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Tulip Fever [散歩・散走]

今日のシネマは、梅田ブルク7で観る、「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛(Tulip Fever)」。
チューリップといえばオランダで、オランダといえばレンブラント・ハルメンソーン・ファン・レインヨハネス・フェルメール、かなり下ってフィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ?!
映画のキャッチ・コピーでは「フェルメールの世界から生まれた物語」ということで、先達て『ルーヴル美術館展』で肖像をたんと観たから今日はこの映画・・・と言う訳でも、有ったり無かったり。

折りしも、東京・上野の森美術館では日本美術展史上最大の『フェルメール展』が開催中で、そちらでの会期が終了後、大阪市立美術館にもやって来るとのこと。国内過去最多の8点が展示されるという展覧会も楽しみではあるのですが、まず今日は映画版「フェルメールの世界から生まれた物語」を鑑賞致します。

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17世紀のネーデルラント連邦共和国(現オランダ)・アムステルダムが舞台となっているのですが、アメリカとイギリス合作の歴史・恋愛映画。映倫区分がR15+指定でちょっとだけ刺激的?!
原作はデボラ・モガーの小説『チューリップ熱(Tulip Fever)』で、それはフェルメールの作品から着想を得て、絵画の世界を小説にしようと執筆されたそうな。
監督がジャスティン・チャドウィック、脚本は原作者モガー自身がトム・ストッパードと共同担当。

んン?! フランス映画でもなければ、フェルメールではフランス近代芸術所縁という訳でもない?

フランス革命後、革命軍が当時のオランダに侵入、制圧、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの弟ルイ・ボナパルトを国王と戴くホラント王国になり、間も無く完全にフランスに併合されてしまう。
オランダは一時期、短い期間ではあるけれど、フランスだった・・・ということで・・・。

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フェルメール画集

それに、「フェルメールの世界から生まれた」ということであれば、ルーヴル美術館に所蔵される『天文学者(蘭: De astronoom、仏: L'Astronome)』や『レースを編む女(蘭: De kantwerkster、仏: La Dentellière)』の影響も考えられるでしょうか。
レンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(Rembrandt Harmenszoon van Rijn 1606年07月15日 - 1669年10月04日)の作品とともに、それらが19世紀になってフランス写実派の画家ギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet 1819年06月10日 - 1877年12月31日)やバルビゾン派の代表ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-François Millet 1814年10月04日 - 1875年01月20日)の眼に止まり、彼らに続くいわゆる印象派の画家たちも影響を受けたとされ、そのブームのお陰を持って歴史に埋れていた”光の魔術師フェルメールも再評価されることになったのだから。
(絵画の)世界は広いけれど、どこかで繋がってはいるのです、と半ば強引。

しかも、オランダで本格的なチューリップの栽培を始めたのは、フランス生まれのフランドルの植物学者カロルス・クルシウス(Carolus Clusius 1526年02月19日 - 1609年04月04日)。
オスマン帝国からウィーン経由で輸入されたものを、気候が穏やかで土地がど平坦なオランダが栽培に適しているからと、持ち込んでみたら大当たり。我も俺もとチューリップを求めて大フィーヴァーとなり、この先生が球根の代価として大金をせしめちゃったのがバブルの発端とされている。「世界三大バブル」の一番最初・・・と経済の授業で学びましたね、多分。
希少品種はその希少性を以ってランク付けされたそうで、希少価値が高いほど高値で取引されることになる・・・のですが・・・。

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最も高価なチューリップとされるSemper Augustus(センペル・アウグストゥス)

