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C’est la vie! [散歩・散走]

梅雨明けからいきなりの盛夏は、暑いを通り越して、肌が焼けるようで焦げるようで、小麦色どころか炭化してしまいそうなほど。日の出とともに殺人的な陽射しがギラギラと射して・・・肌を刺して、これではポタリングどころか外出もままならない。こういうときは、エア・コンディショナーの効いた映画館がよろしい。

で、今日はシネ・リーブル梅田で『C’est la vie!(セラヴィ!)』を鑑賞致します(以下、ネタバレ注意)。


C'est la vie!.jpg

C’est la vie
・・・セラヴィ・・・は極フランス的な慣用句。”C’est”が「これが~」、”vie”が「人生・生活」。”la”は女性名詞に使われる定冠詞。直訳すると、「これが人生」なのですが、「まァ、こんなもんだよねェ」とか「まァ、仕方ないよねェ」的な使われ方が一般的。まァ、まァ、まァで、「人生なんて、悲喜交々、まァ、いいこともあれば悪いこともあるよねェ」といった、言い回しのニュアンスでしょうか。
あんまし使いません? ワタシはしょっちゅう使います。

と、フランス語のお勉強はともかく、もちろんフランス映画です。



ン?! この映画、英題が『C’est la vie!』で、それを日本語化しての『セラヴィ!』なんだけど、原題は『Le Sens de la Fête』だそうで。そうなると、かなり意味合いが変わってくるような・・・。
fête”は「休日・祝祭日」だったり、「祝宴・饗宴」だったりで、”sens”は「感覚・認識」、「観点」、「意味」、「方向」。直訳すると、「祝宴の意味」でしょうか。

この映画は、パリ郊外のシャトーで催される結婚披露宴での顛末。で、「祝宴の意味」なのでしょう。ですが、英語版ではフランス人がよく使う慣用句をタイトルにし、日本版もそれに倣ったうえで、そのキャッチフレーズを「ハレの日もあれば、悩める日もあるさ」としちゃった。
世界中51ヶ国で大喝采を受けた、『Intouchables(最強のふたり)』の監督とスタッフによる最新作のフレンチ・コメディ。

晴れの日。お天気の話しではありません。
結婚披露宴でのお話しですが、その中心にいるのは新郎&新婦ではなく、30年間数え切れないほどの結婚式・披露宴をプロデュースしてきたベテラン・ウェディング・プランナーのマックスさん。彼の周りに集まるのは、何故かみィんな個性的・・・というか、ひと癖もふた癖もある(ポンコツな?)ヤツばかりで・・・。

映画の冒頭、結婚式の見積りに来た若いカップル。予算削減のために料理の前菜は減らして、衣装や他ももう少し質素にしたいという依頼に対して、それならメインディッシュも省いて列席者に食べ物を持ち込んで貰えば・・・などと、少々苛立たしげなベテラン・プランナー。そろそろ引退を考えているうえに、プライベートも込み入ったことになっていて、近頃どうも面白くないご様子。

が、仕事は仕事。17世紀に築城されたパリ郊外のシャトーを借り切っての豪華絢爛な祝宴が執り行われる。今日はそのハレの日。それを滞りなく終わらせて、自身最後の花道としたいが・・・。
今回の新郎は意識高い系のエリート(?)でナルシスト、かなり注文が細かい。

それを盛り立てるはずの彼が抱えるスタッフの多くは、今のフランスを象徴するかのように、コストの関係もあってか、ほとんど移民。中には不法就労(?)な者もいて。

彼に変わって細事を取り仕切りたいマネージャは黒人女性のアデルさん。テキパキと動こうとするのだけれど、その分早とちりだったり、他のスタッフとぶつかっちゃったり、誤変換して届いたマックス氏からのメールを読み違えてレギュラ・スタッフをクビにしてとんでもなくスットコドッコイな助っ人を呼んだり、バンド・ヴォーカル兼MCとは事あるごとにいがみ合ったり。

もうひとりの女性スタッフはジョジアーヌさん。彼女はマックス氏と絶賛不倫中!!・・・でおきまりのように奥さんと別れて欲しいと迫られるも、マックス氏それにはどうも踏み切れないが、事情を察した奥さんの方が自宅を出て別居中。嗚呼!!
業を煮やしたジョジアーヌさんは、臨時雇いのマッチョな若いスタッフと見せつけるようにイチャイチャしたり、これ見よがしのキスまでしたり・・・。

