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「大阪クラシック2018 第51公演」 [音楽のこと]

さて、本日のお目当て、「第51公演」。もしかしたら、「大阪クラシック」の中で一番楽しみにしていたかも知れません。
今年はクロード・ドビュッシー没後100年で、彼の曲が多く取り上げられるかと期待していたのですが、「第1公演」での「牧神の午後への前奏曲」の他は、平日の公演にそれぞれ1曲ずつの2曲のみ。さすがにそのためだけに有給を消化することは許されないので堪えたが、堪えられないスペクタクル。

で、見逃せない「第51公演」はというと、恒例となったピアノ・スペクタキュラー

2012年の「第45公演(ザ・シンフォニーホール)」では、4台8手でワーグナー(リスト編曲)「タンホイザー序曲」とストラヴィンスキー「春の祭典」。
2013年の「特別追加公演(ザ・シンフォニーホール)」では、モーツァルト「ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467」より『第2楽章』を大植のピアノに弦楽五重奏を加えたピアノ六重奏版と、ピアノ3台6手版としたベートーヴェン「交響曲 第5番 ハ短調 作品67」。
2014年の「第61公演(ザ・シンフォニーホール)」では、ピアノ3台6手とした、ベートーヴェン「交響曲 第9番 ニ短調 作品125」。これには独唱と合唱まで加わって。
2015年の「第37公演(大阪市中央公会堂 中集会室)」ではホルスト「惑星」を3台6手連弾で。
2016年の「第50公演(大阪市中央公会堂 中集会室)」は、3台6手ピアノ版で、ドビュッシー「海 - 管弦楽のための3つの交響的素描」と、中村紘子さんへの哀悼を込めたムソルグスキー「展覧会の絵」。「展覧会の絵」には100名近い混声コーラス付き。
昨年の「第48公演(大阪市中央公会堂 中集会室)」では、ベルリオーズ作曲「幻想交響曲 作品14」をピアノ4台にトランスクリプション。
何れも大植英次がピアニストとして参加。弾き振り・・・ピアノ演奏しながら指揮を執り、ベートーヴェン「第九」ではその作曲風景の再現として寝転がっての演奏、どのプログラムよりもエンターテインメント性の高いプログラムであった。

で、今年は・・・?

管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団、ピアノ:大植英次、保屋野美和、尾崎雄飛、甲斐史郎
モーツァルト/3台のピアノのための協奏曲 ヘ長調 K.242、バーンスタイン/シンフォニック・ダンス(3台ピアノ版)

んン!? オーケストラが加わるのはいいとして、ピアニストとしてクレジットされているのは4名で、なんか、一人あぶれそうな。「3台ピアノ・コンチェルト」を4台8手で演奏するのでしょうか? でも、「シンフォニック・ダンス」も3台ピアノ版となっている。
どんなトリックが仕掛けられているのか? どんなマジックを観せてくださるのか?
チケットも買ってあるし、とりあえず大阪市中央公会堂に向かいましょう。

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開演が14h00となっている「第51公演」。有料ではあるが公会堂・中集会室になってからは全席自由席で、来場者はほとんど聴衆というより大植英次ファンな観客。過去2回、マエストロの立ち位置に近い席から埋まっていった。熱心な方は早朝から公会堂前に待機しているらしい。
ワタシはそこまでのフリークでもなく、3台あるピアノの一番手数が多く華やかな演奏を間近に観たい。
ランチの後13h00前に会場に到着。地下のエントランスから誘導されるままに4階まで上がってみると・・・、中集会室前のロビーには予想通りずらりと行列。
その列に加わって、開場を待つが、そこでの話題は会場内のレイアウト。ピアノがどう配置されるのか・・・というより、大植英次は何処でどうピアノをお弾きになるのかと、何方も躍起になっている。
ガイドをしているボランティア・スタッフも把握しきれていないようで、ピアノが3台あって、それがT字型に並ぶという情報しか得られない。
暫くして詳細が発表されるが、センターのピアノは連弾になるとか、それも少々要領を得ない。