球根から育つお花が昨年と違った色を付けていたり、花弁が異なる形状を示したり、変化してしまうチューリップ
それはアブラムシ(ギャッ!!)が齎らすウイルスが原因だそうで、チューリップのみに感染する「モザイク病」で、1つの花弁の色を2つ以上に分けてしまうことから「Tulip Breaking Virus(チューリップブレイクウイルス・TBV)」と呼ばれるようになるのですが、当時はまだそんなことは偉い植物学者の先生もご存知ない。来年どんなお花が咲くのか、一種ギャンブル性があって、それが一層のフィーヴァーを招いちゃったんでしょうな。
色の変化は、 アントシアニンの不規則な分布に起因する上皮表皮層の空胞における局所退色、または増強および過剰蓄積によって引き起こされる・・・らしいのですが、植物や生物はうちの奥様のご専門で、ワタシは門外漢。
現在の日本ではブレイクしたチューリップは取引してはいけないらしい。まァ、感染する病気ですからねェ。
一度ブレイクした球根は弱くて繁殖力が低い。来年どんな花が咲くかも分からないのに、取引量が増え過ぎて、今年の収穫高だけじゃあ賄えないと、来年の分まで手形による先物取引。今でこそ、栽培技術が向上して安定供給出来るのでしょうが、当時はまだそんなノウハウもなくて、それこそ需要と供給のバランスがブレイクしちゃって、ついにはバブル崩壊!!
開いた花は必ず散るが道理。大きく膨らみ過ぎた泡沫は弾けて当然? その辺のことは、ワタシでも理解出来ます。

そうそう、チューリップ・バブルを扱った小説と言えば、大デュマ(父デュマ)ことフランスの小説家アレクサンドル・デュマ・ペール(Alexandre Dumas père 1802年07月24日 - 1870年12月05日)の『黒いチューリップ(La Tulipe noire)』が偉大過ぎる大先輩。

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17世紀、オランダ黄金時代ネーデルラント連邦共和国は、チューリップ相場が沸きに沸いた、いわゆるチューリップ・バブル時代でもあった。
当時、オリエント・・・オスマン帝国から持ち込まれたばかりのチューリップは、その歴史において、(香料、絹織物)貿易、科学、軍事、芸術が最も栄華を極めたオランダに文字通り花を添え、一大ブーム。投機の対象ともなった。
八十年戦争(オランダ独立戦争)も終結、スペイン王国から独立を勝ち取った後、平和の象徴ということでもあったのでしょうか。市民層までが、トルコ・アナトリア地方を原産地とするユリ目ユリ科チューリップ属のお花に夢中になり、品種改良が盛んに行われ、希少種は邸宅一軒分の価値に相当したとか。
一軒分・・・? 土地値(坪単価)はどれくらいで、どれだけの広さ・大きさがあって、総額はお幾らユーロなのよ?? というツッコミはなし。バブルでフィーヴァーですから、異常なほど高騰した後あっけなく突然に下落しちゃいますから。
12エーカー(5ヘクタール・5,000平方メートル・15,125坪)の土地との交換を持ち掛けられた球根が有ったとか無かったとか。で、坪単価はおいくらギルダー?
パパ・デュマの『黒いチューリップ』では100,000ギルダーの懸賞がつけられていましたな。

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そんな時代のお話しで、キーワードは「花に狂い、愛に狂う」。
当時のオランダで大ブームとなった、チューリップ肖像画がテーマ。若く美しい人妻を中心に、その二つの主題が縺れ合いながら、複雑なハーモニーへと展開、ドラマティックで意外な結末へと至る。

このお話しは、今や大邸宅の女主人となったマリアが愛娘ソフィアに語って聞かせる物語り。彼女がかつて仕えた”香辛料の王”とその若き後妻、その若妻が愛したひとりの画家の物語り。そして、チューリップ熱に浮かされたアムステルダム中の老若男女のお話し(以下、ネタバレ注意)。

幼い頃に病気で二親を亡くし、聖ウルスラ修道院で育った孤児ソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)は美貌の女性へと成長し、富豪で有力者の貿易商人、コルネリス・サンツフォールト(クリストフ・ヴァルツ)に嫁ぐことになる。
彼女が”香辛料の王”に嫁すことで、その見返りとして孤児院に暮らす多くの子供達に新天地ニューヨークでの豊かな生活が約束される。献身。
先妻と二人の子供を亡くしているコルネリスはなんとしても跡継ぎが欲しいとほぼ毎晩(?)お励みになって、ソフィアも貧しい境遇から救ってくれたご恩に報じるため、それに応えようとするが一向に懐妊の兆候が見られない。
嫁して、早三年。あと半年以内に子供を授からないと、離縁して別の女を迎えることになる。
ソフィアは怪しげな産婦人科医を訪ねてみたり、神にお縋りしてみたり、そして夜毎に励むのだが・・・。

