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ハノマンの紅の旅?! [音楽のこと]

芸術の秋到来で、ここんとこ、ゲージュツ三昧。
今日は、『2018年インドネシア伝統芸術公演:ハノマンの紅の旅』を観覧するため、箕面市立箕面市民会館グリーンホールに向かいます。
インドネシアハノマン

常日頃、クロード・ドビュッシーがどーした、フランス近代芸術がこーしたと能書きしているワタシ。ナニがどうしてインドネシア

話せばちょっと面倒ながら、縁あってジャワ・ガムランを始めたワタシ。
月に一度大阪大学豊中キャンパスで催されるガムランのワークショップ「日曜ガムラン」に通ううち、そのワークショップを主催されるジャワ・ガムラン・グループDharma Budaya(ダルマ・ブダヤ)」が定期演奏される阪大の大学祭に参加させて頂くことになって、この春の『いちょう祭』にも出演。その際に、膝を並べて演奏したのがインドネシアからの留学生さんたち。
彼らから、秋にイベントがあって・・・とフライヤーを渡されたのが、在日インドネシア留学生協会大阪・奈良支部(PPI ON)が主催するこのイベント。

んン!? 09月22日?! この日は、ピリオド楽器を使ったモーツァルトの室内楽のコンサートがあって・・・。

・・・と、やくさむこと、暫し。

・・・が、その後、Dharma Budayaもそのイベントに賛助協力されると知り、そちらのメンバーからもお誘いを受け、それならばと。
モーツァルトよりダルマ・ブダヤ 、ピリオドよりガムランでしょ?!

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イベントは、12h00受付、12h30開場、13h00開演で、入場無料ながら、事前予約が必要とのこと。
Webサイトから予約は済ませてあるが、留学生さん主催の伝統芸能と言われても・・・、さて、何を観せてくれるんでしょう。Dharma Budayaがご出演されるのだから、それほどいい加減なものでは無いはず・・・なのだが・・・。
日本インドネシア国交樹立60周年記念だとか。カタッ苦しい、大層なイベントになるんでしょうか。

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12h00にホールに着くと、まだ閑散とした様子。ダイジョウブなのかしらン?!
受付に案内されて、名前を告げる。
予約が確認されて、来場記念品・・・、伝統の人形劇ワヤン・クリで使う人形を象ったキーホルダー、バティック染めに使うチャンテインをキーホルダーにしたもの、スマートフォンが入る程度の大きさの(恐らく)伝統技法で染められた布で作られた巾着袋のうち、何れかおひとつと言われ、これはやくさむことなく、ワヤン・クリ。
それを、プログラム・パンフレットとともに受け取って。
そうこうするうち、開場間際になって、オーディエンスも三々五々と詰め掛ける。

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12h30、開場。
要予約ながら、指定席ではなく、決められた区画内なら自由となる半指定席? で、オケ・ピットのコンダクター・ポディウムが置かれる・・・であろう位置に陣取り、緞帳の下りたステージに眼を向けると、その幕前の上手側舞台袖には見慣れた青銅製の楽器が既にスタンバイ。大きな銅鑼、ゴン・アグンの前には型通りお花が手向けられて、他の楽器は舞台中央に向かって整然と並べられている。

13h00の少し前。ガムラン楽器の前に、見慣れたお顔が幾つも、・・・9つ並んでご登場。Dharm Budayaのメンバーはどうやら、そこで板付きの出突っ張りとなるご様子。
反対側、下手の黒御簾からは若い男女・・・今回のMCを担当する学生さん、Monica Irisa ClaraさんとBunai Rusohくんが登場し、モニカさんは阪大に通う留学生で、ルソウくんは阪大でインドネシア語を学ぶ日本人学生だそうで、その辿々しさ初々しさに思わず、ちょっとハラハラしちゃう?!
で、その後、式次第に則って、在大阪インドネシア共和国領事館の方や箕面市国際交流協会(でしたっけ?)の偉い人のご挨拶が続いたのですが、ワタクシ、昨夜の打ち上げで少々呑み食いし過ぎちゃって、軽く意識を失くしておりました。

さて、ようやくの本編は、『ハノマンの紅の旅』と題された、劇中に幾つものインドネシア伝統芸能をウィズインするミュージカル(?)。ここからは眠ってなんかいられません。

主人公となるハノマンは、インド神話やヒンドゥー教の聖典ともなっている叙事詩『ラーマーヤナ』などに登場するヴァナラ(猿族)の一人、風神ヴァーユの子ハヌマーンのことで、勇猛果敢な戦士でもあって、『ラーマーヤナ』を題材として演じられる影絵芝居(ワヤン・クリ)やその他芸能でも主役のラーマ王子を差し置いて一番人気のスーパーヒーロー。「西遊記」に登場する孫悟空のモデルともされる。
その獣神の旅・・・はいいのだけれど、「2015年インドネシア伝統芸術公演」で上演された『ハノマンの修行の旅』の続編であるらしい。が、それは観ていない。
というわけで、まずはステージ後方の巨きなスクリーンを使って、前回のダイジェストが上映される。

