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La vie est belle ~ モネを観に行く [散歩・散走]

バタバタと慌ただしい生活を続けるうちにもう10月で、今年も残りわずかとなってしまった。遊ぶ暇すらないわ・・・などというと奥様に叱られてしまうが、自転車に乗る時間がほとんどないのは確か。
まァ、夏の間は、日中の暑さを避けて早朝出発の朝食散走だったり、短い距離に止めたランチ・ポタリングだったりしたのだけれど、それでは少々物足りない。そろそろ行楽シーズン、ひっさしぶりにロング・ライドしてみたい。

 

とはいうものの、常夏化したのかと思われる大阪は、未だに日中は30℃前後の夏日が続く。かといって、日の出が遅くなって、静かで爽やかな時間が案外に短い10月上旬。加えて、台風やら秋雨やら不穏な天気ばかりで、なかなか行楽日和、自転車日和とならないもどかしさ。あいにくと、今日も天気予報は曇り後雨。
が、もう辛抱たまりまへんがな。雨に濡れてしまうより、それを嫌って部屋でココロ腐れせている方がよほど錆び付いてしまう。
というわけで、今日は「オレの庭」を飛び出して、アサヒビール大山崎山荘美術館を目指す。

前回「ご来光カフェ・ポタ」最後の「自称、印象派」は、今日の前振りやったわけやね。

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アサヒビール大山崎山荘美術館は、実業家・加賀正太郎が昭和初期に建物の他、庭園や道路、家具、調度品なども含めて自ら設計、デザインして建てた英国風山荘の建物を復元整備し、1996年に美術館としてオープン。所蔵品の中核は、朝日麦酒株式会社(現アサヒビール)の創業者として知られる関西の実業家・山本為三郎の収集したコレクションで、クロード・モネの絵画『睡蓮』連作がご自慢となっている。現在開催中の展示会もそれをメインとしたもので、そのタイトルも「開館20周年記念 うつくしいくらし、あたらしい響き - クロード・モネ」。

クロード・モネ(Claude Monet 1840年11月14日 - 1926年12月05日)は、「印象派(impressionnismes)」を代表するフランスの画家で、「光の画家」とも呼ばれる。混合させない絵具での筆触分割に因って、自然光の輝き、光と大気、光と水面の関連を絵画の中に表現した。円熟期〜晩年にかけては、ひとつのテーマをさまざまな天候や、季節、光線のもとで描く「連作」が中心となり、彼の代表作でもある『睡蓮(Les Nymphéas)』もそのひとつ。

フランス近代芸術が好みで、フランス映画好きで、フランス文学を嗜好し、フレンチ・ポップやフレンチ・ロックを愛聴し、もちろんフランス近代のいわゆる「印象主義音楽」にもかなり偏好気味。フランス料理にワインも嗜みたいし、ミーはおフランスが大好物ザンスゥ的な・・・仏蘭西贔屓。「印象派」繋がり(?)で、同じファーストネームを持つクロード・ドビュッシー(Claude Achille Debussy 1862年08月22日 - 1918年03月25日)を"神"と崇める以上、もうひとりのクロード、「光の画家」に注目しないわけにはいきますまい。

昨年8月にもお花をテーマにしたエキシビジョン「植物のものがたり」開催時に訪れて、『睡蓮』も拝見させて頂いた(→記事参照)。その折りに、展示作品とともにお庭の景観にココロ惹かれて、桜の季節や庭園の泉水に本物のスイレンが咲く頃に再訪したいと思っていたのだけれど、今年の春〜夏は諸般の事情で外出を控えていた。忌明けとなって、(いちおうの)行楽シーズン、まだまだ暑いの、雨がイヤのと言っていられない。

