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Eva [散歩・散走]

梅雨明けからいきなりの盛夏は、暑いを通り越して、肌が焼けるようで焦げるようで、小麦色どころか炭化してしまいそうなほど。日の出とともに殺人的な陽射しがギラギラと射して・・・肌を刺して、これではポタリングどころか外出もままならない。こういうときは、エア・コンディショナーの効いた映画館がよろしい。
で、今日は2本立てで、午後はテアトル梅田で『エヴァ(EVA)』を鑑賞致します(以下、ネタバレ注意)。


EVA」というと、ついつい汎用人型決戦兵器を想起して、『残酷な天使のテーゼ』を口ずさんでしまいそうになるが、左にあらず。

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ロンドン生まれの作家、ジェイムズ・ハドリー・チェイスが1945年に発表した『悪女イヴ(Eve)』を原作とし、ブノワ・ジャコー監督、脚本がブノワ・ジャコ―ジル・トーラン娼婦エヴァイザベル・ユペール、その夫のジョルジュ・マーランマルク・バルべ、新進作家ベルトラン・バラデギャスパー・ウリエル、その婚約者カロリーヌジュリア・ロイベルトランのスポンサー、ジャン・ルイことレジス・グランリシャール・ベリを配したフランス映画。



ジェイムズ・ハドリー・チェイス
(James Hadley Chase 1906年12月24日 - 1985年02月06日)は、その生涯で90作以上、多くの著作を持つ人気の探偵作家。
彼の作品は、フィルム・ノワールに一脈通じるものがあるのか、フランスでの人気が高く、幾つかの作品は映画化もされている。その代表作のひとつに数えられるのが『悪女イヴ(Eve)』で、この作品も1962年にすでに一度、ジョセフ・ロージー監督の手によって、ジャンヌ・モロー主演の『エヴァの匂い(Eva)』となっている。
原作発表から73年、前作『Eva』から56年を経て、新作された『EVA』は舞台を現代のパリに移し随分と今風で、登場人物もみんなフランス人になってはいるものの、原作の色合いを大きく留め、官能と誘惑、虚構と現実に揺れる男女の駆け引きを描く。

フランスで半ば隠居生活を送る老作家宅を訪ねた新進作家のベルトランは、その入浴を手伝った際に、発作から急死した老作家の遺作となるはずの戯曲原稿を盗んでしまう。それが空前の大ヒットとなり、スポンサーもついて、当然のように次作を期待されるが、当たり前ながらそんなの書ける道理も無く・・・。
執筆のためアルプス・アヌシーの別荘に赴いたところ、吹雪で立ち往生した男女が窓ガラスを割って不法侵入のうえ、女性の方が優雅にバスタブで寛いでいるのを発見。怒り心頭になるはずが、何故か一目でその女性・・・娼婦エヴァに心奪われてしまう。
次作の題材にするを口実に、彼女を探し当て近づこうとするが、けんもほろろの扱いを受け、一層恋慕の炎を燃え上がらせて、自身だけでなく、婚約者やスポンサーまで巻き込んで炎上、自堕落に身を滅ぼしていく・・・というお話し。

ベルトランにとってエヴァが「ファム・ファタール(Femme fatale・運命の女)」だったのでしょうが、映画でヴィジュアル化されると、その「恋心を寄せた男を破滅させるために、まるで運命が送り届けたかのような魅力を備えた女」はうんと年上に見えて、そのツンデレっぷりが、ベルトランを厳しく戒める母、あるいは姉にも見えて、ちょっとマザコン、シスコンの匂いもするのだけれど・・・。
ファム・ファタール・・・、19世紀末の象徴主義的な文学や絵画のモティーフとしても多く登場し、「男を破滅させる女」という虚構とも現実ともつかない概念的な女性像。いかにもフランス的であるのだが・・・。
もしかしたら、老作家の遺作を盗んだ(他にも幾つか机の上の備品をポケットにねじ込んでいた)ことを懺悔させるために遣わされた聖母なのかも・・・。
・・・と、色々深読みしてしまう。
罪の意識からベルトランが自ら生み出した虚構の女性だとしたら、偶然か意図的か、エヴァに出逢ったカロリーヌが事故死しちゃうのがちょっとホラー。スポンサーのレジス・グランが既のこと踏み止まるのは分別ある大人だから?
あまり、物や者に愛着や執着を持たないワタシには、そこまでのめり込んじゃうパラノイア的思考あるいは妄想性パーソナリティ障害的な意識は理解しがたくて、知的でクールで謎めいたイザベル・ユペールの「Eva」には好奇心を刺激されはするものの、ストーリーとしては『悪女イヴ』というより「ダメ男ベルトラン」かと思っちゃったりもするのだけれど、罪の意識からの因果応報というのならちょっと分かる気もします。悪いことをしたら、罰が当たるのね。

お盆休みには原作を読み返して、ジャンヌ・モロー版『エヴァの匂い』のDVDも探してみようかと思います。

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