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星のさざめき 追加公演 [音楽のこと]

先週と二週続きで「ワンコイン市民コンサート」となるが、今日は会場を新大阪駅にほど近い、ベーゼンドルファーのショールーム、B-tech Japan Osakaに移した「Ad Hoc スペシャルコンサート沼沢淑音ピアノリサイタル 星のさざめき」。

ンン?! デジャビュ????

既視感も止むなしなのは、3週間前に行われた「沼沢淑音ピアノリサイタル」(→記事参照)の追加公演であるから。会場となるB-techのスタジオが広くないので、限定30名様限りの特別公演だったが、観覧希望者が多かったとのことで3週間後にアディション。
同じ会場で、同じ演奏者で、同じピアノで、同じプログラムの特別の特別。
その超スペシャル感に花を添えるピアノは、もちろん、1989年製Bösendorfer Model290 Imperialで、弦長290㎝、C0〜C8の97キー・完全8オクターヴ、ベーゼンドルファーが誇る堂々のフラグシップモデル。

プログラムもそのまま、
エドヴァルド・グリーグ バラード 作品24
アナトーリィ・リャードフ
前奏曲 ニ短調
ニコライ・メトネル
おとぎ話 作品20-1 
アレクサンドル・スクリャービン
ピアノソナタ 第2番 『幻想』 嬰ト短調 作品19
フレデリック・ショパン
ピアノソナタ 第3番 ロ短調 作品58
ガブリエル・フォーレ
夜想曲 第1番 変ホ短調 作品33-1同 第2番 ロ長調 作品33-2
なのだけど、前回の反省(があればなのだけど)を踏まえて、その表現は変わる・・・かどうかが今日の聴きどころ。いや、変化が無ければツマラナイ。二度目となれば、親密度合いも変わって、ヨシトくんとインペリアルのシンクロ率も高まるはず。三週間分の伸び代を見せて頂こう・・・とちょっとイジワルにハードルを高めに設定?!

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開場、開演の時間も変わらず、15:00、15:30。
自宅から徒歩10分ほどの会場にブラブラと辿り着いたのが14:40ごろ。実行委員会事務局代表の萩原先生や淑音さんにご挨拶した後はお宝の物色・・・というか目の保養、耳の贅沢。
前回訪れた時とレイアウトこそ違うが、ちょっと古いBösendorferたちとそれに列するBechstein1台。1908年物のそれは弦長がおよそ190㎝で85鍵とちょっと小さくて、譜面台や脚の意匠も如何にも年代物らしくて、可愛いのだけれど、非売品とのこと。小さいながらも、音の伸びが良くて、深くてリッチなサウンド。
かのクロード・ドビュッシーがエンマやその子供達と暮らした部屋には3台のピアノ。うち1台がBechsteinのアップライトであったとか。そして、ドビュッシーが「ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ」と言ったとか言ってないとか・・・。大いにそそられるが、グランドピアノでは、小さいと言いながらも、今の我が家には収まらないわな。
傍らでは1890年代物のBösendorferが修復中。お仕事の邪魔をするつもりはないのだけれど、ついつい興味本位で修復法やチューニングについて尋ねてしまう。

・・・と、そうこうするうちに開場時間。
ゲネプロに立ち会っておられた萩原先生が開口一番、「先日は3割の演奏で、今日は9割」。3倍増しなら、否が応でもハードルが上がって、棒高跳び並みの高さ?!

開演時間。衣装に着替えた淑音さんが限定30名さまのオーディエンスに迎え入れられて、前回とほぼほぼ同じコメントから追加公演の始まり。

・・・っと、デジャヴュ感が高い追加公演なのだけど、グリーグバラード 作品24」、その演奏が始まった最初の音で、その既視感は霧散した。

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Imperial
の大きなボディ全体が響いているような、長い弦長が齎らす深く濃くリッチな音色はそのままに、それがさらに厚みを増したような。前回以上に渾身のプレイではあるのだろうが、単にチカラが入ったというわけではなく、パーカッシヴでノリノリというのとも違う。 抑えるべきところは抑えられて、やや陰鬱で幻想的なノルウェイ・フォークロアの曲想を壊すことなく、放縦な叙唱を歌い上げる。
前回との違いを探るべく耳を欹てるまでもなく、ボディの"鳴り"に加えて、その内側にある多くのワイヤーの"うなり"まで聴こえてくる。ダイナミックレンジも広がって、より表情が豊かになったような。
音量としてはさほどに違いは感じないのだけれど、ほぼ完全ユニゾンで連弾しているかのような厚み。密かにエレクトリック化されてアンプを通してステレオ出力しているのではないかと思うほど。電気ドーピング疑惑? 2手2台?3割が9割になったということは、2手3台の独りトリオ? ・・・と感じさせるほどの力量。

続く小品でも印象は変わらず。より大胆に繊細に、ダイナミックに演奏する淑音さんのプレイに応えてImperialが朗々と歌う。まさに、フェアリーテイル・ライクでファンタジックで、幻惑されてしまうそうな気さえする。

