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美人とおしゃれ [散歩・散走]

今日もきょうとて京都のお庭散策と美術館巡りなのですが、本日のテーマは「美人とおしゃれ」(Wow!!)。
ワタシは無粋者ですから、何を以って美人とするのか、ナニがお洒落なのかは解らない。数値化、数式化出来ないそうした概念的な事柄には理解が及ばないのですが、(今更ですが)それを知ることが出来れば・・・というのが今日の目的。
実は、美人さんで眼の保養というのが裏テーマ!?。


梅雨の晴れ間・・・ということになるのでしょうか。朝から初夏のような陽射しが降る嵯峨野辺り。
梅、桃、桜から始まって、椿、躑躅、杜若に花菖蒲、紫陽花、そして睡蓮。
京都の社寺の境内に設えられたお庭の花がそれぞれに妍を競って華やかで、それらを縁取るように、頭上には青々と青もみじ、足元には苔蒸して、その向こうには若竹が天に向かって真っ直ぐに伸びて、京都がひときわ萌える季節。サクラやモミジの頃は(余所からの)人出が多過ぎて、それが若干途絶える今から祇園祭りまでの間が過し易くもあり、緑萌えて風薫る今が一番良い時候かも知れません。もう少しすると、暑うていてられしまへん。
洛内の繁華なところは(年中)ヒトが多くていてられしまへんよって、きょうの散歩は西郊、嵯峨野からスタートです。
嵯峨野・・・「野」であるそこは、かつては嵯峨天皇後嵯峨天皇の離宮があったり、貴人や文人などの山荘や神社仏閣が点在したり、都の外にあって、竹林に隔てられた禁野(しめの)、最初期の保護地でもあったのでしょう。今以て風光明媚で、嵐山も近く、時期によっては観光客が押し寄せて、それこそヒトが多てかなわしまへん名所。

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竹の秋に頭を出した竹の子がワタシより丈高い若竹と成った竹林の道。異界への緑のトンネルめいたそこを抜け、水面いっぱいにハスが繁茂するのは御髪神社前の小倉池
野宮神社二尊院檀林寺の前を通り過ぎ、奥嵯峨祇王寺
平家物語』に書かれる悲恋の白拍子、祇王とその母、刀自、妹の祇女がご出家されて結んだとされる庵。のちに恋敵(?)の仏御前も加わって、女性四人が念仏三昧の余生を過ごしたところ。
その当時の此処は法然上人の門弟、念仏房良鎮によって創建された往生院の境内で、彼女たちが寄り添うように起居したのは借り暮らしの小さな草庵。時が移るとともに荒廃し、明治に入ってその庵共々廃寺、残された墓と仏像は旧地頭の大覚寺によって保管されたのち明治の中頃になって祇王寺として再興、今に遺る建物はその際に別の場所から移築されたもの。
楓(青もみじ)と苔が一面を緑に彩って、奥嵯峨にひときわ静かな結界を為すようで。
ワタシの眼には一様に映る苔も、数種類が適当に配置されてコントラストを作っているようで、傍らにはその標本サンプルも展示される。

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それとは別に区切られた坪庭。
水琴窟とつくばいには其々お花が浮かべられて、その奥に在るのは何方かの別荘であった建物を移築し草庵風に仕立てたもので、仏間が作られ、仏壇にはご本尊となる大日如来祇王祇女母刀自仏御前平清盛の木像が安置される。その奥、控えの間には丸い吉野窓が切られて、境内の緑葉を通って差し込む日差しが障子に色とりどりの色彩を映し出すことから「虹の窓」とも呼ばれているとか。
今となっては女性四人の慎ましやかな暮らしぶりを偲ぶことは叶いませんが、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」・・・『平家物語』を繙いてみようかという気にはなりますね。

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再び竹林の道を辿って大堰川、渡月橋近く。福田美術館(福美)へ向かいます。
そこで今開催中なのが『美人のすべてリターンズ』。
昨年初めに同館のオープニング企画として開催されながら、会期半ばで閉幕を余儀無くされた『美人のすべて』。
今年早くに再開を予定していたものを、それも中止となって、三度目の正直?! 拠って、『リターンズ』。
リターンとはいえ、「見返り美人図」は出展されず、「マリリン・モンロー ノーリターン」も関係あらへん?!
福美がコレクションする上村松園の作品を中心に、ほぼ同時代に描かれた近代日本画から美人さんが選抜される。会期途中に入れ替えがあるものの、総数105点のうち、前期70点、後期69点がそれぞれ展示され、さらに「リターン」とあって、竹久夢二作品が特別に追加される。
夏の庭の花もいいけれど、たまには美人画で眼の保養。あッ、「美人」とは何かという学術的研究(?)でしたね。

