JoJoさん、キャバレーに行く(笑)。 [音楽のこと]
"キャバレー"といっても、キャバいいお嬢さんやキャバいおねーさんがいるようなところじゃあないよ。十九世紀末のパリはモンマルトルの丘にあった文豪キャバレー「Le Chat noir(黒猫)」へ出掛けてみたいと思います。
で、向うのはモンマルトルならぬ、豊中市待兼山の中腹に建つ「大阪大学会館」。
同会館では、『ワンコイン市民コンサート』と銘打って、入場料500円のイベントが定期的に開催されている。今日はそれの"一周年記念特別コンサート"として、青柳いづみこ先生監修・企画による"『黒猫』詩人達とドビュッシー"が催される。
大阪大学豊中キャンパスの一角にある「大阪大学会館(旧・イ号館)」。そこまでなら、自宅から約10km。ポタリングに最適な距離ではある。BD-1で赴いてもいいかと考えたが、さて、コンサート中がやや心配。広いキャンパスには十分な駐輪場が用意されている。ワタシの旧いBD-1など盗難の気遣いはないとは思うが、他のチャリンコと接触してのキズがイヤ!! 手荷物にトランスフォームさせても、商用のホールではない同館にクロークの用意もない。
で、たまには散歩もいいかと、最寄りの三国駅から阪急宝塚線で石橋駅、そこから待兼山をエッチラオッチラ登ればいい。
せっかくだから、キャンパス内を散策して、学内の食堂でお昼にしようと思い、早めに行ってみたら、日曜日は軒並みお休みですと。だからといって、坂を下って駅前へ戻るのも面倒。とほほッ。14:30開場、15:00開演まで長々と待つことになってしまう。
ようやっと、14:30、開場時間となって、講堂に入る。ピアノの鍵盤、ピアニストの手元が観たくて、舞台の下手側、前から3列目の席を占める。
と、
今日は、舞台後方のスクリーンを使って、スライド投影や字幕表示があるそうで、前列ではピアノの蓋に隠れて見えづらい。2階バルコニーか1階中ほどが見易
いらしい。そういうことは入場前に言って欲しかった。まァ、事前に予習は充分にしてある。スライドはともかく、仏蘭西語詩に字幕はいらない。移動するまで
もない。
館内に開演を告げるベルが鳴り響く。約400席がほぼ満席。
舞台センターに置かれているのは、1920年製のBoesendorfer252。その前に登場したのは、本日のプロデューサー兼ピアニストで解説まで携わる青柳いづみこ先生。
青柳いづみこは、東京都出身のピアニスト、エッセイスト。博士(音楽)、大阪音楽大学教授で、ドビュッシー研究家。ドビュッシーについての著作も多い(→記事参照)。
敬虔な祈りを込めた古典派もいい。狂おしいほどの願いを秘めた初期ロマン派もいいが、物憂い初夏の午後には近代仏蘭西の印象派音楽が似つかわしい。最近、ワタシがiPhone/iPadやiTunesで愛聴するのもドビュッシーがメイン。無調性からくる、泡沫と揺蕩う浮遊感。ワタシにとって、ドビュッシーの楽曲はロマンティークでアヴァンギャルドでエクセントリィークでポップなロック。いや、ジャンルに囚われない流行曲。
例えば、L.V.ベートーヴェンなら、身悶えするほどの熱情と口説。対して、ドビュッシーは、儚気な思慕とその裏にあるアンニュイな諦観。聴衆の心を愛撫するような、耳馴染みのいい優しいメロディの影に隠れた不協和な響きが、いたずらに襞を逆なでする。なんとはなし、ココロをザワザワとさざめかせる音楽。
今日のプログラムでは、ドビュッシーの楽曲を中心に、彼と同時代のパリで活躍した、詩人や作曲家の作品が紹介される。
第1部は『独立芸術書房 象徴派のたまり場』と題して。
十九世紀末の仏蘭西、1889年にショセ・ダンタン11番地に開店した『独立芸術書房(art Independants)』は象徴派とオカルティストが屯した書店。レニエ、ジッド、ピエール・ルイス、クローデルなど若い文学者、画家のルドンやロートレック、若き日のクロード・ドビュッシーがエリック・サティを伴って日課のように通った店。彼らの楽譜もこの店から出版された。
若いドビュッシーのポォトレイトが映し出されるスクリーンの前で、いづみこ先生が演奏するエリック・サティの『天国の英雄的な門への前奏曲(ジュール・ボワのために)』からプログラムは始まる。
続くのは・・・、
エドモン・バイイ『アパリシオン(マラルメの詩)』 (バリトン+ピアノ)
ドビュッシー 『アパリシオン(マラルメの詩)』 (ソプラノ+ピアノ)
ドビュッシー 『夕べの階調/恋人たちの死( ボードレールの詩)』(バリトン+ピアノ)
ドビュッシー 『音と香りは夕暮れの大気に漂う』(ピアノ・ソロ)
ドビュッシー 『石炭の明かりに照らされた夕べ』 (ピアノ・ソロ)
モーリス・ロリナ 『夕べの階調(ボードレールの詩)』 (バリトン+ピアノ)
エマニュエル・シャブリエ 『君の青い瞳(モーリス・ロリナの詩)』 (バリトン+ピアノ)
ヴィリエ・ド・リラダン 『恋人たちの死(ボードレールの詩)』 (ソプラノ+ピアノ)
ピアノにさらなる彩りを添えるヴォーカルは、松井るみさん(ソプラノ)と根岸一郎さん(バリトン)のお二方。
曲に合わせて、スクリーンにはその和訳詩やそれにまつわるイラストや絵画。耳と目を楽しませてくれる。曲の合間にはいづみこ先生の判り易い解説が都度入る。