で、開演に先立って、マエストロに対するサプライズを企てるということに話題が移って・・・。

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開場なって、ホール内へ。3台のピアノはオーケストラ席に対して、三ツ矢サイダーか三菱のスリーダイヤ・マークみたいな(?)配置で、センターはBösendorfer、両サイドの2台はYAMAHA。ということは、マエストロは真ん中でオーケストラに向かうはず。3台とも大屋根は取り外されている。
ピアニストの手元を伺いたいが、このレイアウトでは無理。どちらか一方に寄っては、オーケストラのバランスが悪くなる。
で、結局センター正面に座席を確保。

なんの前説も無いままに14h00、開演時間。
大阪フィルハーモニー交響楽団から選抜されたメンバーが入場し、首席コンサートマスター田野倉雅秋の指示のもとチューニング。
指揮者、大植英次・・・、今回はピアニストとして入場? それに従うのは、保屋野美和さんと尾崎雄飛さん。あれッ、甲斐史郎くんの姿が無い。
どうやら、「3台のピアノのための協奏曲 ヘ長調 K.242」は極真っ当な編成での演奏となるようで、センター・大植英次、レフト(下手)・保屋野美和、ライト(上手)・尾崎雄飛の布陣。

この楽曲は、ザルツブルグにて1776年、ヴォルガング・アマデウスが20歳の時に作曲されたもので、その地に暮らす名門貴族エルンスト・ロドロン伯爵夫人アントニーナとそのご令嬢アロイジアジュゼッパに捧げられた。その麗夫人と娘たちが独奏ピアノ3台を担当・・・って、自宅サロンに3台のピアノを並べて、チェンバーオーケストラ・・・室内管弦楽とはいえそれを全部揃えられちゃう、ロドロンさんて何者よ・・・と思ったらザルツブルグ大司教を輩出するようなお家柄で、エルンストさん自身は時のお大臣、全くもってお大尽。
ママンとおねーちゃんのパートはそれなりのスキルを要するが、妹ジュゼッパが受け持ったパートは他の二人に較べると初心者レベル。で、近年3台で演奏される場合はコンダクターが弾き振り・・・ピアノ演奏しながら指揮を執られるパターンも見受けられるが、3台のピアノとチェンバー・オーケストラではバランスが悪いのか、モーツァルト自身の手で2台ピアノ&管弦楽版に改められてもいて、今日2台版での演奏も多い。
後にも先にも3台ピアノ協奏曲って、ワタシの知る限りこの曲限り。
今日は、貴重な3台ピアノで、しかも弾き振り。
良くも悪くもモーツァルト的な楽曲。管弦楽が奏でる第1楽章の序奏から典雅な趣きで、築100年の中央公会堂 中集会室ロドロン家のサロンになったような・・・。麗夫人、令嬢役を担えそうなのは保屋野美和さんだけなのですが・・・。ええ、そこは眼を瞑りましょう。
モダン・ピアノ3台では、フルオーケストラでも均衡を量るのが大変じゃあ? ・・・と思ったのですが、そこはそれ、ピアニストもオーケストラも弁えたもので、ソツがない。親子三人の睦まじさはともかく、破綻なく美しい。

もう少しその雅びな余韻に浸っていたかったのですが、今日だけでもあと7公演を残し、楽団員はそれぞれ次なる会場に移動しないといけない。聴衆にしても、他の会場へと足を運んで頂かねばならない・・・ということなのでしょう。

