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花から花へ [散歩・散走]

「春分・桜始開」も過ぎて、春爛漫に百花繚乱。
では、春を代表するお花といえば?
先駆けとなるウメ?
上巳の節句もあって、モモ?
日本の花の代名詞だから、やっぱりサクラかな?
ナノハナ、ネモフィラ、ナデシコに、ツツジ、モクレン、ハナミズキ、シャクヤク、チューリップ、ヒヤシンス、アネモネ、et cetera。忘れちゃいけない、薔薇の花。
じゃあ、漢字で偏にと書くのは・・・?


椿ツバキつばき
植物学上の種としてはキク類ツツジ目ツバキ科ツバキ属ヤブツバキ。日本原産で、学名、英名もCamellia japonica(カメリア・ジャポニカ)。
古来から愛され、『日本書紀』にも記されて、『万葉集』にも椿を織り込んだ歌が九首もあり、茶道でも殊の外珍重されて「茶花の女王」とも呼ばれ、茶庭、露地庭になくてはならないお花。
交配が容易であるから観賞用として多く作出されて、一説には2,200もの園芸種があるのだとか。色目も白に紅、その中間のピンク色、さらには斑入りや絞りもあって、花弁の数も一重の5枚から八重咲き、千重咲きで、大きさも様々。

椿の花の特徴のひとつは、その最期。
梅やなどは花弁を一枚ずつ散らせ、他の植物では枯れて萎れても姿形を止めようとするのに対して、椿はいわゆる「落椿」。まだ枯れ萎れる前からポトリと花のまま落ちる・・・とされる。
散る、ではなく、落ちる。
そして、それは最期では無く、胚珠の中の胚嚢母細胞が胚嚢・卵細胞となる始まり。首が落ちるようで縁起が悪いなどと言うのはちょっと浅はか。
一見すると、花柄(かへい)か花托(かたく)より先がまるっとひとまとまりのまま落ちてるようでいて、ちょっとしたイリュージョン。のちに果実(種子)となる部分は(他の植物同様)しっかり花托に残している。
生物の使命は「種の保存と繁栄」。次の世代に命を繋いでいかないといけない。
受粉、受精が終わった途端に落とされる、捨てられちゃうのは花弁と雄蕊。
雌蕊は雌性生殖器官で、お花の中の女性性の核心にして、真の花の命。その中にはのちに種子となる胚珠を抱く子房があって、椿の場合受粉が終わった後、雌蕊とそれを守るための萼だけ残して、男性性な部分、花弁や雄蕊は惜しげも無く捨てちゃう。それらが基部で繋がってひとまとまりになっているから、丸ごと落ちるように見えてしまう。
少しでも、果実(種子)となる胚珠に養分、栄養を与えようという母性が勝るのでしょう。
受粉が終われば、花冠、花弁や雄蕊は不要。冠は捨てても鎧となる萼を纏って、雌蕊が種子を育む。女性というより母性。母は強し!!
ある種の昆虫類が交尾の後、メスがオスを食べちゃうのに近しいようで、食べるまでは至らないが、用が済んだら捨てちゃうの。
それも花びら一枚ずつなどとチマチマしたことはしないし、枯れて萎びたまま置いておくなどと未練がましいこともしないのね。断捨離よろしく、えいやと潔い。
花の命は短くて・・・などというけど、女性はお花は意外に強か。
女王蜂やら女王蟻、社会的なシステムを持つ種の中心は雌。お花もそれに近しくて、椿は特にそうしたシステムが効率的というか、メカニズムが効率優先にデザインされているのでしょう。
本来、種の中心は雌、女性があってこそ種が維持出来る・・・はず。
高等な種族になればなるほど、(その理りに抗うように)オスが威張り出して、何処ぞの(高等ぶってる)オッサンなんて女性卑下、女性を卑しめるようなことを言っちゃって、自身の立場まで危うくしちゃうわけでしょ?! 高等種族の中の下等な個体。
かくいうワタシは、全ての(若い)女性が好きですし、全ての(美しい)女性を尊敬しています(てへぺろ)。出来れば、身長が169±1㎝で、体重が・・・なんてことを言っちゃうと、奥様に放り出されちゃう、捨てられちゃう。ワタシの場合は、下等ではなく、下劣!?

