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「カサブランカ」再考 ② [日記・雑感]

さて、「カサブランカ」である。

カサブランカ」といえば、当ブログにも度々ご登場願っている"ジュリー"こと沢田研二の26枚目のシングル「カサブランカ・ダンディ(作詞:阿久悠/作曲・編曲:大野克夫)」が思い出されるわけで・・・。

 

カサブランカダンディ.jpg


小粋なシャッポを頭に乗せて、洋酒(ウヰスキー?)を口に含んではスプレー状に吹き出すパフォーマンスが話題となった同曲。奇を衒った衣装とパフォーマンスは毎度の事ながら、この楽曲ではさらなるダンディズム礼参、「カサブランカ」上映当時の"ボギー"ことハンフリー・ボガートをリスペクトして「キザ」を演じていた。
「ボギー、あんたの時代はよかった。男がピカピカの気障でいられた」と唄う。
聞き分けの無い女の頬を張り倒して煙草を喫う。嬉しい頃のピアノのメロディーを聴かないフリして流れに身をまかせる。それはパントマイムであるという。
「ボギー、あんたの時代はよかった。男のやせがまん 粋に見えたよ」と唄う。
喋り過ぎる女の口をキスで塞いで背中のジッパーをつまみ下ろす。想い出ばかりを積み重ねても明日を生きる夢にならないと嘯いて、男と女で演じる芝居。
パントマイム? 芝居?

で、「ダンディズム」である。
"ダンディ"を定義するのは難しい。18世紀後半から19世紀の英国において、中産階級の出自でありながら、貴族的な生活様式を模倣する。見た目を貴族のように飾るだけでなく、その精神性さえ貴族的な崇高さに近づけようとする。
バロネス・オルツィの「紅はこべ」やオスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」を繙けば少しは理解を深められるかもしれないが、それはとても眠い。そんな埃っぽい時代まで遡らなくても「カサブランカ」で事足りる。

ダンディズムをグーンと無理矢理要約すれば、大阪弁に言う「ええかっこしィ」あるいは「やつし」。本心を包み隠して体裁を装うこと。
"恰好いい"・・・「恰(あたか)も好(よ)し」では物足りない。1段上の高見から見下ろすほどの心意気。

で、「カサブランカ」である。
ボギー演じるリック・ブレインは、パリで離ればなれとなった後偶然カサブランカで再会した恋人イルザが、夫ビクターとともにアメリカへ旅立って、再び自分の前から消えてしまうのが堪えられない。イルザをここに留めたいが、彼女の行く末を思えば渡米させるに越した事はない。
"ダンディ"なら「愛している」と口にすべきではなかったかもしれない。が体裁だけでは映画にならない。体裁の下の本心が見え隠れするからロマンスとなる。
可愛さ余って憎さ百倍? アメリカへは逃さず、ビクターとイルザに警察に引き渡す・・・と見せかけて、監視の目を欺き、独逸空軍少佐を射殺してまで二人の亡命を手助けする。
イルザ・ラント(イングリット・バーグマン)は元恋人リックと夫ビクターの間で揺れ動く。女である彼女はそこまでダンディに徹する必要も無い。化粧の下の素顔は、おそらく夫ビクターにもかつての恋人リックにも見せない。ビクターをアメリカ亡命させたいのは本心であるのだろうが、彼についていくのか、それともリックとここに留まるのか。
難しいのはビクター・ラズロ(ポール・ヘイリード)である。彼は、かつてイルザとリックが愛し合っていた事を知っている。アメリカへ渡るには、スペインのレジスタンスにも協力したリックの手助けが必要、そして彼の心を開くのはイルザであることも理解している。イルザを連れ去るべきか、ここに留めるべきか。
三人が三人とも、ダンディを、体裁を纏い切れない。言動の端々に本心が見え隠れしてしまう。そこが面白くももどかしいところで、最後はボギーのやせ我慢でけりをつけてしまう。

やはりこの映画で一番のダンディはクロード・レインズ演じる警察署長ルノー。親独逸政権の支配下で、表向き厳めしい制服で身を包んでレジスタンスを取り締まるが、本心は親レジスタンス。見た目はともかく、言動はジェントルでエレガントでさえある。ボロは着ててもココロはニシキ。