別居中の奥さんの弟、マックス氏の義弟はジュリアンさん。彼もスタッフとして参加するが、クタクタヨレヨレの衣服に髭面。なのに、細かいところがあって、フランス語の文法の違いやテーブル席の名札の書き方が気になって仕方がない偏執ぶり。

祝宴を撮影するために呼ばれたカメラマンのギイさんはマックス氏とは古い付き合いながら、今のご時世、お呼ばれした参列者が思い思いにスマートフォンや携帯電話で撮っちゃうから、出番がないどころか邪魔者扱いされて、テーブルを回ってはつまみ食いばかり。
暇だからと、スマートフォンの出会い系アプリで近場にいるお相手をサーチするのだが・・・。

本来は新郎のリクエストで今時なDJが来るはずがそちらはドタキャン、代わりに来たのがフランス人なのにアメリカンなノリのジェームスことエティエンヌさん。とにかく派手に振る舞いたいのに、上品にしろと指図されたうえ、参列者、それもご年配の方々から旧い楽曲ばかりリクエストされて、どうもノリにくい。

人手が足りず急遽呼ばれた臨時雇いのサミーさんは、絵に描いたようなポンコツのスットコドッコイぶり。ヒゲを剃れと言われて、電動シェイバーを使おうとするのはいいのだが、冷蔵庫のコンセントを抜いてしまって・・・。

他の多くはアフリカ系やらアジア系の移民たち。言葉が上手く伝わらなかったり、マックス氏が誤入力・誤変換したメールでの指示を取り違えたり・・・。古城に合わせて、ロココ調(?)な衣装で立ち振る舞って欲しいという新郎のリクエストにタジタジ。カビ臭いカツラは被りたくない。
これではキャッチコピー通り、ハレの日ではなく、マックス氏の悩ましい1日。せっかくの祝宴、饗宴がドタバタドタバタドタバタと。

注文の細かい、意識高い系エリートの新郎ピエールさんに寄り添う新婦エレナさんは、スタッフのひとりの昔の恋人。場所柄、状況を弁えず、よりを戻したいと迫るスタッフにこの新妻もまんざらではない様子。
新郎の母親(役名なし)は、一見上品でまともそうなマダムなのだが、もしかしたら一番の食わせ物? ピンク色のiPhoneを使って・・・。随分と気がお若いのかしら。

そんな大人たちの世界を垣間見ながら、意外に達観しているのか、たじろぐ様子もないのはギイさんに連れられて来た社会見学の男子中学生”モップ頭”くん。メガネがカワイイ♡ ギイさんと一緒につまみ食いして回るわ、彼に出会い系アプリの使い方を伝授するわ、意外にしたたか者?

着替えたくないとゴネるスタッフはマックス氏が一喝。他の細かいミスは上手くカバーしてなんとかメインディッシュまでこぎつけたが、コンセントを抜かれて冷蔵庫がオジャンになって羊肉が腐ってしまって、それを事前に賄いとして食べたバンド・メンバーたちは俄かの腹痛。そんな料理は列席者に提供出来ない。
風雲急。ポンコツはポンコツなりに、みんなが奮起して、食材を調達し、改めてメインディッシュを調理して。その間、間を繋いでお腹を膨らませるために矢鱈に塩っぱいパイや炭酸水が振舞われたり。料理人もウェイターもやれば出来るじゃん。

何かと演出にクビを突っ込みたい新郎は自身のスピーチを長々と披露。
食中りしてメンバーを欠く中、ライヴもヴォーカルとベーシストだけで乗り切って、さあ、最後のサプライズで目出度くお開きになるはずが・・・。
そのサプライズ演出。天使に扮した新郎が気球に吊られて空を舞うというもの。命綱を託されたアデルさんとジェームスことエティエンヌさん、それまで諍いあっていたのが嘘のように、何故か急に惹かれあって、ハグ&キス。大事な命綱を離してしまい・・・。
最後の最後の大演出。打ち上げ花火もマックス氏からの指示を待たずに誤射!!!! そのため、電力量の少ない古城のブレーカーが飛んでしまって、停電で真っ暗闇。
ヒューズとともに、マックス氏、堪忍袋の緒が切れる!!

