邪なる者、横縞を纏う?! [日記・雑感]
秋〜春の定番がフーディ(hoodie、フーディッド・パーカー)なら、春〜秋のそれはバスク・シャツ、ブルターニュ・シャツ、セーラーTシャツ、マリンTシャツとも呼ばれるボーダー柄のボートネック・シャツ。
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ボーダーシャツというと、フランスとスペインにまたがるバスク地方の漁師が仕事着として愛用していたいわゆる「バスク・シャツ(Basque shirt)」と呼ばれるものだとか、「ブルターニュ・シャツ(Bretagne shirt)」と呼称されるフランス・ブルターニュ地方に伝わるものだとか、フランス海軍の水兵さんが海上で目立つようにと採用されたとか、発祥は諸説あるが、とにかく海の匂いがする、ボートネックで袖丈ちょっと短めのシャツ。
今や、本来の用途を離れ、ファッションとして定着し、海を離れた街中で年中着られる定番モノ。
ワタシがこれが好きなのだった。
基本形はボートネックで7分袖。白と紺とのコントラストが爽やかな海の男風・・・なのだけど、毎年1着は買い求めてしまうので、素材や色目、微妙にスタイルの異なる物をコレクションすることになる。去年は、ついに自転車用にサイクルジャージまでボーダー柄のものを買ってしまった。
一見シンプルなので、だらしなく着こなすと部屋着のようにも見えてしまう。(ちゃんとした)オシャレなオトナに見えないといけない。といって、仕事着然とするのもおかしいし、あまり気張り過ぎるのも逆効果。塩梅が難しい。
今年手に入れたそれは、ORCIVALのモノ。
1858年のフランスでのこと。政府からのお達しで海軍に属する船員は全員"よこしま"柄のシャツを着用することを義務付けられた。当時海軍の基地があったのがブルターニュ(Bretagne)で、それはブルターニュ・シャツ、あるいはブルトン・シャツ(bretons)と呼ばれるようになった・・・のだから、フレンチ・ブランド製が由緒正しい。
1939年にリヨンで開業したORCIVALは、その後フランス海軍に制服としてマリンTシャツを提供することになり、それがやがて一般にも愛用されることとなった・・・っと。
工夫を凝らした、様々な素材やデザインがヴァリエーションとして存在する中、今回買ったのは、あえて半袖でポケット付きのもの。あえて柄をずらしたポケットが可愛いかなっと。
薄手の素材だと、子供っぽいし、それこそ部屋着っぽくなるので、ワーク・ウェアらしい、ちょっと厚手の生地がいい。同じ素材、オープンエンド(空紡糸)という糸で編まれた軽くて丈夫な生地で、ボーダー柄ではなく無地もあって、夏らしく真っ白のワントーン・コーデもいいかなと、白無地にも惹かれたのだけど、残念ながらレディス・サイズしか残っていなかった。
ボーダーは、グレー系とブルー系があって、より定番ぽいブルーを選ぶ。ホワイト/グレーもシックでいいのだが、日本人にはブルーが似合うし、若々しく見える。
それに、最近、こーいう可愛い系の衣装は息子さん(17)に横取りされる可能性がヒジョーに高い。上から下まで同じサイズで使い回しが出来る父と子であるし、まァ、取られても構わない。なんなら、親子でツイン・コーデでもいいのだけれど、それはイヤだと宣ううちのプリンス殿。
まァ、お揃いの格好をしなくても、ガンガン着回して、ガンガンお洗濯。そのためのワーク・ウェアなのだから。
ボーダーの着こなしで思い出させるのは、かのパブロ・ピカソこと本名パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ(Pablo Diego José Francisco de Paula Juan Nepomuceno María de los Remedios Crispiano de la Santísima Trinidad Ruiz Picasso 1881年10月25日 - 1973年04月08日)。
フランスで制作活動しながら地中海に臨む故郷に思いを馳せたのか、それとも彼のイデオロギーの表現としてなのか、単に楽チンだったからなのか、かの天才美術家はボーダー・シャツ(バスク・シャツ)のイメージ。
同じく、強烈な個性を放つ芸術家(?)の楳図かずお(1936年9月3日 - )。彼の場合は、赤白のボーダーで、ちょっと違う?!
