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光と闇が意味するもの [音楽のこと]

新生「JoJo SPECIAL」と遊んだあとはオンガクの時間。今日は月に一度のお楽しみ、「ワンコイン市民コンサート」の開催日で・・・。

 

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今日のプログラムは『李早恵ピアノリサイタル』、副題が『Les Deux Pianisms - Ondine et le Faune dans la Lumière et l’Obscurité - 二つのピアニズム「光と闇に浮かぶ水の精と牧神」』。
パリ国立音楽院を一等賞で卒業、現在パリを中心にヨーロッパで活躍中の新進気鋭のピアニスト李 早恵(Sae Lee)さんのリサイタル。
タイトルに『二つのピアニズム 光と闇』とあったので、それは鍵盤の白鍵と黒鍵、あるいはメジャー・スケールとマイナー・スケールのことを言い表しているのかと思っていました。「ワンコイン市民コンサート」のウェブサイトに掲載されていた「計画中のプログラム」によるとバロック期から近代までの幅広い楽曲構成となっている。この演目でいかに光と闇を表現するのか。聴きどころはそのあたりだと定めて、今日も暑い中、待兼山を登ることにしましょう。

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受付を済ませ、いつもの指定席を占める。本番前のステージでは、同館自慢の1920年製Bösendorferが調律師の手に因って入念なチューニングを施されている。プログラム直前だと、リハーサル時とタッチが微妙に変わって、演奏に支障をきたさないのかと訝ってしまうが、そこはピアノ・チューナーの職人芸、整音はしても鍵盤のフィーリングが変わるようなことはしないのだろう。そんなことを考えながら開演を待っていると、窓越しでもハッキリ分かるほどの豪雨。先ほどまで晴れていたはずなのだが・・・。光と闇を象徴するかのように、陽射しは遮られ、激しい雨が窓硝子を叩いている。

その雨も止んだ午後3時が開演の時間。
黒いシンプルなドレスでステージに登場した早恵さんがベーゼンドルファーで最初に奏でる楽曲はドメニコ・スカルラッティ作曲の「マリア・マグダレーナ・バルバラ王女のための555曲の練習曲」からK.159/L.104、K.213/L.108、K.141/L.422の3曲。「ソナタ」として知られる、斬新にしてテクニカルな楽曲。

今日渡されたパンフレットによると・・・、
ピアノ音楽〜ピアノの前身となるチェンバロも含めて〜には二つの世界がある。一つは極めて器楽的な世界。ビアノにしか表現出来ない音で満ちている。もう一つは「物語」に寄り添うピアノの世界。ピアノという楽器ほど、このような対比に満ちた世界を持っている楽器は少ない。うんぬんかんぬん。
まず最初の曲は、バロック期の器楽的な練習曲からということで、ピアノがスポットライトを浴びて、主役となる器楽曲が「光」を表し、舞台装置の一部として物語の伴奏を行うのが「闇」の部分・・・ということか。まだ、水の精と牧神は登場しない。