あっと言う間に1時間。15分の休憩となる。
第2部は『文学キャバレ「黒猫」』を再現して。
1881
年にモンマルトルの丘に開店したキャバレーは、1897年に閉店となるまで、エリック・サティやパブロ・ピカソ、文芸家達の溜まり場となり、詩人のハイネ
も通っていた。パリ最古となるキャバレーは、アヴァンギャルドでエクセントリィークな当時最先端の社交場。お互いが影響し合い、多くの作品、絵画や音楽が
生まれた場所でもある。
当時「Le Chant Noir(黒猫)」では、影絵芝居が人気を博していた。今日の目玉
はそれを再現したVTRで、先日東京で開催された『モンマルトル展』で上映されていたものを、いづみこ先生がコネを通じて、東京芸大から借りて来たのだと
か。イエス・キリストの誕生から昇天までを描いた『星への歩み』は、「黒猫」で実際に使われていた影絵に、ピアノと3名の女性ヴォーカルによる歌曲まで添えられた、見応えのある作品。
アンリ・リヴィエール 影絵芝居『星への歩み』(音楽・台詞 ジョルジュ・フラジュロル) 制作:東京芸術大学環境創造科
それに続いて、再びいづみこ先生が壇上のピアノの前に。プログラムは・・・、
ドビュッシー 『ピエロ(バンヴィルの詩)』 (ソプラノ+ピアノ)
ドビュッシー 『月の光(ヴェルレーヌの詩)』 (ソプラノ+ピアノ)
ドビュッシー 「ベルガマスク組曲」より『月の光』(ピアノ・ソロ)
ドビュッシー 『マンドリン(ヴェルレーヌの詩)』 (バリトン+ピアノ)
ドビュッシー 「小組曲」より『メヌエット』 (ピアノ連弾)
シャルル・ド・シヴリー 『小さな絶望(ヴァンサン・イスパの詩)』 (バリトン+ピアノ)
シャルル・ド・シヴリー 『年老いた蝶々(ジャン・リシュパンの詩)』 (バリトン+ピアノ)
ドビュッシー 『森の眠り姫(ヴァンサン・イスパの詩)』 (バリトン+ピアノ)
松井るみさん(ソプラノ)と根岸一郎さん(バリトン)に加えて、連弾のために藤波真理子さん(ピアノ)。第1部同様、スクリーンには「黒猫」に集った画家や彼らが憧れた時代の絵画が映され、歌曲の訳詩も添えられる。聴いて楽しい、観て楽しい。ポール・ヴェルレーヌも当時、時代の寵児だったのだろうね(→記事参照)。
ドビュッシーというと、ピアノ曲が中心になって、歌曲はあまり耳にする機会がない。ソプラノは音域が高くて、歌える歌手が少ないのだとか。ましてや、シャンソンなぞ珍しいことこの上無し。あっと言う間の1時間。
アンコールには、同時代のシャンソンから男女の掛け合い(ソプラノ+バリトン+ピアノ)でちょっとエッチな内容のもの。ん〜、矢口真里に聴かせてやりたいぜッ!! ふふんッ。
前衛的で風変わりで耽美な十九世紀末のパリ、世紀末芸術への憧れが改めて膨らんだ時間。"Belle Époque"へのタイム・トラベル、またの機会があればいいのですが・・・。わずか500円、ワンコインで2時間堪能させて頂きました。
いづみこ先生のサインも頂いて参りました(笑)。
『ワンコイン市民コンサート』はまだまだ無期限に続くそうで、面白そうなプログラムも控えている。その節は、また待兼山を駆け上りたいと思います。
その前に、キャバいいお嬢さんやキャバいおねーさんがいるお店に行こうかな!?
実は昨年、自宅からBD-1で大阪大学のキャンパスまでは知った事があります!!(笑)
恐竜好きな僕は小さい頃からよく図鑑を見ていたのですが、大阪大学にあるマチカネワニの標本化石と、恐竜の化石を並べて展示比較する催し物が有り(無料)、いても立ってもいられなくなった僕がBD-1を駆り出したのがちょうどこの時期でした!!(笑)
しかし、ワンコインコンサートは知らなかったなー!!(笑)
(恐竜は知ってても!!)
次回は是非行ってみたいですねー!!(笑)
by yosshu0715 (2013-05-27 10:59)
ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
大阪大学会館で行われる『ワンコイン市民コンサート』、ワンコインとは思えないクオリティで、充分楽しめます。これからも、興味深いプログラムが目白押し。ぜひ、ポコさん☆とお出掛け下さい。
広報担当のJoJoさんでした(笑)。
by JUN1026 (2013-05-27 12:29)
大阪大学の方でそんな催しがあったとは知りませんでした。
また実家に行くついでに行ってみようかな。
その日はjojoさんは私の実家の近くの北摂に行ってたのですね。私は逆にjojoさんの実家に近い住吉で音楽祭を見てました。とにかく暑かったですね。
by moto_tip_sp (2013-05-29 18:23)
モトさん、コメントありがとうございます。
帝塚山と阪大、2つの音楽イベントで少し悩んだのですが、やはり『一周年記念』で『ドビュッシー』に惹かれました。
『ワンコイン市民コンサート』は月1〜2回程度、大阪大学会館で開かれるコンサートですが、なかなか見応え、聴き応えのある内容が多く、待兼山まで出向く価値はありますよ。
by JUN1026 (2013-05-29 20:48)