自宅から大山崎山荘美術館までは30㎞強。ちょっと気合いのポタリング・ディスタンス。
実は先週の「ご来光カフェ・ポタ」の際に、中之島公園で雨に濡れた石畳にタイアを滑らせ、なんとか左足を踏ん張って転倒は免れたが、股関節と膝関節が想像を絶する曲がり方をしてそれ以来階段の上り下りに不自由するくらい痛めてしまっている。空模様も不安気で、温度・湿度もかなり高い。いざという時のために輪行の用意も持参し、コースも幾つか考えられるが、JR京都線と阪急京都線に付かず離れず、もしもの時は電車移動に切り替える算段をして家を出る。
30キロメートルは負担になるほどではないのだけれど、その道中がどうも退屈。「オレの庭」と違って、道沿いに立ち寄りたいようなカフェがあるではなく、定食屋が目立つ。FerrariやMcLarenのショールームではなく中古車センターが並ぶ。何より眼を惹くようなオネーサンが歩いてェしまへんがな!! まァ、天王山までは路がほぼほぼド平坦なのが救い。
・・・なんてね。久し振りに「オレの庭」を離れての単独行は不安でもあり、とても退屈。

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が、往路を走り切り、天王山の登り口に至ったのは、想定より20分も前。雨の気配に怯えて、少々飛ばしすぎたらしい。お山の激坂を登りきって、美術館の駐輪場にBD-1Rを停めて、開館を待つこと15分。

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オープンと同時に本館入口で受付を済ませて、館内を散策。
09月17日から12月11日の期間開催されるのが、「開館20周年記念 うつくしいくらし、あたらしい響き - クロード・モネ」で、"開館20周年を迎えた2016年は、奇しくもモネの没後90年にあたります。本展では、当館所蔵品の柱である印象派の巨匠モネに焦点を当て、所蔵する8点を一堂に公開するとともに、国内美術館等から厳選された珠玉の作品を合わせた20点で、モネの作品と生きた時代を振りかえります。"という作品展示になっている。
"エトルタ、アルジャントゥイユ、ロンドンと創造の源泉を求めて旅に明け暮れたクロード・モネ(1840-1926)は、40歳代に入るとパリ近郊のジヴェルニーに居を定め、絵を描くように庭を造りました。草木の配置や花々の配合を細かく研究し、庭師を雇い、自身のイメージを現実の庭に再現したのです。庭に思索と安穏を見いだしたモネは、睡蓮を育てながら描きつづけ、やがて睡蓮の絵画に囲まれた部屋で人々がやすらぎを感じることを期待しました。当館が所蔵する《睡蓮》連作5点は、このジヴェルニーの庭で生まれた作品"であるとのこと。

古いレジデンスを改築したミュージアムは幾つかの展示室に区切られて、特別展示と常設展示がそれぞれに配されている。お目当てとなるモネの作品は、各々別館である山手館夢の箱」と地中館地中の宝石箱」に展示されている。「宝石箱」にはご自慢の『睡蓮』連作、「夢の箱」にはその他の風景画や人物画。

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指定された順路に沿って館内を巡り、その途中、二階の喫茶室で脚休め。開放的なテラスにも席を設けた館内カフェでは、そこからの眺望も楽しめて、コーヒーや紅茶とともにアサヒビールも吞めたりするのだけれど・・・。
こちらでは、企画展限定メニューとしてリーガロイヤルホテル特製のケーキセットが用意されていて、今回の「モネ展」のために揃えられたpetit bijouは、「Délice aux pommes」、「Délice aux orange」、「Aldechoit」。その三種の"小さな宝石"は、それぞれにリンゴ、オレンジ、マロンを使ったフレンチスタイルのスイーツ。
ワタシが頂いたのは、当然、「デリス・ポンム」。リンゴを使った焼き菓子に眼がない上、apple(この場合、Pommeなのだけど)は見逃すわけにはいきまへんな。
キャラメリゼされたリンゴがたっぷり乗った小さなケーキ。リンゴの甘酸っぱさとキャラメルのほろ苦さがいい感じにバランスするひと品。
ええ、事前のリサーチで限定スペシャルpetit bijouの存在を知っていたワタシは、モネ半分リンゴ菓子半分でこちらに伺ったと言ってもいいくらいで・・・。そういえば、以前来館した時に頂いたのは「モネの庭」というお菓子。