オーケストラと美和さん、尾崎さんが退いた後、マエストロに招じ入れられるのは甲斐史郎くん。大植さんと連弾でもするのかと思ったら・・・。
甲斐くんはすごい耳の持ち主で、管弦楽をいわゆる耳コピし、すごいスキルでそれをピアノで再現する・・・天才少年という紹介。で、かつて彼は大植英次が演奏した「キャンディード序曲」を余すところなくピアノにトランスクリプション、ソロ演奏出来る・・・ということで、甲斐くんのソロで「Candide Overture」。
日本初演、世界初演とマエストロは盛り上げるが、2014年の「第61公演」で初お目見えの際にご披露されている。
それは、鍵盤の上を躍動・・・どころか、疾走するかのような、テンポ以上のドライヴ感。オケ・ヴァージョンとは聴いた印象は変わってしまいこそすれ、確かにソロ・ピアノ版「Candide Overture」。あえてテンポを落として、ひとつひとつの音を際立たせて、ゆったりとピアノらしさを出してもいいのでは・・・とも思うが、「キャンディード序曲」のグルーヴを優先した、ピアノで完コピ出来るよ・・・ということなのでしょう。

今年生誕百年となるバーンスタイン。今日マエストロ大植が着ておられるお召し物は下着以外全部、ポケットチーフに至るまで、ご遺族を通じて譲られた先生の遺品であるという。
甲斐くんのソロに続いては、4人のピアニストで『シンフォニック・ダンス』。
ブロードウェイで好評を博した現代アメリカ版”ロメオとジュリエット”、ボーイ・ミート・ガールなストーリーは、映画化に先立って、そこで使われた楽曲が演奏会用の組曲とされて、それが「『ウエスト・サイド物語』からのシンフォニック・ダンス(Symphonic Dances from 'West Side Story’)」。
今日はそれを3台8手ピアノ連弾アレンジメント。センターのベーゼンドルファー甲斐くんをプリモ、大植さんをセコンドとして、上下のヤマハはそれぞれ尾崎さん、美和さん。

演奏に先立ってマエストロからオーディエンスにご注文。ミュージカルや映画の中でも演じられた、『プロローグ』を初めとする要所要所に出てくるフィンガー・スナップ(指パッチン?)を一緒にしてくれろとのオーダー。ダブル、トリプルとなる箇所はその都度指示を出すという。
さらには、ミュージカルや映画ではダンスパーティーのシーン、組曲の途中にも組み込まれた『マンボ』では、♫ Mambo!! ♫ と掛け声を入れてくれろとのご用命なのですが・・・。
事前に仕組まれたサプライズ。”Mambo!!”を”Eiji!!”に変えてエイジご本人を驚かせようというスタッフのイタズラ心。

プロローグ』から始まる3台ピアノ版「シンフォニック・ダンス」。
それぞれの手元は窺い知れないが、ざっくりと根幹部分、オケでいえば弦部は尾崎さん、美和さんが受け持って、アクロバティックな装飾音、管楽器や打楽器のパートを大植さんと甲斐くんが再現するような分担?!
そのアクロバット・プレイはまさに離れ業。どこまでが演出で、どこからがアドリブなのか分からないが、甲斐くんがマエストロを追い出してキーボードを占拠、マエストロは立ち上がってコンダクト、そこから戻ると、変わって甲斐くんが立ち上がりピアノのボディ内側を叩いて即興のパーカッション。二人が立ったり座ったり、動き回って忙しげ。
二人のやりたい放題にも見えて、クールに演奏する尾崎さん、美和さんとの温度差が観ていてちょっと面白い。
それを見守る聴衆も、フィンガー・スナップと件の掛け声。さすがのマエストロも、「Eiji!!」のコールには驚いたようで・・・。会場が一体になって、一種異様な盛り上がり?
演奏が終わっても鳴り止まない拍手。
アンコールとして、『Mambo』を再演するが、もちろんそこでもコールは「Eiji!!」。おやッ、マエストロ、感涙に咽いでおられる?!

モーツァルトの典雅な余韻に浸っていたかったりもしたのですが、これが「大阪クラシック」。とにかく、楽しめました。
せっかく休暇をとっての観覧、もう数公演巡ろうかと思っていたのですが、もうお腹いっぱい、耳も疲れました。次は最終日と致しましょう。

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