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当時好景気に浮かれて財を成した者たちの間では、その成功の証しとして肖像画を書き残すのが一種のステータスでブームでもあった。気晴らしも兼ねて、コルネリスも美しく若い妻とのツー・ショットを描かせようと画家を雇い入れる。”香辛料の王”はこんなに若く美しい妻を娶っていたことを後世に伝え、羨ましがらせたい・・・と半ば虚栄心。
その依頼に応じたのが若手画家ヤン・フォン・ロース(デイン・デハーン)。
訪問するなり、ヤンは”フェルメール・ブルー”のドレスを纏ったソフィアに一目惚れ。ウルトラマリン・・・遠い海の青。それに『真珠の耳飾り』と髪飾り。まァ、美しいことったら。
ソフィアは当初こそヤンの横柄な態度が気に入らなかったが、キャンバス越しに見詰め合ううちに若いモデルと若い画家はやがて、小説・映画の定法、お定まりのフォーリン・ラヴ。夫の眼を盗んでは、ヤンの粗末なアトリエへ通うことになる。

一方、サンツフォールト家に雇われるメイドのマリア(ホリデイ・グレインジャー)は魚行商人のウィレム・ブロック(ジャック・オコンネル)と相思相愛。彼が訪れる度に魚を買うものだから、サンツフォールト家は連日魚料理で、主人からクレームがつくほど。新鮮そうで、十分に美味しそうなんですけど。

豪邸の主寝室でも連夜のメイクラヴ、その階下の女中部屋でもメイクラヴ、ヤンのアトリエでも連日のメイクラヴ。RG15+指定も止む無しですな。
肖像画がひとつ仕上がるごとに、ソフィアヤンの愛も深まっていく。

マリアと所帯を持ちたいと一攫千金を狙うウィレムチューリップ相場に手を出して、それは極々一般的な品種、白一色のお花の安価(18ギルダー/50球)な証明書であったのに、それにサインを貰おうと訪ねた聖ウルスラ修道院のお庭の指定された区画には奇跡のブレイカー・・・ブレイク(色分け)した希少品種、白地に赤縞が入ったお花が一輪だけ咲いていて・・・。ウィレスはその奇跡のお花に「マリア提督」と名を付ける。
50球を18ギルダーで買ったチューリップの球根が、その一輪で920ギルダー、2,555.55555555556倍に高騰!!!! バブリーにもほどがある。
この魚屋さん、随分といい人のようで、自分の取り分は800ギルダーで十分だと、残りは孤児院の子供達に寄付しちゃう。男前ェ!!
希少なブレイカーの証明書を手に入れてしまったウィレムであったが、コートを取り違えたソフィアヤンとの密会現場を目撃しちゃって、そのコートから愛しのマリアちゃんが浮気していると勘違い。嗚呼。
鯔のつまりは、チューリップ市場が開かれる酒場で「マリア提督」の証明書の入った財布をすられてしまい、恋人と全財産を一気に失って、一層自暴自棄。店内で大暴れして、急遽海軍に放り込まれることになって、愛しのマリアちゃんに別れを告げる間も無く、アムステルダムから姿を消し、アフリカ航路の人となる。

美しい女性・・・3本のチューリップより艶やかに。
ソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)、マリア(ホリデイ・グレインジャー)に加えて、カーラ・デルヴィーニュアナジェとして出演。その役どころは、絵画モデルで売春婦、そして相場を吊り上げるためのサクラで、掏摸。ウィレムのような一見さんを惑わせて、挙句の果てに巾着切り。そりゃあ、相場も荒れますわ。

そうとは知らず、マリアウィレムとの子を授かっていて、さあ大変。
子持ちのメイドなんて雇って貰えるはずもなく、かといって、結婚前の出産では実家に戻ることも適わない。戒律の厳しい時代、神様もママもお許しになる道理がない。何しろ、伴侶は消息不明。
ソフィアに相談し、もし解雇されるようなことになれば、ヤンとの密会を旦那様にチクるぞとソフィアを恐喝!!