お茶とケーキに満たされて、"展覧会の絵(Tableaux d'une exposition)"に戻る。と言っても、脳内再生されるのはムソルグスキーでもラヴェルでもなく、ドビュッシー。今日は何故か、彼を近く感じる。
印象主義の作曲家とされる彼もおそらくモネの作品を眼にしているはずだが、直接的に影響を受けたわけではないように思う。絵画や文学からテーマを見出すことの多いドビュッシーは、より古典的な作品を好んだ。同時代を生きたモネをちらっと横目で見ながら、なんか違うと考えていたように感じられる。
似て、非なるもの。
鑑賞者の心の有り様に依って色彩感が違って見えるという点では似ている。レトリック的にも近しいようには思える。が、何かが違う。二人の芸術家の感性のフィルターが異なるのは当然として、より根源的な部分、哲学的美意識が全く違うのではないかと見受けられる。同じ時代にあって表現方法は近しいものではあるが、それに至る前の分析方法が全然違うのではないか。題材を捉える目線が違う。
モネは"光"を重視して"影"を廃した。それに対して、ドビュッシーは"陰影"まで音に変えた。"光"と"影"のコントラストを描いた。「音楽宇宙」の創造神であるからして、"ダークマター"な要素が多い?! 読み解くのに、天文学的知識が必要?

カフェ前に「夢の箱」まで観て、カフェ後はゆっくり「地中の宝石箱」で『睡蓮』を鑑賞。

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睡蓮
。水の底の土や泥に根を張り、水面に葉と花を展開する抽水植物。日中に花びらが開き、午後になると閉じてしまう。これを3日繰り返して花の寿命は終わってしまう。朝に目覚めて、午後には眠りにつく、僅かに3日の命・・・、と言っても、多くの花を水上に伸ばすその根っこは多年草らしく長い寿命を持つ。
フランス語では「Nymphéas(ニンフェア)」、学名は「Nymphaea(ニンファエア)」で、ギリシャ神話に登場する英雄ヘラクレスに捨てられてしまった妖精Nymph(ニンフ)を語源とする。その妖精は悲しみに暮れてナイル川に身を投じたという。水上に咲く可憐な花は少女の姿をした妖精が転じたもの。英名の「Water lily」じゃあ、それが伝わらない。
また、一部ヨーロッパでは、水の妖精たちは人目に触れることを嫌い、人間が近づくとスイレンに姿を変えたという。あるいは、水面に浮いたスイレンの葉の下には水魔がいて、花を手折ろうとするものを水中に引き摺り込むと信じられていたとか。
モネの『睡蓮』。その数は200作に及ぶが、ここには5点収蔵されている。その多くは池に咲く花そのものではなく、水辺の風景を切り取った風景画で、タイトルになるお花は小さく、ポツリポツリと絵の中に点在するだけ。
なぜ、彼が丹精して完成させた「ジヴェルニーの庭」、そこに作られた小さな池は水面いっぱいのスイレンにしなかったのだろうか。彼の美学、美的感覚的にそれが適当と思えたのだろうが・・・。ジャポニスム(Japonisme)、日本的なものに惹かれて、太鼓橋まで設けた彼の庭。そのお庭の池は、その表面を覆い尽くすほどにスイレンが繁茂することをよしとしなかったのでしょうなァ。3日ごとに生まれ変わる儚い命を愛でたのかもしれない。あるいは、その花の美しさは認めつつ、妖精を恐れて、スイレンを少なく留めたのかもしれませんな。

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輪郭線の曖昧な色彩の重なりは、確かに調性感の稀薄な印象主義音楽に近しいものを感じる。ほぼ同じ時代に同じフランスで起こった芸術運動ではあるのだけれど、どちらもより自由な表現を求めて既存のセオリーから脱しようとしたもので、絵画などのヴィジュアルアートがその先駆け、音楽や文学がそれに追従した形となっている。
伝統的な題材を離れて、ごくありふれた日常的な自然の風景が画家の眼、そのフィルターを通して、印象付けられた絵画作品は時に乱暴にも見えるのだけど、人生・世界、事物の根源のあり方・原理を、理性によって求めようとする、ヒジョーに哲学的なものではないかとワタシは思う。
その哲学的絵画のレトリックが音楽や文学に伝播し、それまでの機能和声を壊し、
主観的表現を捨てて、より漠然とした雰囲気やその時の心の有り様を音や文字で現したものではないかとワタシは考える。

