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昼下がりのセレナーデ [音楽のこと]

今日は月に一度のお楽しみ、大阪大学豊中キャンパス大阪大学会館での「ワンコイン市民コンサート」開催日。本日のプログラムは『近澤裕明コンダクツ"弦楽アンサンブル" 三大弦楽セレナードの午後』で、サブタイトルが『テトラ・ムジーク・コーティリー』となっている。
テトラ・ムジーク・コーティリー・・・????
てとら・むじーく・こーてぃりー・・・????
ナニ!? もしかして魔法少女の呪文か!???


おそらくは、"tetra musik coterie"。4つの、音楽の、仲間・・・のことだと思われるが・・・。

第29回 ワンコイン市民コンサート.jpg


今日のテーマは「セレナーデ」。ドイツ語ではSerenade(セレナーデ/ゼレナーデ)、フランス語ではsérénade(セレナード)イタリア語ならserenata(セレナータ)英語ではserenade(セレネイド)で、日本語では夜曲(やきょく)あるいは小夜曲(さよきょく)と随分ロマンティークな呼称となる。
その歴史を繙けば、中世あるいはルネサンス期まで遡り、もともとは愛しきヒトの窓辺に立って手にした楽器(ギターやリュート)をかき鳴らしながら、自分の想いを投げかけたり、相手の気持ちを慰めるために唄いかけたのが始まりであるとか。それがやがてやんごとなき方々のご所望を得て、屋外で
声楽家と器楽グループからなる合奏団によって演奏されていたものがホールでの演奏会向きの楽曲と発展し、芸術性を高めつつ、ついには弦楽オーケストラで演奏されるに至った。
今日演奏される"三大弦楽セレナーデ"はその代表曲で、弦楽合奏曲の定番として演奏される機会も多く、誰もが知る著名な楽曲ばかり。

三大弦楽セレナーデとは・・・、
アントニン・ドヴォルザーク弦楽セレナーデ ホ長調 作品22番 (1875年)
ピョトル・イリイチ・チャイコフスキー弦楽セレナーデ ハ長調 作品48番 (1880年)
エドワード・エルガー弦楽セレナーデ ホ短調 作品20番 (1892年)
 
そのどれもが個性的で美しい名曲なのだが、分けてもワタシが好きなのはチャイコフスキー。特に"美味しい"のは序奏のテーマで、これだけでご飯が三杯食べられるほどの大好物!! ベートーヴェンの『5番』の第1楽章と同様、"つかみ"が印象的。たとえば自転車やクルマで走る際にこのもの思わし気なテーマを聴くと、まるで滑るように伸びやかな加速が得られる・・・ような気がする。
 
Tchaikovsky Serenade in C for Strings. Op.48.jpg

ところで、弦楽セレナーデは弦楽オーケストラのためのセレナーデで、十数名から二十名前後、楽曲に因ってはもっと多くの演奏者を要するはずなのだが、大阪大学会館の小さなステージにプレイヤーが犇めくのかしらンと思ったら、四国で活躍中の若手指揮者、近澤裕明が、関西一円で活躍中の弦楽器演奏家10名を指揮しての演奏会になるそうで、指揮者1名と弦楽器演奏者10名の計11名が登壇するのだとか。コンサートミストレスに木村直子、1stヴァイオリンが境三千代、鳥橋香予、2ndヴァイオリンが福本秀子、小川晶子、ヴィオラが大槻桃子、灘儀育子、チェロが木村政雄、境綾子、ダブルベースが浅野宏樹という布陣。これでも「ワンコイン市民コンサート」では最大の人数になるらしい。
パートの数でいくと、1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの5つになるが、使用楽器で見ると、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの4つ。もしかして、サブタイトルの『テトラ・ムジーク・コーティリー』・・・"tetra musik coterie"、4つの音楽の仲間はこれを指すのか!?
今日演奏される楽曲は古くから愛聴されている定番曲で、トランスクリプションされたヴァージョンも存在するのだけれど、10台の弦楽器、40本の弦でどのような音を紡ぐかが聴きどころ。合奏ではあるが、それぞれがソリストなみのスキルが要求されるらしいが、指揮者、近澤裕明がそれをどうコンダクトするかも見どころ、聴きどころ。
 
