなど何ひとつ無い。
・・・と、待つこと暫し。
その間に、頂いた「法要式次第」に眼を通す。
どうやら、二部構成となるのは夜の法要で、それ以外に、今日の14h00から『報恩講法要①』が挙行されて、明日の14h00には『報恩講③』が予定されている。そこでは『真宗宗歌』や『恩徳讃』の斉唱やら勤行、法話などなど、二日に渡るお式がプログラムされている様子。
すごォく場違いな感じもするのだけれど、座っちゃったからには逃げ隠れは出来ません、わな。

照明が落とされ、御簾が巻き上げられて見通しの良くなった内陣の中央、須弥壇の後ろから静々と人が出て来る気配。色とりどりの衣装が見えて、踊り手さんかと思ったら、今日のお式に参列の僧侶10数名。須弥壇の両脇に端座されて、「勤行往生礼賛偈(初夜礼賛)』が始まる。

勤行
10名の僧侶による読経、お勤めは、『往生礼賛偈』の内容こそ全くもって理解出来ないのだけれど、それを聞いているだけで、有り難いような心持ちにはなってくる。
独唱になったり、合唱になったり、カトリックでいうところの「ミサ曲」にも似て、そちらが信仰への誓いであったり、神やキリストへの賛美、嘆願であるのに対して、こちらは阿弥陀如来の功徳を讃える礼賛なのでしょうか。そう考えるとちょっとだけ分かったような・・・。

その礼賛歌に耳を奪われていると、須弥壇の前には艶やかな天人。それに扮する西岡美緒さんのダンスは、古典ジャワに由来する舞踊なのでしょうが、音も無く、浮遊するかのように揺蕩い、灯明が揺れる内陣で幻影のようにも見えて、『礼賛偈』によって召喚されたまさしく天人。佳麗にして明媚。芸術と呼んでいいものかどうかは分かりませんが、その声明舞踊も、そしてそれが融合したこの初夜礼賛がとても・・・胸が震えるほど・・・芸術的に感じられて、いいものを拝見、拝聴させて頂きました。
最後は心より合掌させて頂きました。

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なんともミステリアスなコラボレーション(と言っていいのか)を感無量のうちに終えると、ご住職からの挨拶。
それから、お供養のかやくご飯(とお茶とミカン)が配られて。こちらで頂くのかと思っていたのですが、テイクアウト仕様で持ち帰り。
それを携えて、本堂からナムのひろば文化会館内のサンガホールへ移動。
イス席150のキャパシティーのホール。ステージには僅かではあるがガムラン楽器がスタンバイして、開演の時を待つ。

19時開演の「賛仏偈 ~ ジャワガムランと舞踊の夜 ~」。
演奏は、
ジャワ伝統芸能音楽ガムラン影絵芝居ワヤンの上演、ワークショップ、作曲、演奏指導、アーティストや子供たちとのコラボレーションを中心に、2005年より大阪を拠点に活動するHANA★JOSS(ローフィット・イブラヒムさん、佐々木宏美さん)。
ジャワ島ジョグジャカルタ出身のダラン(影絵人形遣い)、ガムラン奏者、日本文学や日本芸能を題材にした独自の影絵芝居も製作している、ナナンことアナント・ウィチャクソノさん。
ガムラン奏者、作曲家、アナント・ウィチャクソノさんと共に影絵芝居を創作する西田有里さん。
舞踊に、
インドネシア芸術大学、舞踊団でガムランと舞踊を学び、帰国後、大阪、滋賀のジャワ舞踊グループ「ウィジャヤクスマ」、「ムスティカ」の講師を務める西岡美緒さん。
幼少の頃と大学時代をインドネシアで過ごし、ジャワ舞踊を始めてからは働いている時間以外ほぼ全ての時間をジャワ舞踊に費やしているといっても過言ではないという坂口裕美子さん。
ジャカルタ在住時にジャワ舞踊に出会い、現地の舞踊グループでジャワ舞踊を学び、バティックを使った洋服や小物の製作も行なっている村岸紀子さん。
インドネシア芸術大学でガムランを学び、ガムラン奏者、作曲家であると共に帰国後はジャワ舞踊にも携わっておられる西田有里さん。
の総勢7名で、のべ8名。

その7名が演じるプログラムは、
1.Swara ruling (笛の音)
2.Lere lere sembangsih (レレ レレ スンバンセ)
3.Sholawatan (ショラワタン)
4.Wayang kancil (ワヤン カンチル)
5.Srimpi “賛仏偈” (スリンピ “賛仏偈”)