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大判の『睡蓮』も眼を見張るものではあるが、一番心惹かれたのは『サンジェルマンの森の中で』という1882年製作の作品。山形美術館収蔵のものでこの企画展のために借り出された一枚。これを眼にした時に何かインスピレーションを得たような気がして、「地中の宝石箱」で『睡蓮』を観た後、もう一度「夢の箱」まで戻った。
そういえば、サン=ジェルマン=アン=レーは、偶然にもクロード・ドビュッシーの生地。彼の生家も、今は博物館となって残る。
この絵に惹かれて、音楽的なものを感じたのはそのせいかしらン?! ピアノとヴァイオリンが奏でる"あたらしい響き、nouvelle harmonie"が聴こえたような・・・。

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館内を巡り、モネを十分に堪能した後は5500坪を誇る庭園の散策。緑が多くて安らげる気がする。ところどころに設けられた泉水にココロ和む思いがする。やはり、サクラやスイレンの季節に訪れてみたい。
モネ展」は12月11日まで開催されている予定なので、それまでに再訪しようとも思う。お庭の木々が紅葉している頃ならまた違った"印象"を得られるに違いない。

お庭でのんびり物思いに耽っていたら、お昼時。そろそろランチ? が、ケーキセットでお腹いっぱい。といって、温度が高くなってきて、じっとしていてもカラダが溶解る。とりあえず奔ればお腹も空くだろうと、駐輪場に戻り、BD-1Rで下界へ駆け下りる。その勢いで171号線を走り出したら、頭上に雨雲が広がるかと思えばそれが切れてキツイ日差しが降り注ぐ。雨を恐れて、日差しを嫌って、復路は往路の30%増しの速度で奔る。途中、茨木市か箕面市で小洒落たカフェに立ち寄るつもりでいたが、171号線から14号線まで一気に走り切ってしまって、気がついたら吹田市内。ここまで来たら、自宅までもう少し。無理に外食するより「うちカフェ」で十分。今日は、モネの絵画とリンゴのお菓子でたっぷり満足は得られたし、絵画から音楽的インスピレーションも感じられた。

"全ての芸術は音楽へと収束し、音楽はまた、全ての学問の窓口でもある"(ちょっと格言風に言ってみた)。

そうそう、フランス料理にワイン・・・もいいけれど、なんだかレンコンの天ぷらでビールが呑みたいような・・・(庶民派なワタシ)。

本日の結果
Mx.:36.50km/h、Av.:16.80km/h、Dst.:64.81km、Tm.:03:50:13


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yosshu0715

モネといえば僕も先日デトロイト美術館展でグラジオラスを見てきました!!(笑)
僕も印象派は大好きなんですよ!!(笑)

もちろんこの大山崎山荘美術館の展覧会もいきたいと思っているんですが、結構山の上ですよね・・・!!(笑)
体調が万全でない状態であの上まで登られたとは・・・!!(笑)
JoJoさん、凄い!!(笑)


睡蓮ももちろん見たいですが、サンジェルマンの森の中では凄いですね!!(笑)
今の季節にピッタリですし、是非とも見てみたいです!!(笑)
by yosshu0715 (2016-10-10 05:55) 

JUN1026

ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
モネ、なかなかに感動的でした。「睡蓮」はあちこちで拝見しているので、まァ、アレですが、「サン=ジェルマンの森の中で」は観た瞬間に心震えました。もちろん、他の風景画もそれなりにすごいのですが、これは何か格別のものを感じました。
大山崎山荘美術館は駐車場もなくて、クルマならJR駅前に停めて随分と歩かないといけないようで、距離的にもポタリング向きなのでBD-1で行ってしまいました。
しかし、しんどい思いをして行っただけの値打ちは十分ありました。会期が12月11日までなので、紅葉の頃にもう一度行ってみたいと思うのですが・・・。
by JUN1026 (2016-10-10 07:07) 

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