限定30名さまの聴衆のうち淑音さんとImperialのコラボレーションに魅了されたリピーターが、ワタシを含めて5〜6名もいて、その全員が前回終演後すぐに追加公演の予約をしたという熱烈っぷり。それにインスパイアされて淑音さんが一層熱演するのは分かるが、3割が9割になったのには他の理由もあるはず。

インターミッションとなって、淑音さんとImperialのパフォーマンスを高めた、3人目の主役(?)が登場。それはペイジ・ターンナーとして脇についた萩原先生・・・ではなく、先生ももちろん淑音さんをそそのかせたり脅したり(?!)すかしたり(!?)されたのでしょうが、ピアニストとピアノ、両方に魔法(?)を施した影の主役、裏の女王様(!?)・・・はピアノ・チューナーさん。
ピアニストとピアノがベストマッチするよう前回とはチューニングを変えた、変えて頂いた・・・と、終演後に淑音さんから伺った。

時間が許せば、何をどう変えたのか、チューナーさんにもインタヴュウさせて頂きたかったところではあるが、タネアカシされてしまうとそれは魔術、奇術になってしまうから、次の機会まで「魔法」として取っておきましょう。

ピアニストとピアノは一期一会で、他の楽器と違って、会場入りしてピアノと対面してから音作り。そのピアノの持つスペックとその会場の音響を鑑みて、ベストな音を探るのだけど、それを手助けするのが調律師。
演奏家が楽器の持つ最良の音を引き出すべく持てる技量を駆使するなら、調律師はその双方がより良い関係になるようにピアノを躾けるのがお仕事。何をどうモディファイしたのか、専門的なことは分からないが、 通訳となってピアニストとピアノの対話を扶けつつ、淑音さんを鼓舞して、Imperialをブーストさせちゃう、「魔法」・・・としか言いようのない技巧。前回と今回で、そのチューニングの妙を感知出来て、それだけでも追加公演まで足を運んだ甲斐があったというもの。もちろん、その期待を裏切らず、前回以上のパフォーマンスを魅せる淑音さんとそれに呼応するImperialも超お値打ち。

星のさざめき』・・・作曲家たちが見上げた星々を再現するに止まらず、チューナーとピアニストとピアノが三位一体、新たな宇宙を創造してしまった・・・と言っても、今回は大袈裟には当たらないンじゃないかしらン。ピアニスト、沼沢淑音さんの指が鍵盤上を踊るにつれて湧き上がるハーモニーは、譜面で表される和音以上に、キラ星のような倍音を生み出して、なんか、もう、ねェ、グリーグもスクリャービンもショパンも関係なくて、沼沢淑音Bösendorfer Model290 Imperial、そしてチューナーさんが作り出した宇宙のスーパーノヴァを目の当たりにしたようなインパクト。
ンン?! 超新星なら終わっちゃいますね。でも、輝度、明度を高めた新世紀が始まりそうな予兆。

ノヴァの暴走勢いが止まらなくて(?)、アンコールは前回同様のスクリャービンポエム 作品32グリーグ小人の行進」・・・に加えて、「ペール・ギュント」から『ソルヴェイグの歌』と「春に寄せて」のグリーグ2曲とシューマンの・・・なんでしたっけ。
なんか、まだまだ弾き足らないという感じでしたが、追加された3曲は前回と今回の2度に渡って来てくださったリピーターさんのために・・・ということでした。
とんでもない贅沢、耳の至福を味わった思い。

・・・ではあるが・・・、

不足を言えば、限定30名さまの贅沢はいいのだけれど、新しい宇宙の誕生に116.7392立法メートルのスタジオはあまりに手狭。それが広がる様を、大きなホールで実感したいんですけど・・・。大阪大学会館のステージに淑音さんの再演は、近い将来実現出来る、して頂ける・・・でしょうね。

その「本公演」のスケジュールは今年12月16日の「峯島望美ソプラノリサイタル」までフィックスしていて、来月は5周年記念特別公演。
イーゴリ・ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」と「春の祭典」がピアノ連弾で演奏される、「ワンコイン市民コンサート5周年特別公演:高橋悠治+青柳いづみこ『パリ1911-1913』」。よく知られた管弦楽ヴァージョンより先んじて、作曲者ストラヴィンスキークロード・ドビュッシー(!!!!)の手によって1913年にパリで披露されたというピアノ連弾版「春の祭典」。同様に、1911年のパリで初演された「ペトルーシュカ」。それが2017年、待兼山は大阪大学会館にて、高橋悠治さんと青柳いづみこさんの手で再現される。使用されるピアノは、Imperialの兄弟機、常設の1920年製Bösendorfer252
(高橋悠治青柳いづみこBösendorfer252=は美しい秩序となるのか、ディスハーモニーのカオスとなってしまうか。お・た・の・し・み。


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