C’est la vie!

喧騒を離れてお庭の片隅に座り込むマックス氏。タバコを喫って、別居中の奥さんに電話をするも、繋がらない、取り合ってくれない。
彼を慰めに来たギイさん、本当は報道カメラマンになりたかったんだと、おっさん二人が悲哀にくれる。真夜中だというのに黄昏れる。

が、そうもしていられない。シャトーの建屋に戻ってみると、停電なったその中はやけにひっそり閑として、騒ぎがなかったかのような。
真っ暗な中、広間にだけ火影が揺れて大勢の人の気配。何やら音楽が聴こえる。
蝋燭や松明を頼りに、ギターとヴォーカル、それにアフリカンやアジアンな笛と太鼓が加わって、真夜中のアコースティック・ジャム・セッション。なんか、ファンタジックでいい雰囲気。
雨降って地固まる。ヒューズ飛んで結束力高まる?!

パリ郊外のシャトーに白々とした朝の訪れ。昨日から続いたドタバタは何処へやら。終わり良ければすべて良しで、お式に列席された方々は帰って行くが、スタッフには後片付けが残っている。
そこで引退を表明するマックス氏。披露宴の最中に、不法就労を疑う役人のような態で敷地をうろついていたのは事業を買い取りたいという取引相手。スタッフたちは古い友人でもある同業者が引き取ってくれると話しは出来ている。
お前たちは私のことを蔑ろにするから、そんないい加減なことばかりするのだろう。もう御仕舞いだ。まァ、愚痴も言いたくなりますわなァ。
ところが、それに対するスタッフ一同の返答は・・・。

気球とともに飛んで行った新郎は無事回収されて、マックス氏の奥さん(結局一度もスクリーンには登場せず)は昔の恋人のところへ去って、ギイさんは報道カメラマンになって危険なところへと出掛ける決意をし、マックス氏は事業の譲渡契約書を破り捨てて・・・。ポンコツだけど憎めないスタッフもみんな彼のもとに留まることになる。大団円!?
C’est la vie!」・・・ハレの日だって残念なことは起こる。
Le Sens de la Fête」・・・晴れの舞台の裏側に集ったポンコツたちの意味とは?

監督と脚本はエリック・トレダノオリヴィエ・ナカシュ。2015年11月に起こったパリ同時多発テロ。それを原因として、多くの人々の間に広がった不安と悲しみを笑い飛ばしちゃおうとこの映画を企画したのだとか。
ベテラン・ウェディング・プランナーのマックスを演じるのは、ベテラン俳優にして脚本家でもあるジャン=ピエール・パクリ。この作品で、2018年セザール賞主演男優賞ノミネート。
カメラマンのギイジャン=ポール・ルーヴ、バンド・ヴォーカルでMCのジェームスことエティエンヌに扮するのはジル・ルルーシュ、義弟ジュリアンにはヴァンサン・マケーニュ。何れも監督業もこなす名優で、新郎ピエール(バジャマン・ラヴェルヌ)と臨時スタッフのサミー(アルバン・イワノフ)はコメディアン。それぞれがそれぞれの監督作品にも出演している、気心知れた盟友でもある。
マネージャのアデルには、ジャン・リュック・ゴダール作品にも出演したアイ・アイダラ。彼女もこの作品でセザール賞とリュミエール賞にノミネート。
マックス氏のスタッフ兼愛人のジョジアーヌはカナダ出身のスザンヌ・クレマン。彼女はカンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を得ている。
チャーミングなマダム(新郎の母・役名なし)には演出家でもあるエレーヌ・ヴァンサン
何れ劣らぬ個性たっぷりな俳優が個性に満ちた役柄を演じて、そりゃあ、面白くないわけない。

フランスのシネマなのだが、使われている楽曲は、R&B「Lovely Day」だったり、「The Girl From Ipanema(イパネマの娘)」だったり、テーマソングに至っては「Can’t Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)」。まァ、懐かしかったりはするのだが・・・。

もしも、『パート2』が作られるなら、アデルさんの仕切りで執り行われるマックスさんとジョジアーヌさんの結婚披露宴でしょうか? またもスットコドッコイなポンコツ大集合となって・・・?

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