まだ真新しさが際立つ福田美術館
日本絵画を中心として約1,500点の作品を所蔵し、その中から美人画をまるっと公開展示する『美人のすべて(リターンズ)』。3つある展示室を全部使って、約70点の作品が展示される。

昨今のコンプライアンス的に、「美人画(美人絵)」とか「女絵」とかどうなのよ・・・と思ってしまうが、古くからジャンルとして確立しちゃっているのですから、仕方がない・・・でしょうか。今更、単にポートレイトと呼ぶのもおかしいし。
今回展示される105点は何れ劣らず、眉目秀麗な美人さん。
なのですが、女性ばかりではなく、山川秀峰作「振袖物語」は明暦の大火・・・俗に言う振袖火事の原因(諸説あります)とされるお小姓さんがモデル。その目線、タカラヅカの男役・・・っぽい?! 現役当時の天海祐希か?
振袖から覗く二の腕に朱色も鮮やかな刺青を施すのは、伊東深水描くところの弁天小僧菊之助。先々々代くらいでしょうか?
剃髪に僧衣を纏うのは若い僧侶・・・かな。
女性には違いないのでしょうが、松園さんが描いた「雪女」は近松門左衛門作『雪女五枚羽子板』の一場面からで、これまで版画作品として知られていた、その原画が”発見”されたとして初公開となるもの。
他にも芝居のワンシーンから描かれたものは、「役者絵」なのか「美人絵」なのか、何れにしても美形揃いで。
異形のオンナが初公開なら、池田蕉園作「もの詣で」は第1回⽂展で3等賞を受賞した後永らく行方知れずとなっていた「幻の作品」で、こちらも”発見”されて114年振りのお披露目。こちらは初々しい乙女(と従者)。

葛飾北斎歌川国貞歌川広重などの作品も数点加わるが、ほとんどが明治維新後の近代日本画で、上村松園伊藤小坡池田蕉園鏑木清方伊東深水、などなどの手になる美人さん。
それぞれ筆致は異なるものの、「大和絵」や「錦絵」からの伝統を引き継ぐように瓜実顔に引目鉤鼻に近しいようで、それよりリアルで近代型美人?
時代的にまだ、日本髪には簪櫛笄、晴れやかな着物姿ではあるが、「錦絵」的な八頭身の細身でもなく、それなりに肉感的で写実的。
何方もチャーミングと言うより、品位と知性を感じさせて、キュートなお貌立ちと言うのでしょうか、型通りのポーズではなく生活の中の所作、表情にも個性が見える。殊に、女流画家(松園さんと蕉園さん、小坡さん)の描く「美人画」はそうした仕草までなよやかな風で、当時最新流行となっていた装いでもあるらしい。生え際や襟足まで丹念に描かれ、きっちり結い上げられた髪型はそれぞれに当世風。白い肌はそのままに紅を差して、着物の柄や手にした扇子や団扇には季節の文様が描かれて。
背景を廃して人物だけを本質的に際立たせた作品もあれば、丹念に風景を書き加えた「風俗画」態もあって、「美人浴後図」とか「浴後美人図」(共に上村松園作)は肌も露わで・・・(Wow!!)。
和装ではあるものの、眉を落としてお歯黒を施すマダムの左手には指輪が光り、袂に糸玉を忍ばせてレース編みをされていたり、より若いマドモワゼルは四つ葉のクローバーをもてあそんだり、ハイカラなパラソル(洋傘)で陽射しを避けたり、モダンな拵えを写したモダンな美人画。
そうそう、この時代のマダムは眉を落としているのですが、それでも松園さんのお説に因ると「美人の決め手は眉」なのだとか。マスクで顔の下半分を隠す今、メイクの参考になるんじゃない? 目指せ、眉美人!!

2階パノラマギャラリーは竹久夢二作品が独占。
こちらも前期と後期で入れ替えがあって、ワタシが拝見出来たのは「女十題」とタイトルされる揃物の水彩画。シリーズ物でありながら描かれるテーマは全部異なって、その中に洋装で三つ編みの少女がいたのが新鮮で。

総じて、一瞬を切り取ってスタイリッシュな美しさとでもいうのでしょうか。旧い伝統的な様式美にモダンなテイストを加えた「近代美人画」。装いや所作まで含めた外見的愛らしさと相貌に表された品位と知性の優美さでもあるのでしょうね。
んン、見習って欲しいわ、誰にとは言えへんけど。