映画の中、特にフランス映画にはバスク・シャツ、ブルターニュ・シャツが度々登場し、分けてもヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)の頃に多く見掛けたような。
その代表が、ジーン・セバーグ(Jean Seberg 1938年11月13日 - 1979年09月08日)。セシル・カットも印象的な、ボーイッシュなんだけどキュートでコケティッシュ。それでいて、どことなく知的でエレガント。時代を経てもチャーミングで、宝石のように輝く多面的な魅力。
アメリカ生まれの彼女が1959年公開のジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard 1930年12月03日 - )監督作品『勝手にしやがれ(原題:À bout de souffle、英題:Breathless)』で着ていた、ボートネックなんだけどちょっと襟元が詰まって、袖丈が5分くらいで、タイトなシルエットのボーダー・シャツ。そのショートカットと相まって、上半身だけ見ると男の子っぽいんだけど、全身だとプリーツスカートとトレンチコートで大人可愛いインプレッション。
一方、オフショットで着こなす、メンズ・サイズ、オーダーサイズでちょっとオフショルダー風。これもオーバーサイズなボトムスと合わせて、なんともセクシー。
映画界の一大革命、ヌーヴェルヴァーグは、文字どおりそれまでの古い体制を打破しようという運動。それが、男の仕事着とキュートな女優を結びつけたのかしらン? あのオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn 1929年05月04日 - 1993年01月20日)もボーダー・シャツでのポートレートを残している。
ボーダー(border)だけに時代に一線を画す・・・てか?!
ボーダー柄。10世紀まで遡れば、夜目にも目立つそれは英国ロンドン北部のボー・ダ・ボー刑務所で囚人に着せたのが始まりだとか。
もっと遡れば、旧約聖書に書かれた"二種の糸で織った衣服を身につけてはならない"と言う警句から、中世欧羅巴では犯罪者や異端者に強制的に着させていたのだとか。
border、ヘレティックなりプリズナーなり、ある意味境界線の向こう側にいる者たちの証し。
それがどういう経緯でフランス海軍の制服になったかは分からないが、ファッションとして広めたのは、かのココ・シャネル(Coco Chanel 1883年08月19日 - 1971年01月10日)。
1910年、彼女が27歳の折り、フランス領バスク、ラブール地方の都市ビアリッツで見掛けた水兵さんが着ていたボーダー・シャツを自らのコレクションに列したのが端緒となったとかなんとか。ココがパリの社交界で披露したビアリッツ・ルックをサロンで知り合ったピカソが面白がって、トレンドとなって、パリから全世界に伝播し、のちに定番化。
ついでだから、もうひとり可愛い女優さん。ちょっと時代を進めて1985年公開のフランス映画、クロード・ミレール(Claude Miller 1942年02月20日 - 2012年04月04日)監督作品『なまいきシャルロット(原題:L'Effrontée)』で主役を務めた13歳の生意気娘はシャルロット・ゲンズブール(Charlotte Gainsbourg 1971年07月21日 - )。セクシーにはまだまだ程遠いけれど、その分瑞々しくて、ジーンとはまた違った魅力で、存在感は見劣りしない。
海の男の仕事着でもあり、オシャレの定番アイテムでもあるボーダー・シャツ。夏らしいマリン・テイストでまとめるもよし、ちょっとひねってアクセサリー感覚で身につけるもよし。
オンスタイルは真夏でもスーツにネクタイ。ワタシに「クールビズ」なんてありません。その分、オフスタイルはラフでライトなものがいい。で、熱波の中をクルージングする夏はマリン風味のボーダー・アイテム。
で、とらさん(17)と二人ボーダーでいると、「とらちゃん(仮)はボーダーでカワイイけど、パパリンはよこしまって感じよね」と奥様。
"よこしま"・・・?! 横縞、それとも邪?
そう言えば僕、シャルロット好きだったなあ・・・!!(笑)
誘拐未遂事件の時は震撼しましたよ!!(笑)
今は知的でキツめのおばさんになってしまったけど!!(笑)
フランス人女性の知的なイメージにはすごくそそられるものがありますね!!(笑)
うちのポコさん☆もボーダー好きですけど、全然違う!!(笑)
なんでだろう!??(笑)
by yosshu0715 (2016-08-09 05:14)
ヨッシュさん、コメントありがとうございます。
フランス映画、それも古いのばかり観ているせいか、今時の女優さんはよく分かりません。アーティスト、ミュージシャンも同じです。
でも、旧い映画を今見直すと、見落としていたシーン、聞き逃していた台詞を発見して、結構新鮮なんです。音楽も同じで、今だからじっくり腰を据えて、しっかり聴けて、感慨ひとしお。
ボーダーはハマると抜け出せませんね。
たまに紅白のを着ると、楳図かずおだとか、ウォーリーだとか言われるのがシャクですが・・・(笑)
by JUN1026 (2016-08-09 19:21)