SSブログ

竹の秋2014 [散歩・散走]

千年の古都は立夏の朝であった。
早暁の静けさとともに、私は竹林の中に通じる小径を歩んでいた。
櫻花の乱舞が止んで、霞も晴れた季節の狭間。
春の絢爛たる花のさざめきは胸騒ぎを呼ぶ。夏の目映い潮騒の響動めきは心を掻き乱す。荒んだ心を鎮めるには、春と夏の間隙、竹の秋が良い。老竹は葉を落として若芽を育み、竹林が生まれ変わる季節。
風に戦ぐ竹葉が奏でる音は静寂の調べ。早起きの鶯がそれに彩りを添える。まだ人の息吹が混じっていない大気の中、まだ人肌の温もりを知らぬ今朝の冷気の中、その無音の旋律に心を躍らせながら、そのメロディを邪魔せぬように忍びやかに歩みながら、私は思う。
I want to eat a fresh bamboo shoots(新鮮な筍が食べたい).

Josephson Joker Sr.作『筍泥棒の唄』より ー

 

多くの樹木は秋に紅葉(黄葉)するが、竹は春に黄変し落葉する。これを「竹の秋」という。筍に栄養分を費やすためである。逆に、秋には、筍が一人前の竹となり、若葉を茂らせる。これを「竹の春」という。
二十四節気のひとつである「立夏」の末候、七十二候の第二十一候は、「竹笋生(ちくかんしょうず)」となって、筍が生え出す頃とされているが、お休みの関係上それまで待ってはいられない。
竹の秋、たけのあき、Takeno Aki、武野亜紀。音だけ聞いていると、季語とは感じられない言葉ですが・・・www

というわけで、京都輪行シリーズ Vol.13は、タケノコ・ドロボー・・・じゃなくて、竹の秋。晩春と初夏の間隙、タケノコ狩り・・・じゃなくて、竹の秋風を聞きに行く、おひとり様洛西竹秋ツアー。若葉が眩しい季節にあって、あえて黄落期・凋落期にある竹林を駆け抜ける、BD-1が竹秋風と戯れるポタリング・・・となりますやら。

IMG_4902.jpg


全自走とはいかず、ツアーのスタートは阪急京都線から。早い時間の各駅停車に"バゲッジ・モード"となった愛機「Rosenkreuzer Mk-1」ことマーキュリーブルーBD-1とともに乗り込んで、降車したのが洛西口駅
ゴールデンウィーク最中とあって、嵯峨野竹林は相当な人出が予想される。混雑を避けて、今日は京都市西京区〜向日市、大原野物集女辺りに点在する竹林と社寺を目指そうという計画。

♢♢♢♢♢

会社の忘年会が一泊宿泊付きになっているのだが、数年前の忘年会はこの界隈にあるホテルで行われることとなった。土曜日の何時にチェックインしても構わない。日曜日の何時にチェックアウトしても構わない。要は、土曜日夕刻から開催される忘年宴会にさえ顔を並べていればいい。早めに来て、近所を散策、温泉で汗を流してから宴会、それがお開きとなれば宛てがわれた部屋で休養をとって、ひと風呂浴びてから帰宅すればいい・・・と、まァ、慰安旅行を兼ねたような忘年会。
時間が自由であれば、それも勝手知ったる京都とあっては、自転車を持ち込まない手は無い・・・と考えるのは当然の流れ。回りの地図をお浚いして、立ち寄りたいところをgoogleマップにメモして、自転車の準備も怠り無く・・・と、土曜日は朝からあいにくの大雨。輪行すら出来ないような天気に自転車は諦めて、雨の上がった日曜日に徒歩で散策することとなった。
そのリベンジが今回のポタリング。竹林が続く竹の里とあっては「竹の秋」に訪れるしかあるまい。お花見ポタは逃してしまったが、その分、竹秋青紅葉、つつじや杜若を愛でることが出来れば・・・いいのだが・・・。

♢♢♢♢♢

洛西口駅前で「Rosenkreuzer Mk-1」は"自走モード"にトランスフォームする。
西に向けてペダルを踏み出す。途中、南に折れて、西ノ岡竹林通京都市洛西竹林公園へ。
竹林公園の開園時間は09:00となっている。随分間があって、待っている訳にもいかない。ここ数日初夏を思わせる夏日が続いてるから、つい薄着で来てしまったが、早朝の風が冷たい。

