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ピカソと日本美術 [散歩・散走]

「フランス近現代絵画を巡る芸術の秋2017」シリーズもそろそろ完結?
HOKUSAI・・・葛飾北斎ら江戸後期の浮世絵師たちが描い風俗画が海を超えて、光の都パリへ。それらはジャポニスムという一大ムーブメントとなって、美術界だけではなく、文学や音楽にまでインフルエンス。その軌跡を追いかけようというのが、今秋のワタシのテーマ?!

あべのハルカス美術館で「大英博物館 国際共同プロジェクト 北斎-富士を超えて-」を拝見し(→記事参照)、神戸市立小磯記念美術館で「ユニマットコレクション フランス近代絵画と珠玉のラリック展 -やすらぎの美を求めて-」を観覧し(→記事参照)、今日は和泉市久保惣記念美術館での「ピカソと日本美術 - 線描の魅力 -」を鑑賞させて頂きます。


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地元和泉市で明治より代々綿織物業を営んでいた「久保惣(久保惣株式会社)」の社長・三代目久保惣太郎氏が、古美術品のコレクション約500点と、土地、建物(本館、茶室)、基金¥300,000,000円を和泉市に寄付し、1982年に開館したのが和泉市久保惣記念美術館
1997年には久保惣五代目久保恒彦氏により新館が完成し寄贈されて、1999年には久保惣記念文化財団を経て、音楽ホール、創作教室、市民ギャラリーなどが、2006年には同財団から研究棟が寄贈されて今に至る。
所蔵品も順次寄贈され、現在は国宝2件、国の重要文化財29件を含む、所蔵総数は約11,000点。作品の大半は久保惣コレクションで、その多くは東洋古美術であるとのこと。新館にはクロード・モネ(Claude Monet)ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)ポール・セザンヌ(Paul Cézanne)フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ(Vincent Willem van Gogh)パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、フランソワ=オーギュスト=ルネ・ロダン(François-Auguste-René Rodin)などの西洋近代絵画・彫刻や、中国の工芸品などが展示されているとのことで、今回のエキシビション「ピカソと日本美術 - 線描の魅力 -」は同館が誇る日本美術ピカソをフューチャリングした、開館35周年の特別展となっている。
このために日本全国から集められたピカソ作品だけでも114点。日本美術の方も負けてはおらず、国宝、重要文化財の他にピカソ在命中の1962年にパリで開催された「日本古美術展」にも展示された禅画、白隠慧鶴の「乞食大燈像」や仙厓義梵の「老子騎牛図」などの名品が90点。

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パブロ・ピカソ
(Pablo Picasso)ことパブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ(Pablo Diego José Francisco de Paula Juan Nepomuceno María de los Remedios Ciprin Cipriano de la Santísima Trinidad Ruiz y Picasso)は1881年10月25日にスペイン南部アンダルシア地方マラガに生まれ、ガリシア地方ラ・コルーニャバルセロナで美術を学び、二十歳を過ぎた頃からパリ・モンマルトルの、詩人マックス・ジャコブ(Max Jacob)のよって「洗濯船(Le Bateau-Lavoir)」と名付けられた安アパートを拠点に活躍。美術界だけに止まらず、多くの芸術家と親交を重ね、その一方で正式な奥さん以外にも何人かの愛人を作り、生涯に2度の結婚、三人の女性との間に4人の子供。さぞや、お忙しい・・・お盛んなことで・・・。
青の時代」から「ばら色の時代」、「アフリカ彫刻の時代」、以下「セザンヌ的キュビスム」、「分析的キュビスム」、「総合的キュビスム」と立体的な時代が続き、「新古典主義」から「シュルレアリスム」、そして「ゲルニカ」、「晩年の時代」と作風を変えながら、生涯におよそ13,500点の油絵と素描、100,000点の版画、34,000点の挿絵、300点の彫刻と陶器を制作。その他にも、舞台美術や衣装デザインも手懸け、ジョルジュ・ブラック(Georges Braque)とともに、キュビスム(Cubisme・立体派)の創始者として知られる。
ワタシが深く愛するフランス近代芸術から少し遅れて、「青の時代」でさえ20世紀初頭で、ピカソの活躍期はほぼほぼ現代。19世紀半ばに花開いたアヴァンギャルド(avant-garde)の、さらに先を行くような作風ではあるけれど、果たしてジャポニスムの、日本美術の影響は・・・?!