余計な事ばっか言っていると、命が危うい・・・かも。そろそろ本題に入りましょう。

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避密しながらの街散歩。休日ともなると、きょうのお庭巡りやきょうのミュージアム巡りをしているわけですが、今日は繁華な街なかを避けて洛西の北寄り、きぬかけの路まで出掛けます。
宇多天皇が真夏に雪見をご所望されて衣笠山に絹を掛けたと伝わる故事。
白いシルクを雪に見立てて、別称をきぬかけ山。それに因んで、仁和寺から龍安寺を経由して金閣寺(鹿苑寺)へと至る道をきぬかけの路と称する。
その名の通り、シルク地のドレープみたく緩やかにカーブ、アップダウンする道沿いには市内とはいえ郊外の、山野辺の風情もあって、今は昔、平安から鎌倉、室町時代の権勢、隆盛の名残りをとどめ、歴代天皇の御陵があり、有数の寺社仏閣も人気の観光スポット。
そこにある美術館を訪ねるのですが、オープンは09h30。まだ随分と時間はあるので、ひとまず08h00開門となる龍安寺のお庭にお邪魔いたします。

大雲山 龍安寺は、開祖を細川勝元、開山を義天玄承とする臨済宗妙心寺派の境外塔頭寺院で、「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されている。
かつてこの地に在ったのは円融天皇の勅願寺であった円融寺。
天皇がご譲位されて朱雀院上皇となられ、ご出家されてからのお住まいでもあったところ。崩御されて円融院と追号されたあとは円融寺も衰退し、徳大寺実能の山荘となり、それを譲り受けたのが細川氏。
それがために応仁の乱でいの一番に焼失し、勝元の子、政元が再建、織田信長や豊臣秀吉らが寺領を寄進し、かつての隆盛を取り戻すも、その後の火災で主要伽藍を失っている。
仏殿は1981年の再建で、昭堂(開山堂)は1977年に再建、重要文化財となる方丈は塔頭の西源院方丈を移築したもので、他の伽藍や茶室なども殆どが再建や移築による。
石庭」とも呼ばれる方丈庭園が有名で、国の史跡及び特別名勝。エリザベスⅡ世女王とフィリップ殿下がご来日された際に、お立ち寄りになられた由。

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女王陛下もご覧になられたThe Rock Gardenは、いつ、誰が、誰に、どういう意図で、作らせたのかが分かっていないのだとか。ジェームス・ボンドに調べさせなアカンのんとちゃいますか。
焼けちゃったにしても、お寺さんに在って由緒書きが残っていなかったのが不思議。所有者、管理者が移っていく中、何方かのThe Secret Gardenだったのでしょうか。
作られた年代すら特定出来ず、謎とされてはいるのですが、ワタシ的には現代抽象芸術にも似たスタイルが面白いと感じられて、方丈の縁側に端座して脚の痺れるまで観ていられたほど。
関係者筋に言わせたら、現代芸術が枯山水を真似た・・・ということになるのかもしれませんが、何れにせよ、その小さな世界、枯山水様式だけでもアブストラクト・アートのようであって、今日は朝からの雨催いで、幽かな雨と風が見頃を過ぎようとするの花弁を舞わせて、それが塀越しに降り込んでモノクロームに優美な色を添えて、もうねェ、絵にも描けない美しさ。
多少不謹慎かも知れませんが、の花弁が多く降り積もって、白砂が全部ピンクに染まっちゃったらどう見えるだろうと夢想してみる。
15個配置された石に各々色をのせてみたら、サム・フランシスっぽく観えるかしらとかイメージしてみる。
時代を経た塀囲いを金箔張りの額縁風に変えて、白砂にとりどりの色を滲ませ、置き石もカラフルにして・・・。
叱られちゃいますね、ゼッタイ。