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美人さんに取り囲まれちゃって、気鬱も晴れたような気がします。お腹が空いちゃいましたね。
京都有数の観光スポットとはいえ今のご時世、オープンしている飲食店や土産店は少なくて、何食べよ、より何処が開いてる、という状況。
晴れやかで華やかな絵画を堪能した後ですから、ちょっとそれらしいランチを頂きましょう。おばんざい風なカフェ飯で。

お腹が満ちたところで、今日は時間がたっぷりあって、そこから岡崎へ移動。細見美術館を訪ねます。
こちらで開催中なのが「集う人々 - 描かれた江戸のおしゃれ」。
コロナ禍にあって外出もままならず、遊山に出掛けることも憚られる状況下、その気晴らしにということでしょうか。江戸や京都など流行・文化の発信地であった都市の様子を描いた名所図屛風遊楽図、反物を熱心に選ぶ女性を描いた葛飾北斎肉筆画の名品「五美人図」、様々な身分や立場のスタイルを示す「江戸風俗図巻」など、福田美術館のモダンな美人さんたちとはひと味違う、近世のファッショナブルなお洒落さん。

3つの展示室それぞれを、「第1章 名所に集う人々」、「第2章 男の出で立ち、女の着こなし」、「第3章 時世粧(いまようすがた)」と割り振って、絵画だけでなく蒔絵が施された工芸品なども加わって、屏風、提重、燭台、角盥、洋櫃、箱、徳利、盃、高杯、印籠など、総数36点。

第1章」に並ぶのは主に作者不詳の屏風絵で、祇園祭りの様子を描いたものや「洛外図」、「江戸名所図」、「奈良名所図」など、江戸期に作られたもの。
洛内、それも閉ざされたお邸で、気ままな外出も許されずに閉塞感のあった暮らしの慰めにと用いられたのか、日照りの折りや雪続きの時に頃良い時候を懐かしんだのか、錦雲棚引く洛外や名所を描いた巨大な風景画・・・というか、大き過ぎるガイド・マップ。それぞれが6曲2隻1双であったり、4曲1隻であったり。お手軽なハンディ・サイズは扇面図。木々や社寺の建物の合間には着飾った男女が大勢描き込まれて何処の名所も”密”なほどの賑わい。
それこそ桜や紅葉の頃にはそこへ出掛けたのでしょうか、金蒔絵が施された豪華な提重。まさか、タコ・ウインナーや卵焼きにオニギリということも無いでしょうし・・・。

第2章」も屏風絵や工芸品、それに江戸後期に作られた小袖など。「犬追い」や「観馬」、中野其玉描くところの「元禄踊り」などのイベント風景が屏風仕立てで、酒井抱一が描いた「松風と村雨」、葛飾北斎は「夜鷹」と「五美人図」は軸装される。

第3章」は “今様”として、蒔絵螺鈿が施された洋櫃や徳利、高杯とともに、南蛮人行列や遊楽図、江戸の風俗に職人尽図。高尾太夫のポートレイトは福美と異なる古典的な「美人画」。

多くが作者も知れず、傷みも有ったりはするのだけれど、江戸期の風俗を写し、その当時の”おしゃれ”を伝えてくれて、殊の外興味深く、見飽きないほど面白い。
松園さん描くところのはんなりしたお嬢さんも可愛いし、江戸期の小股が切れ上がった姐さんもいいのだけれど、まァ、昭和生まれのワタシ的には、VOGUEのスーパー・モデルさんみたく、身長170㎝前後で体重が50kg未満の所謂「サイズ・ゼロ」な美人さん、徒俣(すまた)切れあがるのが好みかなァ・・・なんてことを公表しちゃったら世界中から批難が届いちゃうかしら。

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あッ、ワンコ消しちゃった!!

細見美術館
を一番底まで降りた傍らにはカフェ・レストランのCafé CUBEが有って、折りに触れてエキシビションとコラボレーションするメニューが用意されるのだけど、今回は「琳派セット 〜特製抹茶どら焼き〜」なるものがあって・・・、”抹茶あんに求肥を挟んだどら焼きに、オリジナル小箱・紙袋がついたセットです。中村芳中仔犬」のデコレーションが愛らしいプレートでどうぞ。どら焼きは、神坂雪佳金魚玉図」の小箱に入れてお持ち帰りいただけます。”とのこと。
イートインもしくはテイクアウト出来るどら焼きなんだけど、テイクアウト用に小箱と紙袋まで用意されて、イートイン用プレートには粉砂糖で描いたデコレーション・イラストが添えられる。
映え狙いなのでしょうが、パッケージがウリとなるスイーツはちょっと珍しい? 今は何処もテイクアウトに注力されていますからねェ。
ワタシは、ポットで提供される紅茶とともにお腹に収めて帰りましたよ。

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