で、何を思ったのか、一計を案じたソフィアは自分が懐妊したことにして、尽くしてくれる夫には跡継ぎを得たと虚偽の報告。マリアのお腹と悪阻の苦しみを隠しつつ、まるで身分が入れ替わったように、身重のマリアを庇う内緒事。怪しい産婦人科医を従わせ、示し合わせた隠し事。
喜びつつも妻との夜の営みが持てなくなったコルネリウスはユトレヒトに囲う他の女性のところへ長期滞在。いいご身分ですこと。
その留守こそ、ソフィアヤンが待ち望んだ時間。

しかし、医師の協力があったとはいえ、妊娠したマリアに代わって、出産まで妊婦の振りなんて続けられるのかしらン?
原作者で脚本も担当したデボラ・モガーは結婚3回、2児の母でもあるから、騙せると判断したのでしょう。オンナは、時に大胆で、往々にして恐ろしい!? 

ヤンソフィアを幸せにするにはお金が必要と、彼もまたチューリップ狂へと身を転じようとするが、何せ彼には元手もない。恐れ多くも、修道院のお庭に不法侵入のうえ希少種の球根を盗もうとして、見張りを勤める修道院長さま(ジュディ・デンチ)の杖でメッタ叩きにされ、敢え無く御用、どころか昏倒。
ところがこの院長さまは何をお考えか、咎めるどころか、所有権を持つウィレムが居なくなっちゃったからと「マリア提督」の権利をヤンに与えておしまいになる。孤児院出身のソフィアとの仲を知る由もない・・・はずなのに、若いイケメンにはお優しいのかしらン? てか、所有者が死んだわけでもないのに、勝手に譲渡してもいいものかしらン?! いや、たとえ死んでも・・・。
それにしても、禁欲的なはずの修道院のお庭にバブルの元凶、希少なチューリップが咲いているとは、神の御技か御加護か奇跡か、何れにしても因果なこと。
そして、バブルに身を投じたヤンに、院長さまは「画と欲、両方を得ることは出来ない。画を捨てるのか」とお尋ねになる。このお方、もしかして、何もかもお見通しなのかしらン?

球根ひとつが馬一頭、馬車一台、邸宅一軒と、高騰を続けるチューリップ市場。こんな馬鹿げた相場は早晩崩壊すると、”香辛料の王”は傍観し、美しい妻のために切り花を買い求める程度。スパイス・キングだけに、辛口コメント?!
それでも、それは天井知らずに上り詰め、「マリア提督」はついに10,000ギルダーの大台。現在の日本円換算で300,000,000円。元値の70,987,654.3209877倍!!

風雲急を告げ、突然の嵐が物語りの先行きを暗示する中、「マリア提督」が10,000の高値を付けるのと相前後して、ソフィアマリアが産気付く。
邸宅の寝室に二人で籠り、産婦人科医と産婆さんだけに立ち会わせ、その奸計を知らないコルネリウスは蚊帳の外。ソフィアの出産、実はマリアの分娩は、4時間超の長丁場。
コルネリウスは医者に、「もしもの判断が必要なときは、跡継ぎではなく、母体を生かして欲しい」と懇願する。
先妻が第1子を死産、第2子も難産となり、その時は、跡継ぎを生かしてくれと神に祈ったそうで、その結果、母子ともに天に召されてしまった過去を持つ。今回は、両方無事が何よりだが、もしもの場合は、何としてもソフィアを生かしたい・・・って、出産するのはマリアなのだが・・・。このお方もいい人、外に女を囲ってるけど・・・。
マリアは無事に女の子を出産。目出度く計画通り跡継ぎとなる子供の誕生・・・なのですが、ソフィア、偽の妊産婦は、感染症による死亡で、棺に入って家を出ることになる。愕然とするコルネリウス

が、これこそ、ソフィアが企んだ奸計の主意。ご恩ある夫には(偽の)跡継ぎを遺し、自らは遺体となって家を出て、相場で大金を得たヤンと手に手を取って、駆け落ちしようという算段。棺桶まで早手廻しで、用意周到。
感染症だから触れてはいけないと医師はコルネリウスを遠ざけ、ソフィアは棺桶に入れられ、小舟に乗せられ、港近くの小屋へと逃れる。
禁断の愛は、何やら犯罪めいた陰謀にアラスジ変更?!