天界のルールを破ったためにそこから追放されてしまったハノマン。天界に戻る条件として、地上で善行を3つ施さないといけない。
ハノマンは魔力で人間の姿となり、インドネシア中を旅しながら、マリン・クンダンやサンクリアンなど、神話や民話に登場する有名人(?)と出逢い、彼らを助けるが、魔王ラーワナとの戦いに破れ命を落としてしまう。
その英雄的行為が認められ、新しい命を得る
・・・というのが、前のお話し。

新しい命を得て、正体を隠して地上に暮らしながら、天界へ戻るよすがを求める途中、ハノマンは一人の日本人女性と出逢う。
インドネシア文化を愛し、英雄ハノマンを慕うその女性はハナさん。
彼女に恋したハノマンは、自分の正体が知られぬように”ヒト”と名乗り、一緒にインドネシア文化・伝統芸能を観て回ろうと彼女を誘う・・・というのが今回の『紅の旅』の粗筋。
その二人連れの道すがらに出逢うインドネシア伝統芸能が、幕間劇・・・インテルメディオのように演じられるという構成。

緞帳が上がったオープニングに登場するのは、村人に扮した「ボーカル・グループ(VOCAL GROUP)」という名称(?)のグループ。在日インドネシア留学生協会大阪・奈良支部(PPI ON)に所属する若いメンバーで構成された現代調のポップなコーラスで、スクリーンに映し出されるインドネシアの大自然を背景に、その自然美を歌い上げる。

そこで、“ヒト”ことハヌマンの人間体(演:R. Yusrifar Kharisma Tirtaさん)とハナちゃん(演:Yamai Hirokoさん・可愛い♡)が出逢い、二人は旅を始める。

次に披露されるのは、「舞踊ジャイポンガン(JAIPONGAN DANCE)」。担当するのは「Sanggar Budaya(サンガルブダヤ)」、インドネシア伝統音楽を紹介するために結成されたPPI ON付属のユニット。
1961年に創られた伝統舞踊だそうで、西洋音楽が禁止されていた当時、それに反感を持つことなく、古来伝統の舞踊を現代に活かそうと生み出されたものであるらしい。
色鮮やかな衣装を身につけて、扇子を使って、しなやかに踊る女性4人。

挨拶はともかく、ここまで若い方ばかりで、なんか時節柄文化祭か学園祭、ちょっと学芸会(?)のようでもあり、同じ世代の息子を持つワタシとしても保護者な気分。

で、次々と伝統音楽や舞踊が披露されるのだが、その幕間、それぞれのコンテンツが幕内で準備中、”ヒト”とハナちゃんが移動するシーンに彩りを添えるのが、舞台袖に控えるジャワ・ガムラン・グループDharma Budaya」の演奏。それこそ、二人の旅をサポートする保護者・・・のようでもあるのだけれど、このガムラン・アンサンブルの中にも阪大に籍を置く日本人女子学生さんが2名おられるのですよ。
テンポや長さは自由自在、フレキシブルな特性を活かして、オペラで言うところのアントラクト、あるいは極々短いインテルメッツォ。
二人のセリフを邪魔しないよう控え目に演奏されて、耳に馴染んだその音色はいつも以上に安らぎを与えてくれて、思わず寝落ちしてしまいそう・・・になるが、すぐに次の演し物へと移る。

幕が上がって、そこに居並ぶのは西部ジャワの伝統楽器「アルンバ(ARUMBA)」。
竹で作られたマリンバの様な鍵盤打楽器。ご担当は、「Pasir Bintang(パシル・ビンタング)」というグループ。
青銅製の楽器を使うガムランに対して、竹製ではあるが、ガムラン同様に幾つか種類があるようで、それらによるアンサンブルは柔らかくて穏やかな楽音。インドネシア音楽の合間に、日本の童謡も演奏されて、「大阪クラシック最終公演」の直後だけに思わず一緒に口ずさんでしまったぞ。

眠気を覚ますかのような勇猛な舞踊は、バリ島北部に伝わる「舞踊タルナ・ジャヤ(TARUNA JAYA BALI DANCE)」。
ちょっと「聖闘士星矢」の黄金聖闘士的な(?)キンキラキンの衣装で、女性が男性的に踊るダイナミックなダンス。ダンサーは「バリ舞踊プリナマ・サリ(Purnama Sari)」主宰の田中千晶さん。目ヂカラに圧倒されてしまうゥ!!

ここで15分のインターミッション。

その休憩明け。
ヒト”とハナちゃんの道行きはまだまだ続いて、次に出逢うのが、「エスニックパーカッション(CDS ETHNIC PERCUSSION)」、男性6名のユニット。
エレクトリック・ドラムに太鼓、ボナンのような青銅製打楽器、パン・フルートのようなシンプルな笛、エレクトリック・ギターとよく見えないがスティールギターのような電気楽器。ジャワ・トラディショナルなフレーズにヴァイブス感の強いリズム・セッションで、アドリブを回すわ、オーディエンスに手拍子を要求するわ、ノリノリのキレキレッ!!

