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自由の音楽 [音楽のこと]

今日の午後は『ワンコイン市民コンサート』。いつものように大阪大学・豊中キャンパスに建つ大阪大学会館に向います。

 

今日のプログラムは「フルート・ヴィオラ・ハープによるアンサンブル」。『風、空、水〜宇宙へ』という副題がつく。
演奏は、
大塚ゆき:フルート
有田朋央:ヴィオラ
内田奈織:ハープ
プログラムは、
サンサーンス/幻想曲 イ長調 Op. 124(フルート&ハープ版)
サティ(武満編曲)/フルートとハープのための 星たちの息子~第一幕への前奏曲「天職」~
武満徹/「そして、それが風であることを知った」
ジョリベ/クリスマスの牧歌
ドビュッシー/フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ
なんとなく、風、空、水は想像出来るけど、宇宙まで飛べるかどうか・・・。楽しみです。
 
"クラシック(classic)"というと、"古典"が"高尚"と思われ勝ち!? 確かに、理論に裏打ちされた、盤石な構築美、様式美は安心感すら与えてくれる。が、"芸術=自由"だと思うし、時代に沿った"クラシック"もあり得る。あっていいと思う。メソッドから一歩踏み出す冒険心。新たなハーモニーを求める探究心。他者と違うものを表そうと思えばプログレッシヴにならざるを得ないのではないか。前回の『聴衆と演奏家の誕生』でも触れられたように時代が求める音楽は変化する。
今回演奏される楽曲は、ほとんどがフランスの近代〜現代の作曲家の手になるもので、独自の特徴的な作曲法による個性的な作品。プログレッシヴでファンタスティック。調性があいまいで幻惑的といってもいい。
落ち着かないというか、不安定ではあるが、えも言われぬ緊張感、そこはかとない不安感がある意味イマドキであると感じる。
過去の偉大な作曲家たちが築き上げて、変革を重ねて来た音楽は20世紀になって、より自由であることを求めた。しかし、それは"なにをしてもいい"という気ままとは違う。長い歴史の中で積み上げられて、磨き上げられてきた理論を踏み台にした自由。数学の1ジャンルであった和声学や対位法から古典派、ロマン派を経て、印象派や象徴派へと至った音楽。その間に積み上げられたメソッドのベースから飛び立ってこそ、空の高見へと飛翔することが出来るのだと思う。
風は高見から吹き下ろし、水は台地から流れ落ちる。理論の上に建つからこそ、風のそよぎ、空の移ろい、水のたゆたい、そして宇宙の広がりのような自由な表現が出来る。古典的な様式美とは異なる、動的な、揺らぎの美。
この"音楽の転換期"があってこそ、ジャズやロックへと広がったのだと思うと、疎かには出来ません。
エリック・サティ、アンドレ・ジョリヴェ、武満徹はクロード・ドビュッシーを敬愛し賛美した彼のフォロワー。新しい世紀に向けて、新しい音楽を模索して、自由な音楽を紡ぎ出した変革者たち。
 
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14:30開場。例によって、バルコニー席のセンターを占める。
同館自慢のヴィンテージ・ピアノ、1920(大正9)年製のベーゼンドルファー(Bösendorfer)252は今日は出番なし、片付けられて、変わってステージに置かれてるのは金色の装飾も目映いグランド・ハープ。ハープの奏法を研究させて頂こうと1階席最前列に座ってもよかったが、いつもの席へ駆け上がってしまった。あとで伺ったところによると、今日は生音がよく聴こえる1階席最前列がお薦めだったらしい。
 
15:00開演。ベルが鳴って、プログラムの始まり。ステージに登場した大塚ゆきさん(Fl)と内田奈織さん(Hp)は示し合わせたのか、お二方とも白いドレスでお揃いらしい髪飾り。
1曲目は、シャルル・カミーユ・サン=サーンス作曲「幻想曲 イ長調 作品124」。本来はヴァイオリンとハープのための楽曲であるが、今日はフルートとハープで。あとに続くプログラムとは対極にあるようなコンサバティヴな曲調だけど、これはこれでファンタジック。秋の昼下がりに吹く爽やかな微風か。
続いて、"音楽界の異端児"とも"音楽界の変わり者"とも呼ばれたエリック・サティが作曲した付随音楽『星たちの息子』を武満徹がフルートとハープ版に編曲した楽曲。サティらしさが随所に盛り込まれて、耳障りがいいような悪いような、聴き流せそうでなにかひっかかる、なんとも妖しい曲者。要研究ですな。
3曲目になって有田朋央くん(Va)が加わり、武満徹作曲「そして、それが風であることを知った」。アヴァンギャルドであるが、どことなく懐かしさを秘めた、こちらも妖しい曲者。一種異様な浮遊感が、"空"とは別な異世界へ導くような。これも要研究。
3曲を終えて、短い休憩。
ステージ奥の大きなスクリーンにスライド投影される画像を使って、今回のプログラム解説。このコンサートを開催するにあたってのメールによる打ち合わせなどの裏話が語られる。
女性お二方は衣装替え。大塚ゆきさん(Fl)はターコイズ・ブルー、内田奈織さん(Hp)はスカーレット、どちらも艶やかですこと。
第2部はトリオで、「クリスマスの牧歌」と「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」。
"音楽のジキルとハイド"と揶揄されるアンドレ・ジョリヴェ、この「クリスマスのためのパストラール」はジキル面になるのでしょうか。ちょっと時期外れな気もするが、「」、「東方三博士」、「聖母子」、「羊飼いの登場と踊り」の4曲からなるこの作品はキリスト生誕の物語り。
つづく「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」はクロード・ドビュッシーが癌に侵されながらも作曲を続けた晩年の作品。「様々な楽器のための6つのソナタ」の第2曲にあたるが、「6つのソナタ」は完成することなく、3曲に留まった。残り3曲も聴いてみたかったと思わせるほど、「チェロとピアノのためのソナタ」、「フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ」、「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」は何れも美しい傑作となった。
フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」、第1楽章は牧歌(パストラーレ)で、先のジョリヴェに繋がる。この楽曲も調性があいまいで、落ち着きのない浮遊感を感じさせるが、それは不快感を伴わず、水面に身を預けて揺蕩うような浮遊感。作曲当時の世相、作曲者の病状を反映しているはずなのに、どうしてこうも美しく結実するのか。
アンコールはドビュッシーベルガマスク組曲』から「第3曲 月の光」。もちろん、Fl、Va&Hp版。ピアノ版はよく耳にするが、フルートとハープの優しさ、ヴィオラのふくよかさが醸し出すハーモニーも美しい。
 
ワンコイン市民コンサート」はこれで何度目か。場所柄か、毎回何かを考えさせてくれるのが面白く、プログラムもよく練られていると思います。今回も、他ではあまり聴くことのない構成で、非常に興味深い内容でした。

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コメント 2

moto_tip_sp

豊中では色々な音楽イベントをやっているようですね。
ワンコインコンサート、来月も予定があり行けそうにありません。一度は行ってみたいのですが・・・。

by moto_tip_sp (2013-10-15 06:11) 

JUN1026

モトさん、コメントありがとうございます。
「ワンコイン市民コンサート」は来年までプログラムが決定しているようですし、「とよなか音楽月間」も面白いプログラムが目白押しです。
予定の空き間にいらして下さい。
by JUN1026 (2013-10-15 12:55) 

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