ヤンの元には陰謀に加担した産婦人科医やら借金取りやら有象無象が集まって、この逃亡劇には相当なコストが掛かった模様。棺桶と船のチャーター、その運搬人やら船頭やら・・・。
しかし、彼には10,000ギルダーの値を付けた「マリア提督」がある。
修道院へその貴重な球根を取りに行くのはヤンの友人ヘリット(ザック・ガリフィアナキス)。この男、悪いヤツではないのですが、酒癖が悪く、いつも呑んだくれているような奴で、案の定、大事なお使いの帰り道で諍いに巻き込まれ、呑んではいけない酒をたらふく呑んで、事もあろうに一緒に貰って来た玉葱と間違えて10,000ギルダー相当のチューリップを食べちゃった??!!

一方、棺から出されてヤンの到着を待ち侘びるソフィアは、そこで突然正気に返って、神をも欺くような行為、恩ある夫に背いた行為に後ろめたさを感じ、ヤンを待たずにコルネリウスの邸宅へと走り出す。
途中、彼女のコート・・・フェルメール・ブルーの裏地を使ったコート・・・は風に翻り、海面に漂う。
邸宅に戻ると、コルネリウスは産まれたばかりの赤ん坊をソフィアと名付け、愛おしそうに抱いている。それを窓の外から眺める(偽)母ソフィア。本当の母マリアは初乳を与えて満足げ。
入って行くことが出来ずに、行くあてを無くして、独り浜辺を流離うソフィア

一夜明け、チューリップ相場は大暴落。チューリップの取引は禁止されることになる。
水面に漂うコートを見たヤンは、ソフィアはそこから身を投げて死を選んだと思い込む。

と、そこへひょっこり帰ってくるのは海軍兵としてアフリカへ行っていたウィレムくん。一年振りに再会したマリアちゃんは赤ん坊を抱っこして、何がなんだか分からない。その子は浮気相手、ヤンとの子供かと問い詰める。
この一年間の経緯を話して聞かせるマリアヤンと密会していたのはソフィア奥様。この子は確かに私とあなたの子で、これこれしかじか。
台所での二人のやりとりを隣りの部屋で偶々立ち聞きしちゃったコルネリウス。再び、愕然!!
妻の不貞。そこからの偽り。何人もが加担した密謀。跡継ぎだと思った幼子ソフィアも他人の子。知らないのは自分と旅をしていたウィレムだけ。
堪忍袋の緒を切ってもおかしくないところですが、さすがは”香辛料の王”、全ては先妻を死なせてしまった自分の罪だと認め、ソフィアマリアも赦して、この大邸宅とそこにある調度一切何もかもを遺産としてマリアに相続すると、着の身着のまま、単身インドへと旅立ってしまう。男前えェェェ!!!!
こちらはこちらで、ソフィアヤンと結ばれて、幸せに暮らしていると思っちゃったんでしょうなァ。

そうして、8年の月日が流れ・・・、

“香辛料の女王”となったマリアは約束通り、娘ソフィアを頭に6人の子供を得て、ウィレムと睦じい生活。
コルネリウスバブルにも乗らない才覚のある遣り手。インドでも大成功を収め、やっと念願の家族も手に入れる。
チューリップ狂から眼が覚めて再び絵筆を取って、それなりに名前も売れ出したヤン
ソフィアを描いた絵画が幾つも飾られた彼のアトリエを訪れるのは修道院長さま。修道院に壁画を描いて欲しいとのご依頼。
院長さまに従って、修道院に赴くヤン。その壁を描いていると、院長さまを先頭に通り掛かる修道女の一団。その中には懐かしいソフィアの顔があって・・・。

・・・と、母マリアが8歳になった娘ソフィアに語り聞かせるお話しはここまで。
壁画を仕上げた後のヤンの消息も、ソフィア聖ウルスラ修道院で一生を終えることになるかも、これからのお話し。