ピカソというと、カクカクした絵を思い浮かべちゃう? 「アヴィニョンの娘たち(Les Demoiselles d'Avignon)」とか「泣く女(La femme qui pleure)」とか「ゲルニカ(Guernica)」とか。代表作とされるそれらは油彩画ではあるけれど、遺した素描画の数も半端ない。持って生まれた絵心がその手に休息を与えなかったのでしょうね。眼の前に描きたい画題があれば、ささっと描いちゃう。その辺りは、”画狂人”と自称した北斎さんとよく似ていらっしゃるのでしょう。
ギネス級の多作を数えるけれども、納得出来る作品を仕上げるための習作を何点もヴァリエーション展開するような、ちょっと偏執的なところもあったのでしょう。だからこそ、チャチャっと描きあげた素描、デッサンもそのイマジネーションのソースとして重要な意味を持つのではないかと思ったりもする。

ピカソと日本美術 - 線描の魅力 -」。そのサブタイトルにあるように、ピカソ作品114点は油彩画より鉛筆やパステルで描かれたデッサンや挿絵、リトグラフなどが中心。素描だからって、粗暴じゃない・・・、あッ、ちょっと粗々しい・・・か。紙に鉛筆だけで描かれたそれらデッサンは、迷いのない、より大胆な筆致で、モデルの本質を映し出す。
面白いのは、展示のレイアウト構成で、化粧品屋のおばさん世界有数の女性大富豪の肖像画(素描)は東洲斎写楽喜多川歌麿が描いた大首絵と並べられ、黒一色で描かれた「闘牛技(Tauromaquia)」は鎌倉時代末期の「駿牛図」と相対する。似てるでしょ・・・と言いたいのでしょう、似てるんですけど。
線描の画家」とも呼ばれたピカソと、日本美術にあって緻密で精緻な白描画、墨の濃淡だけで描き上げた水墨画。影響云々を抜きにしても、どちらも十分にインプレッシヴ。

体内に渦巻くイマジネーションを具体化するために、絶えず新しいレトリック、テクニィークを模索し続けたピカソ。素養もないままに版画を始めちゃったり、思いついて手をつけた彫刻や陶器がちょっとイビツだったり。でも、それも彼のスタイル。
晩年の作品はあまり評価されることはないのだけれど、「ようやく描きたいものを描きたいように描けるようになった」と、いい感じに無駄なチカラが抜けちゃって、心底自由に思うままに筆を動かしたであろう作品は彼のリラックスも感じられて、それこそ浮世絵、ことに”春画”の影響が垣間見られるような気もして面白いと思うのだけど・・・。そういう作品群はあまり一堂に会しての展示とはならないようで、寂しい限り。
晩年にリラックスし、それまで以上に素敵もない秀作を残した・・・って、ちょっと、我が親愛なるクロード・ドビュッシー(Claude Achille Debussy)に通じるところもありますな。途中度々ゲスい事をしてスキャンダルから炎上したというのも似ておりますし・・・。ドビュッシーが「何を書けばいいか分からない」と大師匠フレデリック・フランソワ・ショパン(Frédéric François Chopin)に倣った「12の練習曲(Douze Études pour piano)」を作ったように、ピカソも過去の大家、マエストロの作品をアレンジメントして描いていたり・・・。
画家にしろ、作曲家にしろ、最晩年の作品を集めて並べてみるというのも面白いかもしれません。肩肘張らず、本当に描きたい(書きたい)もの、作家の心柄が視えるかもしれません。

それはともかく、ピカソの作品のうちメジャーどころは度々紹介もされ、広く知られるところではあるのだけれど、こうした線描画をフューチャーし、それに影響を与えた可能性のある日本画と対峙させた企画。十分に愉しませて頂きました。

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刺激的な絵画で少々高揚(こうよう)し過ぎたようで、広いお庭の紅葉(こうよう)でリラックスしてから帰ります。

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