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龍安寺
のもうひとつの名物は「知足の蹲踞(つくばい)」と称される、茶室前の手水鉢。
水戸黄門こと徳川光圀が寄進したと伝わる本物は茶室に置かれて非公開。方丈から見えるところに展示されるのはそのレプリカで、古銭を思わせる円形の、四角い穴を穿たれた手水鉢には「吾唯足知」と彫られています。
四角穴を口(クチ)として、「の下、の左、の上、の右」、それぞれの部位の代わりとなって、「にアシが付いて」になるのね。ひとつの口(クチ)が4つの役割り、ケミカル・ボンドかモレキュラ・バインディングのようで、漢字の化学?
吾れ唯だ足るを知る」、お釈迦さまが説かれた言葉であるとか。
真ん中の四角穴を口(クチ)の字に見立てているそうですから、「貪欲に手当たり次第食べ散らかしちゃあいけません」とダイエット的な戒め? まァ、本来はもっと広い意味での禁欲なのでしょうが・・・。
ワタシ的には、節制しなさいだとか、ましてや我慢しなさいという意味では無くて、満たされていないと不満を持つことを戒めているのだと解釈します。物量的なことでは無く、感覚的バランスのことだと判断します。欲をかけばキリが無い。涯の無いものを求めても仕方が無いのですよ、ほどほどの中庸が良いという教えなのかも知れませんが、本当にそれだけ?
仏弟子でもないワタシ、物欲も食欲も◯欲も捨てられませんな。害の無い知識欲が一番の筆頭ですから、お許しを頂きたいのですが、お釈迦さまは恐らく古いサンスクリット語で仰って、禅宗の中に残るそれは中国語経由で翻訳されているのでしょうから、ワタシなら「吾れ唯だ足りる術を知っている」、どうすれば満たされるか、充溢感を感じるかを心得なさいということだと覚ります。自己都合?

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石庭」が静謐の極致なら、繚乱となるのは寺の南側にある鏡容池を中心とした池泉回遊式庭園。折々の花が咲き、桜苑と梅園もあって、今はがいちばんの権勢を誇る。
水面や中島に水鳥が遊んで、対岸の花や青紅葉を眺めているだけで、長閑な気分に浸れるよう。
日頃の気鬱も忘れさせてくれるのですが、明日から天気が崩れるとかで、これがの見納めとなるのでしょうか。

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お庭の風情は見飽きないのですが、今日の主題は椿、それもお庭に咲くお花では無く・・・。
そろそろいい刻限。きぬかけの路を辿って、それを観に行きましょう。
ジュゼッペ・ヴェルディの「花から花へ」を口ずさんでいたつもりが、知らず識らず「乾杯の歌」に変わって・・・。

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古来から愛された椿。梅やと並んで、歌にも多く詠まれるが、絵画にも数多く描かれて、それをコレクションされる好事家もおられて。
京都府立堂本印象美術館に於いて、今日から開催される特別企画展は「椿、咲き誇る - 椿を描いた名品たち - Masterpieces of Camellia in Full Bloom」。
昨年春に中止となったエキシビションの再開で、椿をテーマとした美術作品の収集で知られるあいおいニッセイ同和損保コレクションから、尾形光琳尾形乾山の工芸品をはじめ、横山大観村上華岳徳岡神泉奥村土牛堀文子などの日本画、さらに岸田劉生鳥海青児熊谷守一らの洋画も合わせた作品57点を紹介するというもの。
もちろん、堂本印象さんが描いた「椿絵」も多く展示される。

堂本印象(1891年12月25日 - 1975年09月05日)さんは、日本画家から、大戦後は抽象表現や障壁画など作風が変化するとともに活躍の場を広げ、東寺の襖絵や東福寺の天井画、京都の寺院や高野山に四天王寺、大阪カテドラル聖マリア大聖堂の祭壇画なども手掛け、私塾を開いては後進の指導に当たり、果てはご自身の設計で美術館まで作っちゃった、京都画壇の立役者。