今の時代に「ダンディズム」はアナクロニズムめいてしまう。 「ええかっこしィ」も「やつし」も浮いてしまう。貴族的生活様式を望めるような平和な時代ではないけれど、ジェントルであることを心掛けて、立ち居振る舞いだけでもエレガントを目指す。なにより、やせ我慢してでもヒトを思いやることが大切なんじゃないかと思う。難しいけどね。
だからって、やっぱり「Return to Cadablanca」、続編はないわァ。
どうせなら、子供は女の子で、母の想い出を訪ねてパリからカサブランカを旅する。その中で彼女は気付く、私の父はビクターなのか、それともリックだったのか。母が本当に愛したのはどちらだったのだろう・・・。年老いたリックは出て来たらあきません。彼はレジスタンスとして人知れず死んでいた。娘はその墓碑を探し当てて・・・。
あまり甘過ぎない演出で、ドキュメンタリー調に撮って頂きたい。ちょっと昔のフランス映画風。ヌーベルヴァーグな味付けがいい。ドラマとしてはその方が面白いような気がするのだが・・・。ん〜ん、シナリオ書きたい!!
続編が本当に作られたらやっぱり観てしまうンやろうけど・・・ねッ。

時の過ぎゆくままに.jpg


"ジュリー"で「カサブランカ」といえば、こちらも忘れられない「時の過ぎゆくままに(作詞:阿久悠/作曲・編曲:大野克夫)」。
映画「カサブランカ」の中でピアニスト、サム(ドーリー・ウィルソン)が演奏していたのが「As Time Goes By(時の過ぎ行くままに・作詞作曲:Herman Hupfeld)」。こちらはもともとブロードウェイ・ミュージカルのために書かれた楽曲らしいが、「カサブランカ」のテーマとして知られている。
ジュリー版「時の過ぎゆくままに」は映画「カサブランカ」と直接的なつながりはない。ジュリーが主演を務めたテレビドラマ「悪魔のようなあいつ」の主題歌とされた楽曲ながら、「As Time Goes By」のエッセンスを頂いた翻案で、どちらも名曲。

カサブランカ」でもう一曲。

哀愁のカサブランカ.jpg


こちらは郷ひろみの「哀愁のカサブランカ(作詞・作曲:B. Higgins, S. Limbo, J. Healy/日本語詞:山川啓介/編曲:若草恵)」。バーティ・ヒギンズ(Bertie Higgins)が唄った「Casablanca」の日本語版カバー。
映画「カサブランカ」が上映されているドライブイン・シアターで恋に落ちて行く少年少女。映画「カサブランカ」や「As Time Goes By」のフレーバーがかかったポプコーンの甘じょっぱい味。
この曲、実はワタシの十八番。カラオケはともかく、ピアノが置かれたお店で弾き語りすれば、その筋の女性達に特定の効果を与える事が出来た訳ですな。今は昔のお話しで・・・(笑)。


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コメント 4

yosshu0715

「ダンディズム」・・・日本風に解釈すれば、「武士は喰わねど高楊枝」って感じでしょうか・・・!?(笑)
「ええかっこしぃ」「やつし」というご説明はしっくり来ますね!!(笑)

本当の欲望をぐっと隠して、自分に厳しく、少し上の目線から格好を付ける・・・

そういう意味では僕がポコさん☆のご飯を作ったり家事をしたりするのも僕なりのダンディズムかも!?(笑)

若い頃目指したダンディズムとは随分替わってしまいましたが!!(笑)
by yosshu0715 (2012-11-09 11:31) 

JUN1026

ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
「喰わねど高楊枝」・・・その割りにめいっぱい召し上がっておられるような・・・(笑)。
冗談はともかく、近頃めっきり「ええかっこしぃ」も「やつし」も聞かないし、見掛けなくなりました。背筋伸ばして、胸を聳やかして、上から目線。
ヨッシュさん謹製ダンディズム風味の優しい味にポコさん☆もさぞやホッコリとろけていることでしょうね。お熱いことで(笑)。
by JUN1026 (2012-11-09 12:33) 

moto_tip_sp

jojoさんならダンディでいけるかも。私はまあ無理ですが(^^;;
それにしてもジュリーですか、懐かしいというより古いですね。
jojoさんは私よりかなり年下と思っているのですが、年をごまかしてませんか(^^;;
by moto_tip_sp (2012-11-09 18:18) 

JUN1026

モトさん、コメントありがとうございます。
来年のテーマはダンディにしましょか(笑)。
"ジュリー"、古いといえば古いですね。クルマもロックも歌謡曲も'60年代〜'80年代くらいが面白くて好みです。昔はグループサウンズのコピーをしてました。
by JUN1026 (2012-11-09 21:06) 

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