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さて、ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)こと本名ヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト(Jan van der Meer van Delft 1632年10月31日? - 1675年12月15日?)は、確かにこの時代の画家ですが、南ホラント州デルフト出身で、絹織物職人でパブと宿屋を経営していた父のもと比較的裕福に育って、バブルもフィーヴァーも対岸の火事。殆どデルフトから出ることもなかったようで、映画に出てくる若い画家ヤン・フォン・ロースは別人・・・というか、デボラ・モガーの創作。
・・・ではあるのですが、フェルメールについては、現存する作品数も33〜36と少なく、その生涯についても詳らかでない部分も残って、もしかしたら、ひょっとしたら若い時分にはアムステルダムへ赴いて、美貌の若妻と恋に落ちて、チューリップ相場に手を出した・・・のかも・・・ということで・・・??
もしかして、ひょっとして、修行時代が謎に包まれ、親方組合に突然加盟したように見えるヤン・ファン・デル・メールの、その修行時代・・・なわけは無いが、そう匂わせたいのでしょうか。

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オランダ
ではなく英国でロケを敢行、とはいえ、その風景、街並みも美しいし、登場人物、キャストも・・・若き人妻ソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)、若い画家ヤン(デイン・デハーン)も美貌で、当時を忠実に再現した衣装や調度・・・ソフィアが着る”フェルメール・ブルー”のドレスも艶やか、そして「真珠の耳飾り」、もちろんチューリップも愛らしいのだが・・・。
若く貧しいタレントが美貌の人妻に出逢って・・・とラヴ・ストーリーとしてはありがちなキッカケで、その後の展開は少々強引。勘違い、奸計、協力、裏切り、欲望、執念。
もしかしたら、ひょっとしたら、全ては望まぬ結婚より修道院に留まりたいと望んだソフィアの諮りごと? コルネリウスを騙し、ヤンを利用し、メイドのマリアや産婦人科医、産婆まで巻き込んだ彼女の密やかな陰謀・・・だった?
跡継ぎばかり望まれて、年の離れたコルネリスとの間に真実の愛を見出せず、ヤンとも別れてしまい、修道院に戻ったソフィア。彼女の居場所はそこにしかなかった・・・ということなのでしょう。
美しい花は在るべき場所で咲いてこそ美しい。手に取るな、やはり野に置け、蓮華草・・・この場合、チューリップですが・・・。
聖女ウルスラ(Sancta Ursula)の庇護のもと、永遠の処女でいたかったのかもね。Fever(フィーヴァー)より、Forever(フォーエヴァー)ってか。
恋愛面だけを追うとちょっと粗いようにも思えるのですが、ソフィアチューリップと考えるとまだ面白いかも。
聖ウルスラ修道院の畑で偶然産まれた奇跡の花は、望まれるままに世に出て、評判から高値、”香辛料の王”に望まれ、若手画家を虜にして、フィーヴァーするほどのバブル景気を齎すがそれも一時、ありふれた花になってしまう。感染症からブレイクした希少種であるから、繁殖力が弱い・・・子を成さないっと。
熱は冷めて、泡沫は弾け、産まれた畑で再び球根から開花するチューリップの美しさ。
話しの中盤で、ウィレムに「孤児院で育った娘は、(身体)を売るか、嫁ぐか、神に仕えるかしか道はない」と仰言っておられるし、観ようによっては、全部修道院長さまの差し金に見えなくもない?!
なんにせよ、フィーヴァーでバブルとはいえ、少々荒唐無稽過ぎるお話し。
フェルメールの世界から生まれた」という割りには、それを感じさせるのは、ヤン・フォン・ロースの画風がフェルメールっぽいところと、ウルトラマリンのドレスと真珠の装身具だけ。
なぜ、当時のオランダチューリップ・フィーヴァーになったのかは、その経緯、歴史を予め知っていないと伝わりにくいし、ストーリー的にはギリギリ及第点。
コルネリウス役のクリストフ・ヴァルツのピリッと締まった演技、スパイス・キングだけに。神秘的で怪しげな修道院長ジュディ・デンチの演技。二人のベテランが画面を引き締め、ストーリーを糺してくれたように感じました。若いキャスト、三人の美人女優と二人のイケメンは・・・まァ、画面に咲いたお花ということで・・・。うち二人は綺麗なヌードも披露してくれましたし・・・。
フェルメールを謳うなら、もう少し繊細な筆致・・・タッチで描いて欲しかったかなァ。

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でも、ね。ワタシはやっぱり花より団子。お菓子とお茶を用意して、文庫化された原作も読んでみよう。

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