IMG_4903.jpg
IMG_4904.jpg
IMG_4905.jpg
IMG_4906.jpg
IMG_4907.jpg
IMG_4908.jpg
IMG_4909.jpg
IMG_4910.jpg
IMG_4911.jpg
IMG_4912.jpg
IMG_4913.jpg
IMG_4914.jpg
IMG_4915.jpg
IMG_4916.jpg
IMG_4917.jpg
IMG_4919.jpg
IMG_4920.jpg


竹林のそこかしこ、親竹のすき間からタケノコがニョキニョキと尖ったアタマを覗かせている。中にはワタシの背丈より高く成長したものもあって、それはもう竹の子とは呼べまい。
地元の方々が早くから掘りに精を出しておられるが、この辺りは観光客は少なく、閑静そのもの。ときおり、風が竹の葉を揺らし、それに応えるようにウグイスが鳴く。
シティ・ライダーを自認するワタシもたまには旅気分を味わいたい。さりとて大阪を遠く離れることが出来ないので、旅情を味わおうと思えば、交通の便のいい京都方面となって、とはいえ、大型連休の最中、賑わいを避けて迷い込んだ竹の幽玄郷。
小径沿いに作られた竹垣が、ヴァリエーションもあって、面白い。

IMG_4921.jpg


黒尽くめのオトコが竹林で立ち止っていては、それこそタケノコ泥棒と思われかねない?? 自転車大原野方面に向けて走り出す。
細く曲がりくねった道、それも登り勾配を大原野神社鳥居前まで辿り着いた時に「おはようございます」とお声を掛けて下さったのがハイカー風の母娘連れ。自転車を停めて、挨拶を返す。青息吐息のワタシをご覧になって、よほど疲れているように見えたのか、「よもぎ餅をお食べなさい」と出来立てのお餅を差し出して下さった。
「何処から来られたのですか?」と訊ねられたので、大阪から来たことを告げると、驚かれるおかーさん。半分は電車ですと言うと、「自転車を担いで電車に乗るのですか?」と一層驚かれる。
まァ、輪行と言っても分からないだろう・・・と思っていると、横合いから娘さん(推定20代)が、
「輪行と言って、自転車を畳んで、電車に乗ることが出来るんですよね」と助け舟。
お詳しいのかと思ったら、折り畳み自転車で出掛けることに興味があるとかで、BD-1DAHONが欲しいとのこと。当然ワタシはBD-1をリコメンド!! 折り畳み方と展開方法をレクチャーし、輪行袋に入れれば何処へでも出掛けることが出来ますよとお薦めするが、畳んだBD-1を持ち上げてみられて「少し重い」とのこと。BD-1ユーザになられればいいのですが、さて、どうでしょうね。京都の折畳み自転車&リカンベント専門店をご紹介して差し上げればよかったか?

お気をつけてとお声を頂いて、お二方を見送って、大原野神社の境内へ。
784(延暦3)年に桓武天皇が長岡京へ遷都した際、桓武天皇の后の藤原乙牟漏が藤原氏の氏神である奈良春日社の分霊を勧請して、しばしば鷹狩を行っていた大原野に祀ったのに始まる。850(嘉祥3)年、藤原冬嗣を祖父に持つ文徳天皇が社殿を造営した。奈良春日社と同じ藤原氏の氏神を祀る大原野神社はそれに準ずる扱いを受け、二十二社に列した。明治4年に官幣中社に列した、二十二社(中七社)の一社。旧社格は官幣中社で、現在は神社本庁の別表神社。奈良の春日社(現在の春日大社)から勧請を受けたもので、京春日(きょうかすが)の別称がある。

IMG_4922.jpg
IMG_4923.jpg
IMG_4924.jpg
IMG_4925.jpg
IMG_4926.jpg
IMG_4927.jpg
IMG_4928.jpg
IMG_4929.jpg
IMG_4930.jpg
IMG_4931.jpg
IMG_4932.jpg
IMG_4934.jpg
IMG_4935.jpg
IMG_4936.jpg
IMG_4937.jpg
IMG_4938.jpg
IMG_4939.jpg
IMG_4940.jpg
IMG_4941.jpg
IMG_4942.jpg
IMG_4943.jpg
IMG_4944.jpg
IMG_4945.jpg
IMG_4946.jpg
IMG_4948.jpg
IMG_4949.jpg
IMG_4950.jpg
IMG_4951.jpg


