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Wiener Brise Ⅰ ~ 宮本あき子ソプラノリサイタル [音楽のこと]

月に一度のお楽しみ・・・どころか、今月の「ワンコイン市民コンサート」は贅沢にも二週続きの2本立て。『ウィーンからのそよ風 ~ Two Breezes from Vienna』とサブタイトルされて、今日は『その1』となります。

 

"Wiener Brise"の第1陣は『宮本あき子ソプラノリサイタル』。
ウィーン在住の宮本Fosterあき子さんはリート、オペラをレパートリーとして国際的に活躍するリリックコロラトゥーラソプラノ。本日のプログラムもJ.S.バッハW.A.モーツァルトからG.ヴェルディG.プッチーニ、歌曲(リート)からオペラの演目までヴァラエティに富んだ構成となる。
ワタシは不勉強で、普段あまり歌曲や歌劇は見聞きせず、iTunesのレパートリーにもそれは少なく、拝聴・拝見して、見聞を広めるのにいい機会。しかも、あまり披露されることの少ない楽曲や気軽に聴くことの出来ない演目がプログラムに並ぶとなると伺わないわけにはいきますまい。

宮本あき子ソプラノリサイタル.jpg


いつも通り開場が14:30、開演が15:00。
待兼山を登り、大阪大学会館のエントランスをくぐり、ホール前まで至ると、開け放たれたホワイエの扉、その奥から、本番ギリギリまで音作りをされておられるのか、Bösendorfer252の楽音が聴こえる。音楽の都で1920年に造られたそのピアノも、確かに「ウィーンからのそよ風」の一部で、柔らかで優しげなその声音は爽やかな秋風を連想させる。それを奏でておられるのは浜野りささん。
秋風・・・とはいえ、それは"色なき風"ではなく、淡い微かな色を秘めているように聴こえて、おそらく宮本あき子さんのソプラノと調和するように調べられているのだろうから、ソプラノとピアノ、そのハーモニーも柔らかで優しいものになると想像出来る。

Bösendorfer.jpg


受け付けを済ませて、いつも通りバルコニーの指定席からBösendorferを見下ろして、開演の時を待つ。
定刻どおりに始まったリサイタル。ステージに登場したお二人は、片やピアノブラックのドレス、もう一方はシルバーグレイのドレスで、黒衣のあき子さんはBösendorferのボディに寄り添うように立って、まるでピアノと一体化したように見受けられる。
前半に予定されている演目は、

Johann Sebastian Bach
          「Bist du bei mir (あなたは私のそばに)」
Wolfgang Amadeus Mozart
          「Oiseux, si tous les ans K.307(KV 284d) von Antoine Ferrand (小鳥よ、毎年)」
          「dans un bolitaire K.308((KV 295b) von Antoine Houdart de la Motte (暗い森の中で)」
Franz Schubert
          「Du bist die Ruh Op.59,3 D776 4‘ (あなたは私の安らぎ)」
          「Ellens Gesang III( Ave Maria) Op.52,6 D839 C Dur 6‘ (エレンの歌・アヴェマリア)」
          「Nacht und Träume Op.43,2 D827 3,20‘ (夜と夢)」
Antonín Leopold Dvořák
          「Aus Zigeunermelodien Op.55 (ジプシーソングより)」
          「Als die alte Mutter (母に教え給いし歌)」
Gabriel Faure
          「Pie Jesu (ピエ・イェズ)」
Pietro Mascagni
          「Ave Maria (アヴェ・マリア)」
Sergei Rachmaninov
          「Zdes’ Kholoso Op.21.Nr.7 2’30’’ (なんて素敵なのでしょう)」
          「Ne poy krasauvitsa, primne Op.4 Nr.4 ’ (いとしい人よ、歌わないでおくれ)
 
その一曲目は、J.S.バッハが妻に送った楽曲とされているが、本当はG.H.シュテルツェルが書いたとかなんとか。何れにしても、慈愛に満ちた曲想で、想像どうりに柔らかで優しいソプラノとそれを支えるピアノのハーモニーが実に心地いい。声楽を支えるピアノの音は敢えてエッジを抑えた円やかな音色で、ソプラノの歌声と見事に調和して、2つの声音がひとつに溶け合って、まるでBösendorferが歌っているかのようにも聴こえる・・・というか、胸に沁みてくる。
モーツァルトシューベルト、その歌曲が2曲ずつ続く。
軽やかできらびやかなモーツァルトと伸びやかで優しいシューベルト、対極にあるようなそれらの楽曲をレパートリーとするのは多才というのか、多彩と記すべきか。
多才で多芸はさらに続いて、ドヴォルザークフォーレマスカーニラフマニノフの歌曲は、曲調も異なれば、それぞれ歌詞がチェコ語、ラテン語、イタリア語、ロシア語。ここまでで6ヶ国語!! 歌手として当然の振舞いなのか、ワタシには分からない。その歌詞の内容もほとんど理解出来ないけれど、そのニュアンスまで歌い分ける至芸の本領は感じ取れる。ゲルマン語圏やラテン語系出身ならまだしも、あき子さんは日本・関西のご出身でいらっしゃる。
 