ここでちょっと思い出話。
ワタシがいわゆるデスクトップミュージック(DTM)、コンピュータでのオンガクを始めた頃は、もちろん高価な機材が揃えることが出来なくて、MSXパソコン(YAMAHA CX5)やNEC PC9801にシンセサイザー(YAMAHA DX7等)やエレクトーン、リズムマシンなどをMIDI接続して使っていた。非力なコンピュータではデータ数に制限があって、音数も限られ微細な表現を加味することも難しかった。メモリもプアだから、速いパッセージはモタってしまうし、分厚いオーケストレーションも不可能。そんな制約された環境でどう豊かなサウンドを作り出すか。広がりのある和声を構成するか。トランスクリプションやオーケストレーションの勉強にはなったと思う。
最近では同じことをiPhoneやiPadで簡単に行える。オーケストラをポケットに入れて持ち歩くことが出来るようになった。
いい時代になったよ。長生きはするもんですなァ(しみじみ)。
 
IMG_4461.jpg
ワタシの弦5部(笑)。
 
そんなワタシにあっては、今日のプログラム、"tetra musik coterie"な10名に指揮者1名による演奏で、華麗な弦楽セレナーデをどこまで再現出来るのか、興味もソソラレルし、楽しみなところ。
どうせなら、昼下がりではなく夕暮れ時に、会館を飛び出して、待兼山の森の中での演奏会になればもっとロマンティークなのでしょうが、そうはいきません。雨が降りそうやしね。
 
♢♢♢♢♢
 
このところ疲れ気味であるし、優しい小夜曲で慰められようと考えていたのだが、夜勤明け、入浴と朝食を済ませた後寝込んでしまったようで、目覚めたのが開場時間直前。ランチも摂らずに大阪大学豊中キャンパスに急ぎましょ。
いつもの席はすでに埋まっていたので、今日はバルコニー席2列目中央辺り・・・なのだが、最前列でないと膝がつっかえて窮屈い。これで2時間は耐えられるか?! が、そうこうするうちに他の席も埋まり、ほぼ満席の状態。移動出来そうも無い。
 
開演時間となって、ステージに並ぶ10名の弦楽器奏者。下手側から1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ。バスはチェロの後に控える。そこに現れるのが今日のコンダクター、近澤裕明さん。
1曲目が慈愛に満ちたエルガー、続けてエスニックで自由な感じがあるドヴォルザーク。どちらも有名な曲であるから説明は割愛するが、11名での演奏は悪くない。ハーモニーの厚み、奥行きが減ることで、物足りなさを感じるかと思ったら、逆に楽器1台ずつの音がしっかり聴こえるから、輪郭のはっきりしたエッジの効いたセレナーデとなっている。といって、決して尖っているわけではなく、(ややお歳を召した)女性が多いせいか、円やかな響きを含む・・・と思ったら、どうやらハーモニーを優しい印象にしているのは、チェロとバスの男性二人であるような。高音部は、艶やかで色っぽい。
近澤裕明さんの指揮もオーソドックスながらおおらかな印象。全体として、音も揃って、よく纏まった、聴いていて気持ちのいい、リラックスさせてくれる演奏であった。
 
2曲が終って、15分の休憩。
後半はお待ちかねのチャイコフスキー・・・なのだが、その前に、「ワンコイン市民コンサート」実行委員会代表の荻原先生に引率されて、福本秀子さんがまだ演奏者のいないステージに登場。今回のこのプログラムの発案者が福本秀子さんだそうで、「テトラ・ムジーク・コーティリー」とは彼女が主催するアンサンブルの、いわばユニット名なのだとか。4本の弦を持つヴァイオリン族が集まるから、"tetra musik coterie"、"4弦の、音楽、同人"を意味するのだそうだ。彼女が声を掛けて、四国在住の指揮者と関西在住のフリーランス弦楽器奏者が集った、今日の11名。"tetra musik coterie"は時に4名だったり、11名だったり、かなりヴァリアブルでフレキシブルなユニットであるらしい。
しかも、「練りにねった練り上げた演奏会」にするべく、指揮者を含めた11名で話し合い、一人ひとりの意見や考え方、音楽の感じ方をぶつけあって音作りしたのだとか。作曲家が一人で歩んだプロセスを複数の演奏者たちが追体験するという、アンサンブル形式には理想的ではあるが熾烈な計画。で、それが今日のステージで披露される三大弦楽セレナーデ。道理でよく纏まっていることよ。
ユニット名の由来と今日のプログラムについての解説に続いては、演奏者一人ひとりのご紹介。
ステージに11名揃ったところで後半の始まり。
後半はチャイコフスキー弦楽セレナーデ ハ長調 作品48番」をたっぷりとこちらもちょっとエスニック・・・というかロシア風味。案の定、"つかみ"から引き込まれてしまう。
前半2曲と同様、11名での演奏は纏まりもよくて、耳に心地いい。一人ひとりは個性的な演奏をされておられるようなのだが、それがひとつのハーモニーとして機能しているのは"熾烈な練習"の成果か。人数が少なくなる分、一人ずつの仕事は難しくなるはずなのだが、皆さん涼しい顔でプレイしているのは、いや、流石。
 