文徳天皇が奈良の猿沢池を模して造ったと言われる鯉沢の池や樹齢70年を数える千眼桜、狛犬ならぬ狛鹿などを見て歩く。
千眼桜は一本の枝にぼんぼりのように花が咲き、眼がたくさんあるように見えるところから、「千眼桜」と呼ばれるようになったそうで、満開時には豪華な姿を見せるが、その花の命は2〜3日と短いため、「幻の桜」といわれているらしい。運良く満開の千眼桜を見ることが出来たら、千願(せんがん)の願いが叶う・・・とか。もちろん、花の時期はとっくのとうに終ってしまっている。

次の立ち寄り先は「花の寺」こと勝持寺なのだが、こちらは開門時間は09:00となっていて、まだ少し間がある。本当はもっとノンビリと廻りたかったのだが、早朝の竹林が肌寒くてじっとしていられなかったのと、生来のビンボー症で次から次と予定を消化しないと気が済まないことからついつい急ぎ足。

IMG_4953.jpg
IMG_4952.jpg
IMG_4954.jpg


大原野神社
境内から花の寺へ、未舗装の細い近道があったが、自転車が通れそうもなかったので、大原野神社の鳥居前から舗装路を西に進む。と目の前に十数段の石段。これが参道であるらしいが、自転車で入って行けるのかしらン!?
いずれにしても開門前。どこかで時間を潰さないと・・・と少し戻って、大原野神社との中間辺りにある「草餅こばやし」の店先に自転車を停めて、そこに置かれた縁台に腰を掛ける。先ほどのハイカー母娘がよもぎ餅を求めたのはどうやらこの店らしい。すでにオープンしている。
ようやく陽も高くなって、五月晴れの陽射しが心地よく温かい。そこでタバコを煙に変えていると、店内から出て来た女将さんが縁台に赤い毛氈を敷き始めた。立ち上がって、自転車を脇に寄せる。
「どうぞ、休んでいって下さい」から話しが始まって、大阪から来たと言っては驚かれ、母娘が毎日ハイキング途中でよもぎ餅を買って行くこと、そのよもぎ餅をひとつ頂いてとても美味しかったこと、春のサクラと秋のモミジの頃はヒトが多くて騒々しいこと、今の時期が静かで緑がキレイで一番心地いいらしいこと、高速道路が出来てしまって景観が壊れ騒音が酷いこと・・・、女将さんとおしゃべりしているうちに09:00前になった。
女将さんから近隣の地図を頂いて、「花の寺」へ行くなら大原野神社の中を通っていくのが近いと教えて頂いたのだが、石がゴロゴロした未舗装路は、自転車を曳いて歩くにしてもパンクしてしまいそう。車道だとぐるっと迂回して2kmも走らないといけないらしい。担いで十数段の石段を登るコースを選ぶ。

IMG_4955.jpg
IMG_4956.jpg
IMG_4957.jpg
IMG_4959.jpg
IMG_4960.jpg
IMG_4961.jpg
IMG_4962.jpg
IMG_4963.jpg
IMG_4964.jpg
IMG_4965.jpg
IMG_4967.jpg
IMG_4968.jpg
IMG_4969.jpg
IMG_4970.jpg
IMG_4971.jpg
IMG_4973.jpg
IMG_4974.jpg
IMG_4975.jpg

 
石段を上りきるとコンクリート舗装された細い参道。それもそこそこ登り基調。自転車を曳いて歩く。約400mほどなのだが、思いの外長く感じる。大原野神社の境内をショートカットする方がよかったか!?
山門前に辿り着いたのがちょうど09:00。開門一番乗りで境内へ。
花の寺」こと天台宗勝持寺は、京の西山連峯の麓にあって、小塩山大原院勝持寺と呼ばれる古刹。679(白鳳8)年、天武天皇の勅によって神変大菩薩役の行者が創建したのが始まりで、791(延暦10)年に伝教大師が桓武天皇の勅を奉じて堂塔伽羅を再建され、薬師瑠璃光如来を一刀三礼をもって刻まれて本尊とされた。
838(承和5)年、仁明天皇の勅によって塔頭四十九院を建立されたが、応仁の兵火に遭い、仁王門を除きすべて焼失。現在の建物は乱後に再建されたもの・・・とのこと。
花の寺」とあって、西行法師ゆかりの「西行桜」を筆頭に、春には桜、秋には紅葉が美しいところ。今はどちらも季節外れではあるが、その分観光客は少なく、静かな時を過ごすことが出来る。新緑が眩しいくらいで、葉桜さえ美しい。
冴野の沼を見下ろして、青紅葉を揺らす風を受けて、野鳥の鳴く声を聴きながら、疲れた心身をベンチに投げ出していれば身体が少し軽くなったような気がする。
最後に瑠璃光殿の宝物を拝見して、「花の寺」をあとにする。