休憩後の演奏家は衣装も改めて、場面転換。
声楽家がボルドーっぽい葡萄酒色というか、深みのあるアマラント、Louis Vuittonの新色というか、そこはかとなくフランスっぽい?! 今度はピアニストがピアノと一体化する黒ひと色。
後半はオペラの演目が続く。
 
Giuseppe Verdi

           歌劇「La Traviata (椿姫)」より
                    1. Overture (前奏曲)
                    2. Estrano, ah forse lui 9’ (ああ、そはかの人か)
Wolfgang Amadeus Mozart
          歌劇「Die Zauberflöte (魔笛)」より
                    Ach, ich fühl’s(Pamina) (ああ、私にはわかる)
Gaetano Donizetti
          歌劇「L'elisir D'amore (愛の妙薬)」より
                    Prendi, per me sei libero 3’ oder 5’ (これであなたは自由なのよ)
Giacomo Puccini
          歌劇「La Rondine (つばめ)」より
                    Chi il bel Sogno die Doretta (ドレッタの夢)

が予定されていたのだけれど、どんな障りがあったのか、ヴェルディは流れてしまって「魔笛」から。
第2幕から夜の女王の娘パミーナが歌うアリアはthe other side of Morzart、メランコリックでもの悲しげな情緒たっぷり。悲劇的なメロディーの中にコロラトゥーラも盛り込まれ、難易度はとてつもなく高いのでしょうが、その分聴き応え十分。ピアノやヴァイオリンで弾くトリルとも違い、もっと細やかな感情が織り込まれているように感じられる。
続いて、ガエターノ・ドニゼッティ愛の妙薬」から地主の娘アディーナが「受け取って」と歌うツンデレ系愛のアリア。歌唱のテクニックもさることながら、感情表現がさぞかし難しいでしょうね。"言葉"は十分に理解出来ないまでも、"台詞"と違って"歌詞"なら、メロディーがつくとなんとなく理解出来るから不思議。
最後を飾るのはプッチーニプッチーニというと他に人気の作品が幾つも有るので、耳にする機会は少ないものの、タイトル通りに美しいアリア。ホームパーティーの席上で請われて朗唱するのだから、自信たっぷりに歌うべきなのでしょうか。それとも、最初は探りながら、徐々に盛り上がって・・・というほど長くもない。やはり、気持ちの作り方が難しいんでしょうね。
アンコールは「さくらさくら(作者不明)」。これで7ヶ国語か。

ピアノもいいし、ヴァイオリンもいいが、感情表現の細やかさから言って、やはり究極の"楽器"はヴォーカル。胸懐をダイレクトに表現出来る分、より一層デリケートなのだと想像されて、暑いくらいに気温が上がって、乾燥気味な今日の天候ではコンディション維持も大変なのではないかと推察する。
次の機会があるならば、「アヴェマリア」を4曲、グノーシューベルトカッチーニマスカーニをセットで聴かせて頂きたいですなァ。三周年記念公演でもあった「ワンコイン市民コンサートシリーズ 第40回公演」で聴かせて頂いた「アヴェマリア」(→記事参照)。それはヴァイオリン版でしたが、あれ以来、この曲を聴くと条件反射的に涙が溢れてきてしまう。
あッ、ラフマニノフの「ロマンス」をたっぷりとかもよろしいかも。来年リラの花(ライラック)」が咲く頃に聴かせて頂けたら、何にも増して嬉しいこととリクエストしておきましょう・・・なので、あき子さん、萩原先生、よろしくお願い致します。是非ぜひ。
この秋は、今まであまり親しんで来なかった声楽曲をじっくり聴きこんでみようかしらン?!

で・・・、

ウィーンからのそよ風 その2 ~ Two Breezes from Vienna, Part2』として『鈴木理恵子&若林顕 デュオ・コンサート』は来週25日(日)。
鈴木理恵子
(Vn)と若林顕(Pf)のデュオで、プログラムは、W.A.モーツァルトヴァイオリン・ソナタ3題(第28番 ホ短調 K.304, 第35番 ト長調 K.379, 第40番 変ロ長調 K.454)とL.V.ベートーヴェンヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op.47 クロイツェル』」こと『ほとんど協奏曲のように、相競って演奏されるヴァイオリン助奏つきのピアノ・ソナタ』。
二週続きの"Wiener Brise"、次も楽しみですことよ。

 


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