続く楽曲はマーク-アンドレ・アムラン短調による練習曲 第6番スカルラッティを讃えて』」。タイトルどおりスカルラッティをリスペクトして、彼の作品同様、両手の交差や大きな跳躍がパロディー的に用いられた楽曲。非常に視覚的な超絶技巧で、見せる(魅せる)パフォーマンスとなる。
プログラムの3つ目は、クロード・ドビュッシーピアノのために」。古典組曲めいた構成の中にドラマティークな響きを秘めた楽曲で、これもスカルラッティ的。
続いてはアストラ・ピアソラピアノのための組曲 Op.2」で、こちらはドビュッシーに対する敬意を込めた作品。
ここで15分の休憩。
休憩明けの後半は荻原先生にエスコートされて早恵さんが登場。本日のプログラムについてトーク・タイム。しっかりアナリーゼ(楽曲分析)されているのでしょうか、言葉の端々に知性が見え隠れ。
後半は牧神と水の精が登場する物語的楽曲が並ぶ。
まずはドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。彼の出世作となった管弦楽作品で、ドビュッシー自身が編曲したピアノ2台版、連弾版、一般に広く知られたレオナード・ボーウィック編曲のピアノ・ソロもあるが、今日演奏されたのはヴャチェスラフ・グリャズノフ編曲版。
ドビュッシーが敬慕していた詩人マラルメの『牧神の午後』(『半獣神の午後』)に感銘を受けて書かれた作品で、"夏の昼下がり、好色な牧神が昼寝のまどろみの中で官能的な夢想に耽る"という内容。管弦楽版の、微睡むような気怠さを秘めたフルートもいいが、それをピアノで再現したグリャズノフ編曲版も面白い。まどろみの中に引き込まれるようで・・・zzz。
後半の2曲目はポール・デュカ作曲「牧神の遥かな嘆き」。ドビュッシー追悼作品で、「牧神の午後への前奏曲」のテーマを引用し、追悼の鐘が響く中、ドビュッシーを追憶しながら嘆く牧神の声が遥かに聞こえる美しい楽曲。
続いては、デオダ・ド・セヴラック作曲「水の精と不謹慎な牧神」。好色で不謹慎な牧神の次なるターゲットはオンディーヌ!? 「Dance Nocturne(夜のダンス)」と副題がつき、水の精と牧神が戯れる様子が表現されている。
プログラムの最後を飾るのはモーリス・ラヴェル夜のガスパール」。ルイ・ベルトランの詩集を
題材としたピアノ組曲。64編の散文詩から選りすぐって楽曲化された3編は何れも幻想的で、詩のイメージをそのまま留めるような傑作。

ピアニズムの光と闇。いつも作曲者の身近にあるピアノ。自らのヒラメキで書かれた楽曲が「光」、なにかにインスパイアされて、別のところからインスピレーションを得て作られた音楽が「闇」ということか? 自らが光源であるのか、それは別のところにあるのか?
何れの楽曲も難しく、内容もかなり深いのであるが、それを涼しい顔で演奏しているのが早恵さん。世の中にはすンごいピアニストが幾らもいるなと思った次第。
来月の「ワンコイン市民コンサート」もピアニストのリサイタルが続き、9月は珍しい木管五重奏。月に一度のお楽しみ、ナニがあっても外せません。


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コメント 4

yosshu0715

外は豪雨、そしてピアノで奏でられる「光と闇」・・・
光があるから闇が生まれるのか、闇があるから光が生まれるのか・・・
JoJoさんの文章を読んでいると、演奏の中からもそんな深い感想が生まれてきそうです。

コンサートもそうですよね!!(笑)
観客がいるから名演奏が生まれるのか、演者がいるから観客が生まれるのか・・・
その場その時でその関係がくるくる入れ替わるのが、家で聞くのではなくコンサートに出向く醍醐味だと思います!!(笑)

良いですねワンコインコンサート!!(笑)
僕も行ってみたいです!!(笑)
by yosshu0715 (2014-07-22 18:27) 

moto_tip_sp

自転車にコンサートと一日で二度美味しい。貴重な休みを満喫していますね。でも腰の調子が悪いとか、お身体には気をつけてくださいね。

ワンコインコンサートはコスパも良くいいですね。私も最近は月に一度ぐらいジャズバーで洋酒片手に音楽を聞くのが楽しみになってきたので、年寄りかしてきたかも。

これからまだたそがれコンサートから大阪クラシックへと続くので、楽しみです。
by moto_tip_sp (2014-07-22 19:36) 

JUN1026

ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
「ワンコイン市民コンサート」は毎回趣向を凝らして、考えさせてくれるところが面白くて通っています。今回も斬新なプログラムで、ちょっとうならされてしまいました。
今度是非ご一緒しましょう。
土曜日なら横の博物館もオープンしていてワニの化石も見ることが出来るのでしょうが、コンサートはほぼ日曜日。
「コンサート・ポタ会」もいいかもしれませんよ。
by JUN1026 (2014-07-23 10:03) 

JUN1026

モトさん、コメントありがとうございます。
「ワンコイン市民コンサート」はマニアックなプログラムも受けてしまうのですが、予習・復習をきっちりしておかないといけないようなアカデミズムまで秘めているのは場所柄のせいでしょうか。そこが気に入って通っています。
『大阪クラシック』も今から楽しみですね。
by JUN1026 (2014-07-23 10:09) 

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