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蒐集と情熱と執着 その1 [日記・雑感]

iPhoneやiPadを使い出してから、音楽だけでなく書籍や動画まで電子化されたモノを手軽に持ち歩けるようになって、CDや紙媒体の書籍をあまり買わなくなってしまった。音楽や書籍はiPhone以前のPalmやCLIEの頃から電子媒体の比率が高くなっていたが、映画までダウンロードで済ませられるようになると、街のお店でそういったモノを買う頻度がかなり少なくなった。
いや、電子化されていない分であっても、インターネットを通じてお買い物。大概のモノは「ポチッ!!」で済ませられる。
持って帰れないほど嵩張るというわけではない。それほど重いわけでもない。
リアル・ショップを巡っている時間がない。店舗の書棚やCDラックからお目当ての品を探し出すのが面倒・・・なのかも知れない。

CDや紙媒体書籍には電子化された物と違う魅力がある。CDのジャケットに魅入ったり、ライナーノーツを読むのも楽しい。帯や巻末の解説も味わいがある。
CDショップや本屋さんでブラブラしながら、"ジャケ買い"したり、装釘の美しさだけで衝動買いしたり・・・。それを部屋のラックに並べて、ぼんやりと眺めているだけでも悦に入れたりしたものだったが・・・。

新譜や新刊でそれほど興味を惹くモノが少なくなったというのもあるかもしれない。
若い頃なら聴き散し、読み散し、大量のレコードと多数の書籍に埋もれて喜んでいられたはず。

そう、少年期ならそれだけの体力もあるのだから、広く浅く自分の好みにフィットするモノを探し求めて、聴き散し読み散らせばいい。壮年期なら財力に任せて、膨大なコレクションに埋もれることで至福の時を感じていればいい。

しかしもう、その時期は過ぎてしまった・・・ような気がする。
中年ならば太っていてもそれなりの貫禄と認められるかも知れないが、初老となっては適度に枯れなければならない。
いつまでもアレが欲しい、コレも欲しいと欲張っているわけにはいかない。それはなにも音楽や書籍だけには限らない。

絶賛ダイエット中ではあるが、食欲は胃袋(オナカ)を満たす、知識欲は脳(アタマ)を満たす、となると、物欲とはココロの隙間を補おうという行為なのかも知れない。
お腹が空くから何かを食べたい。判らないことがあるから調べてみたい。なんとはなしに満たされないという感情がショッピング・・・「ポチッ!!」に奔らせる・・・ってことではないか。

数多くコレクションし出すと、集めることが目的となって、ひとつひとつに対する愛着は多少なりとも薄れてしまったりもする。
今話題になっている怪し気なネット・ゲームのようにコンプリートすることが主になってしまったら、それこそ物欲ですらなくなって収集欲、モノに対する情熱が飛び火して厄介な類焼と変わってしまう。
まァ、ラックに「○○全集」とかが整然と並んでいたらカッコいいんだけど、ねッ。読めへんし、聴かへんし。

集めないといけないという、"焦燥感"というか"強迫観念"がココロの隙間に付け入ってくるのをコレクションの壁で塞ぐ。コレを収集"壁(へき)"と呼ぶのだよ。解るかなァ。壁が厚くなればなるほど、かえって強迫感は高まる・・・ように思える。そして更に壁を厚くしようと収集を繰り返して収拾がつかなくなる。

仏教では「少欲知足」、"欲を少なくして足りることを知る"ことが大事だという。「腹七分目で満腹」というのもオカシな表現だが、必要以上は無駄と知る。煩悩を捨て去るなんて常人に出来ることでないし、余裕と言うか、必要な無駄というのもあるかと思う。"ガマン"ととるか、"ムダ"と考えるか、やっぱり難しいか?

「枯れる」といっても、衰退というわけではない。
食餌は少なくしても、音楽を聴く時間、本を読む時間を減らしはしない。
若い頃なら広く浅く色んなジャンルの多くの作品を手に取っていたのを、狭く深く聴き込み、読み込む。
これ以上間口を拡げると収拾がつかない。間口を狭くして、その分奥行きを大きく取る。
好みの楽曲を繰り返し聴いて、それこそ暗譜出来るほど、なんならフルスコア書き起こせるくらいにリピートする。好みの読み物も繰り返し読み解き、原文で暗唱出来るほどリピートする。
どこに惹かれるのか、何ゆえココロを揺さぶられるのか、感動の源泉を探るのがその作品に対する愛情。フェティッシュにシャブリ尽くすと言うと怪し気だけど、アナリーゼの対象はクラシック音楽だけではないのである。

足りるを知って、身の丈に合ったモノを持てる程度に所有する。手からこぼれ落ちるならあえて拾いはしない。広く収集の対象とするのではなく、情熱を注ぎ込める物だけに留めて何故惹かれるのかを吟味する。執着の対象はモノそのものではなく、その魅力の源泉。
身の回りのモノたちはある意味自分を映す鏡。本当に愛せるモノだけにすることで自分自身が見えて来る・・・ような気がする。

なぜこんなことを考えるようになったかは次回「その2」で。


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コメント 4

NO NAME

いつもながら、素晴らしい文章力ですね〜
次の展開が楽しみ!♪( ´▽`)

by NO NAME (2012-06-16 19:00) 

JUN1026

NO NAMEさん、コメントありがとうございます。
お褒め頂いても何も差し上げられません。おだてられても、木登りは出来ません(笑)。
ご期待頂くと、プレッシャー大(!)ですが、自分の"想い"を綴るのが当ブログの趣旨。
筆が遅い(指が遅い?)のが問題ですが、ご期待に沿える頑張ります。
by JUN1026 (2012-06-16 22:54) 

Fuku_P

また名前を入れ忘れてしまいました^^;
by Fuku_P (2012-06-17 00:36) 

JUN1026

Fuku_Pさん、そうではないかと思っておりました。
by JUN1026 (2012-06-17 08:51) 

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