堂本印象の名を掲げる美術館は、印象さんが1966年に自ら設計、設立されたもので、印象さん亡き後、1991年に所蔵作品共々京都府に寄贈されて「京都府立」が加わる。
きぬかけの路沿いに在って、金閣寺と龍安寺のちょうど中間辺りで、立命館大学衣笠キャンパス正門の真ん前。ひと目でそれと分かる構えになっている。
本館3階のサロンから望めるお隣りが印象さんの旧宅で、印象さんが起こした私塾東丘社として若い画家たちが集ったサロンでもあったのでしょう。今もアトリエが庭内に残る。

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今回のエキシビションの基本になるのはあいおいニッセイ同和損保が所蔵する椿絵コレクションで、昨年12月にあいおいニッセイ同和損保八重洲ビル1Fにオープンしたギャラリースペース「UNPEL GALLERY」に収蔵される作品類。そのうちの一部がいわば、京都へ出張展示。

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初めて訪れる堂本印象美術館は少し変わった造り。
外壁やロビー、扉や窓枠などには印象さんがデザインされた金色の装飾が施されて、他のミュージアムとは随分違った面持ち。
玄関に面したエントランスから入ったロビー、受付は2階になっていて、その奥に展示ホールがあるのですが、二重構造みたくホールを取り囲み外壁に沿った回廊も展示スペース、そのプロムナードからエキシビションが始まって、脳内でモデスト・ムソルグスキーのあのピアノ組曲が鳴り響いちゃったりして・・・。

「第1プロムナード」から続く「1番 小人(グノーム)」は・・・じゃなかった、最初に掲げられているのは竹久夢二描くところの「舞妓」。
椿コレクション舞妓はん?! とか思っちゃうでしょ?
伝統文化の象徴(シンボル)にして「生きた芸術品」でもある京都の芸舞妓。お化粧から着物の柄、髪型や髪飾りに至るまで細かい決まりごとも多くあって、祇園の舞妓はんは日々お稽古にお励みやして、あれやこれやの嗜みも身に付けて「京舞」がひととおり舞えるようになって、初めて一人前。その時になって初めて着せてもらえるのが椿柄のおべべどして、いわば免許皆伝の証し、ちょっとしたステータス。芸妓になる直前、羽化する前の蛹の時期。
それを描いたのが、祇園にも縁の深い夢二はん。
お花を観に来たつもりが、いきなりにはんなりとした面差しを向けられたらびっくりドキドキしちゃいます。

その他は、野や庭の風景に映える椿もあれば、切り花にされて花籠や花生け、花器に収められた室内静物画とスタイルは色々、雪を被った寒椿に珍しい夏椿と季節感も様々に、画風、筆致もそれぞれ。
全て日本人画家による絵画作品は日本画と洋画が並んで、古いものでも江戸末期ごろ。大半は夢二さんや印象さん、岸田劉生さん以降、彼らのお弟子さん世代の作品で、ほとんどが大正から昭和に描かれた「椿図椿絵」。
師弟関係にあってもその遺伝子は、2,200種ある椿に合わせるかのようにそれぞれ異なる表現を示して、「椿」という画題ひとつで百花繚乱の様相。
ロビーからホールに至る最初の回廊に各アーティストによる日本画11点と印象さんが描いたお花のスケッチが10点、もう一方の回廊にも日本画が10点、ホール内には江戸期に作られた工芸品が5点と日本画19点、1階のホールには印象さんの「椿図」がスケッチと本画を合わせて11点と、その奥に洋画が12点。