で、それに続くのが「舞踊ガンビョン・パンクル(GAMBYONG PANKUR JAVA DANCE)」。
先の演し物と違って、こちらはレセプションのためのダンスではんなりと嫋やか。
踊り手は富岡三智さんで、中央ジャワ・スラカルタの舞踊に伴奏として演じられるのは「Dharma Budaya」によるジャワ・ガムラン
歌まで入って、ゆったりまったり緩ゥい揺らぎが心地いい。

再び「エスニックパーカッション(CDS ETHNIC PERCUSSION)」がお賑やかに。
今度は肉感的なボディに艶やかな衣装を纏ったシンガー&ダンサーまで登場しての、昭和歌謡風なインドネシアン・ポップス
肉感的・・・というか、ド迫力(汗)。

インドネシア各地の伝統音楽を伴った舞踊の波状攻撃もヒートアップ。
大阪大学外国語学部インドネシア語専攻の学生さんたちによるフォークロアな劇中劇『ジャワ国縁起本編(THE STORY OF BABAD TANAH JAWA)』も入って、『紅の旅』もいよいよクライマックス。
舞踊や演奏を担当するのがそこそこ年嵩を踏んだ(?!)ヴェテラン揃いで、圧倒するような演技力・演奏力を見せつけるものだから、その間に挟まれた“ヒト”とハナちゃんの辿々しい初々しい立ち回りが一層イノセントに見えて、観ているだけでドキドキ・ハラハラ。結末が気になるが・・・。

やたらにハノマンの事に詳しい”ヒト”。それを訝しがるハナちゃん。
天界に戻るか、ハナちゃんの側に留まるか、決して正体を明かすわけにもいかず苦悶するハノマン=“ヒト”。
そして、その行く手を阻む影ひとつ。

ステージの上ではインドネシア伝統武術プンチャク・シラット(PENCAK SILAT)」の勇猛な演戯が披露されて、客席後方からハノマンに呼び掛けるのは、彼に殺された魔王ラーワナの息子インドラジット(演:Filemon Jalu Nusantara P.さん)。半裸体の大男。父の仇を討たんがため、”ヒト”=ハノマンの前に立ち開かる。
おめおめと討たれる訳にもいかないハノマンは白猿の正体を現し、それを迎え撃つ。
魔力と魔力、武力に武力が拮抗し、戦いは一進一退。それを打ち破るべく、インドラジットの渾身の一撃がハノマン目掛けて放たれる!!!!
とその時、身を挺してハノマンを庇ったのはハナちゃん。哀れにも、可惜若い命を、ハノマンの腕の中で散らしてしまう。
天界に向かって命乞いをするハノマン。天界の応えは二者選択。
ハナちゃんを復活させて、ハノマンが天界に戻るか。ハナちゃんを生き返らせる代わりに、二人が出逢ってからの記憶を消し、ハノマンはそのまま”ヒト”として生きるか。
あくまで、“ヒト”=ハノマンであることを知られてはいけないって訳ですな。
デビルマン的な・・・?! ♫ ダァレも知らない 知られちゃいけェない ♫ みたいな・・・。

エピローグは「音楽詩(MUSIC POETRY)」。PPI ONからFitria AyuningtyasさんとDendi Krisna Nugrahaさん。フォークギターの弾き語りと詩の朗読。その歌詞は、インドネシアの有名な詩人、Sapardii Djoko Damono(サバルディ・ジョコ・ダモノ)さんによるものだとか。叙情的で印象的。

かくして、“ヒト”としてなおも彷徨うハノマン。再び彼と出逢う、彼を知らないハナちゃん。
旅は続く・・・。

15分の休憩を挟んで、これだけのコンテンツ、これだけのパフォーマンスを大放出の約3時間。飽きるどころか、観入ってしまいました。
母国を遠く離れて、慣れない日本語の台詞を覚え、歌や伝統的な踊りの振り付けをお浚いし、不慣れなステージに立って、大勢の観客の注視を受けて、間違わないように演じ、これだけのイベントを盛り立てるのですから、共演のヴェテランさん達はともかく、在日インドネシア留学生協会大阪・奈良支部の年若い学生さんたちには殊の外ご苦労だった事でしょう。勉学の傍ら、差して練習時間もなかったのではないでしょうか。

でも、カーテンコールに並んだ出演者の貌は何れも晴れやかで、楽しんで演じていたのが感じられました。
学芸会を観るおとーさんな気分にもなり、ハラハラ、ドキドキはしましたが、楽しませて頂きました。ちょっとだけ、インドネシア通になったような気がします。
ワタシもガムラン、ガンバらな・・・!?

明日は知的冒険、京都でPicasso、です。

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