19時の開演時に、小さなステージに居並ぶのは4名の演奏部隊。
小さな編成ですが、4人が4人とも演奏しながら歌も唄って、音的には十分リッチな響き。

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1曲目となる「Swara ruling (笛の音)」はジャワの日常生活を歌った遊び歌で、スリンという竹笛と太鼓の音が響き合っている様子を歌っているのだとか。高い女声が笛、低い男声が太鼓を表現しているのでしょうか。

2曲目「Lere lere sembangsih (レレ レレ スンバンセ)ジャワの日常風景で、夫婦間のやりとりを歌ったもの。身綺麗にしてるだけじゃなくて、お部屋も綺麗に片付けましょうよと亭主が問い掛け、奥様がそれに応えるという内容・・・らしいのですが、歌詞こそ理解出来ないのですが、ほのぼのとした掛け合いに愛情は感じ得ました。

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女性二人がバナナの形をした小さな打楽器クマナを手に前に出てきたかと思うと、男性二人は共に太鼓を担当し、3曲目はアラブ伝来の「Sholawatan (ショラワタン)」。イスラム文化と共にジャワに伝わった祈りの歌。

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4つ目の演目のためにステージには演台が用意されて、演じられるのはジャワ伝統影絵芝居ワヤン・クリから光源とスクリーンを取り去った人形芝居
水牛の皮を精密に切り抜いて、極彩色で着色したお人形。それは影絵でも同じもの。造形こそ平面的なのですが、動きはとんでもなく三次元的。影絵だからと言って、二次元では収まらない。宙返りやヒネリも加えて、3Dアクロバティックを演じてしまう。
ましてや光源とスクリーンを取っ払っちゃった人形劇。色鮮やかなお人形が幾つも動き出します。
演し物は「ワヤン カンチル」。
掌に乗っちゃいそうなほど小さなちいさなジャワマメジカの子供カンチルが主人公。小さなマメジカジャワの森の中、大きな動物たちと暮らし、時にトラワニに襲われそうになるのを持ち前のトンチで切り抜けるという、民話をベースにした人形劇
今回登場するのは、マメジカカンチルに、彼を喰おうとする悪いトラミツバチの大群(と言っても3匹ほど?!)、そのトラが因果応報、ハチに追われて木の洞に首を突っ込んで抜けなくなって困っているのを見つけてしまうのがサルトラを引っ張り出す役目は森いちばんの力持ちのスイギュウ
全編日本語のセリフでそれらの人形を操演するのは、ローフィット・イブラヒムさん。その傍らで、歌と演奏、グンデルの弾き語りをするのは佐々木宏美さんで、こちらも日本語版。

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トラ
を懲らしめハチミツを手に入れて、カンチルのお話しが大団円に終われば、次はプログラムのフィナーレ。「Srimpi賛仏偈”」。正確には、『賛仏偈』と『Srimpi』になるのでしょう。
この演目では、正福寺のご住職、末本弘然さんが磬子(お鈴)と読経で入り、HANA★JOSS(ローフィット・イブラヒムさん、佐々木宏美さん)とアナント・ウィチャクソノさんがガムラン演奏を担当、踊り手は西岡美緒さん、坂口裕美子さん、村岸紀子さんに、衣装を着替えた西田有里さんが加わって、総勢8名、3つの要素が融合する、有り難くもあり、珍しいコラボレーション。
賛仏偈』の読経に呼ばれるように、4名の踊り手が客席通路から舞台へ。
南無阿弥陀仏が唱えられる声明は、先ほどの『往生礼賛偈』のような抑揚はつかないのだけれど、それがたんたんと静かな動きの舞踊にマッチしているようにも思えて、厳かでもあり、和やかでもあり、観聴きしているとなんとも不思議な心持ちになってくる。
と、そこにHANA★JOSS with Nanangの演奏する『Srimpi』が加わると、ダンサーも腰に帯びた短剣を引き抜いて、やや劇しさを増した動きに変わる。
Srimpi』とは、「王様の見る夢」ということらしく、なにやらジャワの姫君と中国のプリンセスの闘いを表現しているのだとか。闘いと言っても、その動作はあくまで優雅で嫋やか。四人の踊り手が全く同じ動きで、入れ替わるように舞う。
ガムラン演奏ジャワ舞踊はともかく、それにお声明が加わって、それがこの公演のための演目とは思えないほど、ずっと以前からそうあったかのように相応で適当で、違和感を感じることなく、その世界に惹き込まれたように感じました。

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開始直前、本堂に端座した時のお尻ムズムズは何処へやら。トリートメント&ヒーリング。心洗われたような、なんとも楽しいイベントでした。

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