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The Old DS ~ Désirée Spéciale [日記・雑感]

以前訪れた嵯峨野竹の道で出逢ったのはちょっと旧いシトロエン。

 

CITROEN DS.JPG


ワタシはこのクルマが嫌いだ。
ワタシが生まれる前からうちにあるシトロエン。パパはちょっと旧いと言うけど、ママやパパが生まれてくる前からこの世に存在するらしい。

ワタシはこのクルマが嫌いだ。
学校のお友達のパパが乗っているクルマと全然違う。
DVDは観られないし、CDさえ聴けないんだよ。チューニングが合わないから、うまく聴こえないラジオがあるっきりなんておかしい。
カーナビも付いていないから、パパはすぐに迷子になってしまうから、ワタシが助手席でiPhoneでナビしてあげなきゃあいけない。
寒い朝は、なんだっけ、ダンキ? ダンキウンテンとか言って、エンジンをかけてから30分も走り出せないから、幼稚園や小学校に送ってってもらうのに何度遅刻しちゃったか分からない。
だからと言って暑い日は、時々お休みさせてあげないといけないとか言って、いっつもどこかに寄り道しちゃう。

ワタシはこのクルマが嫌いだ。
パパはこのクルマの事を"女神"だとか"年老いた愛犬"だとか呼ぶけど、犬のように忠実じゃあなさそうだし、女神っていうほど神々しさや優美さはないと思う。"年老いた"っていうのだけが当たってる。お顔だってそんなにかわいい訳じゃないのに、パパは家族と同じくらい愛おしいって言う。ママやアンナと同じくらい大切だって言う。
フランスのなんとかいう大統領も乗っていたとか、当時の映画にもいっぱい出て来るとか言われても、そんな昔の事はワタシには分からない。

最初ママのパパ、ワタシのペペが乗っていたのをわざわざ日本まで運んで来たフランス製の十分に旧いクルマ。
以前パパに、どうしてママと結婚したのって訊いたら、ママと結婚したら"デ・エス"も一緒にくれてやるってペペが言ったんですって。ママには内緒って言ってたけど、 どうしてもこの"デ・エス"が欲しかったんだって。ちょっと酷くない!? なんだかママがかわいそうだよ。そんなことだからママにリコンされたんだと思う。
それでワタシはママと暮らしているけど、パパは今も"デ・エス"と一緒にいる。
ママは、パパには"déesse"がついていないといけないからって笑っているけど、それってどういうこと?
ペペとSkypeでお話ししたら、"デ・エス"を大事にしているならそれでいいって笑ってた。オトナの考えてることはいたいけな12歳の少女には全然分からないわ。

そう、まったくもって理解不能だわ。
ちょっと夕陽を観に行って来ると言ったっきり、ワタシをおばぁちゃまに預けたっきりで、昨夜はとうとう帰って来なかった。
そりゃあ、おばぁちゃまが一番ワタシに優しいし、大好きだし、ママとパパがなかよくしてくれるのは嬉しいけど、こんなかわいい娘を置き去りにして朝帰りなんて信じられない。ワタシだってお年頃なんだから、少し気を遣ってほしいわ。

えッ、ナニ? 海に沈んで行く夕陽がキレイだったって!?
そんなのきれいに決まってるじゃん。だったらどうしてワタシも連れてってくれなかったの?

パパとママ、今も時々二人っきりで逢っているのは知っている。それなら前みたいに一緒に暮らせばいいのに。オトナって、複雑で面倒くさいと思う。
前みたいにパパとママ、それにワタシ、一緒に暮らしたら・・・。そうだわ。そうしたら、この"デ・エス"とも毎日一緒。

ワタシが生まれて初めて乗ったのもこのクルマ。病院からおうちまで帰って来たのが最初。それから、色んな所へお出掛けする時もこのクルマ。幼稚園では、男の子たちが"へんなクルマがきたァ"ってタイヘンだった。

ママが生まれた日にペペが買って来たという旧いシトロエン。
ワタシには何も見えないけれど、ペペの想い出がいっぱい詰まっているらしいトランク。随分汚れてペッタンコになっているけど、ママのいい匂いが染み付いているシート。亡くなったメメの想い出もまだ残っているって言ってた。ワタシの12年の想い出も負けないくらいあるんだわ。
ハイドロなんとかとか半自動トランスなんとかとか分からない言葉ばっか使うけど、パパが愛おしいというのはそうした目に見えないメモリーズたちなのかも知れない。だから、CDもDVDもいらないんだ、きっと。このクルマにオンガクはいらない、このクルマが語りかけて来るっていつも言ってる。

ワタシは、本当はこのクルマが大好きだ。
パパみたいに"Désirée Spéciale"とまでは思わないけれど、特別な存在であることは間違いないと思う。
ギャレッジで暖気運転している間にパパと、ママには言えない内緒のお話しをしているの。"デ・エス"を休ませてあげている時はパパとアイスを食べたりお茶したり。カフェでちょっとオトナなひと時を過ごせる、ママには内緒の時間。パパとワタシと"デ・エス"の想い出。パパとワタシと"デ・エス"の秘密のメモリーズ。

前みたく、毎日このクルマで学校まで送ってほしいな。パパにおねだりしてみる。

それはママに相談だってパパが笑った。アンナがこのクルマに似合うようなレディに育てば一緒に暮らせるんじゃないかと笑う。

なんだか、少し、腹がたつ。

着きましたよ、お嬢さんってパパがドアを開けてくれる。

ここってば小学校じゃん。ワタシはもう中学生になったんだよォ。
ああ、今朝もまた遅刻だ。

(つづく)


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コメント 2

yosshu0715

女子中学生のJUNさんを脳内再生しながら読ませて頂きました!!(笑)

僕も古い車は好きですが、このタイプのシトロエンは実物見たことないです!!(笑)
出会った場所といい、ホントに貴重な出会いでしたね!!(笑)

これもJUNさんの早起きの賜物!!(笑)
ホントに早起きは三文の徳ですね!!(笑)
by yosshu0715 (2012-11-05 13:25) 

JUN1026

ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
女子中学生ですか? "JUN1026"の実体がめっちゃオッサンであることを知っておられる方にはツライでしょうね(笑)。
私の大好物は1960年代から1970年代の欧州車。見ている分にはいいけれど、所有すると地獄を見てしまう、恐ろしいけど魅力的なクルマ達。
若い頃は私もそうしたクルマばかり乗っていたのですが、家庭を持つと奥様の意向優先で国産ワゴン車になってしまいます。大阪市内は駐車料金もお高いし、2〜3台持てるほどの余裕もなく、ファミリーカーだけに留めて、独りで楽しむのは専ら自転車だけ(泣)。
旧いクルマを楽しめるほどの余裕が欲しいですね。
by JUN1026 (2012-11-05 23:38) 

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