IMG_4976.jpg
IMG_4977.jpg
IMG_4978.jpg
IMG_4979.jpg
IMG_4980.jpg
IMG_4981.jpg
IMG_4982.jpg


帰りは大原野神社境内に通じる細い路を辿ってみる。
大原野神社
を抜けて、正法寺へ。
奈良唐招提寺を創建した鑑真和上の高弟、智威大徳が隠世したのが始まりで、天平勝宝年間 の創建。後に弘仁年間の時、弘法大師巡錫され四十二歳の厄除けのため、聖観音を彫刻された。長岡京の氏神「大原野神社」の向いにあり応仁の戦火て焼失したが、元和元年、恵雲・微円の 両律師により再興され、西山のお大師さまとして古くから親しまれてきた。近年の開発と都市化、そして、合理化至上の世相にあって豊かな自然と静謐さのなかにある当寺は遠く平安朝期の面影を今に残す古刹として人々の心のやすらきの場となっている・・・のだとか。

温かい陽射しに誘われてか、ハイカーや観光客が徐々に増えて来たような・・・。混雑する前に移動した方が良さそう。
小塩山を一気に駆け下る。このあとの予定は白紙。ドコへ行くかは、風委せ、坂まかせ。どちらを向いているか方角は分からないがとにかく"下り"を選んでビュンビュン走る。

IMG_4984.jpg
IMG_4985.jpg
IMG_4986.jpg
IMG_4987.jpg
IMG_4988.jpg
IMG_4989.jpg
IMG_4991.jpg
IMG_4993.jpg


気ままに坂を駆け下り、気がついたら、長岡天満宮近く。キリシマツツジの見頃とあって、八条ヶ池畔の遊歩道もヒトがいっぱい。

IMG_4994.jpg
IMG_4995.jpg


ヒトが多いのはイヤだけど、天神さんとあっては愚息(15)のためにお参りしておかなければと、脚を止める。参道には多くの屋台が並び、そこにも参拝客、観光客が多数。ふと見回してみると、こちら長岡界隈もタケノコの里とあって、「焼きたけのこ」とか「筍ごはん」とかが売られている。で、ワタシの眼を奪ったのが「竹の子入りたこ焼き」。
思わず買ってみる。シャキシャキとした竹の子の食感が新鮮で、想像以上に美味。冷た〜いビールが欲しくなるゥゥゥ・・・が、ガマンだッ!!!!

IMG_4998.jpg
IMG_4996.jpg
IMG_4997.jpg


長岡天神
まで下ってしまうと、あとの立ち寄り先が思いつかない。ブラブラと自走で帰って途中どこかでランチを摂って・・・とも考えたが、それなら明日、明後日のために脚を残しておく方がいい。たこ焼き6ケで腹いっぱいでもある。阪急京都線長岡天神駅まで走って、再び「Rosenkreuzer Mk-1」は"バゲッジ・モード"にトランスフォーム。
朝5時前に家を出て、短い時間であったけれど、久し振りに"旅気分"を堪能したような気がする。社寺の参道は自転車を曳いていたので、走行距離こそ長くないけれど、まァ、それも"旅"らしさ。
連休はあと2日を残している。明日は琵琶湖畔を目指そうかな!? もしかして、始めての「ビワイチ」!!!??

本日の結果
走行距離:27.51km
走行時間:02:12:26


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 2

moto_tip_sp

竹林とはまた渋いところに行きましたね。混雑しているゴールデンウィークでも、なんとなく静かそうですね。ゴールデンウィークは電車も混みそうなので輪行も気を使いますが、朝早く出て昼に帰ればまだましかもしれませんね。
今回はランチとスイーツはなしでしたか。
明日は晴れそうですね。ゴールデンウィーク最後どうしようか悩みます。
by moto_tip_sp (2014-05-05 16:00) 

JUN1026

モトさん、コメントありがとうございます。
京都お花見ポタは計画倒れに終ってしまって、京都輪行シリーズは竹秋にスライド、竹林を走ることになりました。
ゴールデンウィークの京都はかなりの混雑が予想されたのですが、大原野まで行けば、それも早朝に出掛けて昼に引き上げれば、ほとんど混雑に出逢うことも無く快適に走ることが出来ました。
せっかく落とした体重&体脂肪がリバウンドしそうな気配なので、しばらく外食は控えます・・・多分(笑)。
by JUN1026 (2014-05-06 00:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0