アンコールがなかったのがちょっと寂しいところではあるのだが、三大弦楽セレナーデを一気に聴けて、お得感満載!! しっかり堪能させて頂いたことは間違いない。
 
この「ワンコイン市民コンサート」、2015年の秋まで企画が目白押しとのことで、来月は『二つのピアニズム「光と闇に浮かぶ水の精と牧神」』と題された『李早恵ピアノリサイタル』。"光と闇"、"水の精"、"牧神"とくれば・・・。10月にはL.V.ベートーヴェンヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会のパート1が予定されているし、11月は青柳いづみこ先生がまたまたドビュッシーを引っさげてご登壇の予定。島崎藤村ドビュッシーがテーマになるとか。何れもが、今から楽しみです。
 
いやァ、オンガクってほんとにいいものですね。
来週は、お天気次第ですが、「自転車でめぐる美術館シリーズ」となって、ポタリング・レポートになります、多分。

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yosshu0715

僕の中学校、高校時代の友人達にはオタクな医者の息子が多くて、みんなキュウハチもってました!!(笑)
懐かしい!!(笑)

しかし音楽って良いですね!!(笑)
ブログを読んでいるとJoJoさんもmotoさんもコンサートによく行かれていて羨ましいです!!

僕もなんとか時間を作って遊びは行ってますが、音楽に触れる機会が泣かなくて欲求不満気味!!(笑)
この夏も恒例の情熱大陸もサマソニも良いのがこなくてチケットとってません・・・!!
今年は僕にとっては音楽のハズレ年かも・・・!!(笑)
by yosshu0715 (2014-06-24 06:31) 

JUN1026

ヨッシュさん、コメントありがとうございます。

そうですねェ。みんな示し合わせたように9801を買いましたねェ。仕事ではつい最近まで使っていましたが、流石にもう終ってしまいましたね。未だに、多くの○○や××の受付機の中身はキュウハチだったりします。

音楽はなにより楽しいですからね。自分で演奏するのもいいですが、聴くのも勉強になります。とくに「ワンコイン市民コンサート」は他にないプログラムで何かと参考になったり、勉強になったり、有り難いイベントです。
by JUN1026 (2014-06-24 08:43) 

moto_tip_sp

MSXに9801ですか私もその頃からです。MSXなく8801の方が持っている人は多かったのですが。その後Windows3.1になってからはWindows一本ですが。9801持っていた友人はWindowsではなくMacにいきました。そいつも音楽をやっていたのでMacの方がいいと言ってました。まあ私は音楽は聞く専門なので、パソコンは多数派に流れていきましたが(^^;;

音楽は楽しいですね。この夏も週末大阪城野音でたそがれコンサートがあるようなので、仕事帰りに夕涼みがてら行ってみたいと思います。
by moto_tip_sp (2014-06-24 18:03) 

JUN1026

モトさん、コメントありがとうございます。
私はプライベートでMSX、DOS機→Windows、それから仕事ではWin-PCやunix、汎用機にオフコン等々、私用ではMacとなんでもこいの状態になってしまいました(笑)。因に、アセンブラ、フォートランからコボルにベーシック、C言語にRPG、etc.・・・バイリンガルどころかマルチリンガルです(笑)。
音楽はいいですよ。聴くのも演るのも面白いし、こういうコンサートは非常に勉強にもなります。
by JUN1026 (2014-06-25 10:01) 

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