時代の付いた工芸品は、尾形光琳椿図蒔絵硯箱」、「紅椿図団扇」や尾形乾山色絵椿文輪花向付」、「銹絵椿図角皿」、狩野山楽作と伝わる二曲一隻の屏風「椿梅図」。
江戸期の絵画は、江戸琳派の祖となる酒井抱一藪椿鶯図」、そのお弟子さんの鈴木其一梅椿図」、四条派松村景文沙羅椿と雀図」。
『日本書紀』や『万葉集』に詠まれた椿も園芸種として流行り出したのは江戸期。茶花として親しまれ、庭に植えられるようになったのは千利休さんが好んだことから。アート・モティーフとなったのでさえ室町時代。やはり、「落ちる」が災いしていたのでしょうか。
今のご時世なら、受験生でもいればともかく、あッ、株式とかされてる方は嫌うんですかね?!

61点の近代日本画の内訳は、地元(?)印象さんが(椿以外のお花の)スケッチを含むとはいえさすがの22点。何れも当美術館の収蔵品。
他は全てあいおいニッセイ同和損保コレクションで、夢二小茂田青樹印象さんの義弟でもある三輪晁勢に弟子の山本倉丘山口蓬春とそのお弟子さんの加藤東一横山大観と弟子の堅山南風、孫弟子の松尾敏男、さらには中川一政中島千波牧進安田靫彦小林古径高山辰雄小倉遊亀川合玉堂冨田溪仙前田青邨奥村土牛山口華楊徳岡神泉村上華岳福田平八郎堀文子と、名だたる方々が連なる。
岸田劉生は日本画と洋画の両方に作品が置かれる。

日本画とはいえ大正から昭和の作品で、西洋絵画、分けてもフランス近代絵画の影響を受けたと思われるものが多く、印象派ポスト印象派野獣派(フォーヴィスム)ぽくも観えて、その影響力の強さに驚きながらも、その西洋的表現は単にモノマネではなく和風な野趣として消化されて、毅然と咲く椿へと昇華している。
一方で、西洋絵画の日本的表現と呼べるようなものもあって、金泥を使ってみたり、岩絵具や水干絵具に膠液など日本画独特の画材で描いたものもあって、和魂洋才なのか洋魂和才なのか、分からなくなってきます。
おフランスのismから表現方法を借りはしても、それぞれ独自の画風、作風を確立されて、27人のアーティストには27の作風、27品種の椿が咲くようで。
狩野派琳派円山四条派など伝統の大和絵を引き継ぐ作品もあって、省略された背景にお花だけが描かれて、早い時間に拝見した「石庭」に通じる泰然自若な表現。
金泥を使った背景は、椿を際立たせるために燻したような風合いになっていたり、そのまま鮮やかな光彩を放つものもあったり、それぞれに技巧と工夫が見て取れる。
雲母摺のように雲母を混ぜた岩絵具を使っているのでしょうか、画面全部がキラキラ輝く作品もあって、幻想的でさえあったり。

何れも「椿絵椿図」ではあるのですが、切り花はや梅など春の花々と生けられていたり、冷たい綿雪を被った寒椿雪持ち椿にはスズメやメジロが描かれて遅い春の到来を示したり、場面も様々。
面白いことに気付いたのですが、軸装された絹本着色のものはきっぱりとした白や紅が映える一重で猪口咲きの素朴な侘助椿(わびすけつばき)あるいはそれに似た侘芯椿(わびしんつばき)。少しだけ遺伝子の異なるCamellia wabisuke狩野派琳派丸山四条派などの古典的画風を伝えるには茶花らしい「侘び」が好まれたのでしょうか。それとも、お茶室の床の間に飾られることを想定しての画題でしょうか。茶席に匂いの強いお花は合いませんから。
大観さんの描いた「雪旦」は薄墨の背景に濃墨で描かれた竹と椿の枝と葉、白い椿の花と竹の枝からそれを見つめる小鳥だけが色絵具。これが先日の早朝に通った竹林の小径の情景と重なって、今朝拝見した「石庭」の拵えと相まって、心惹かれました。白椿と解け残った雪は胡粉でしょうか。
額装される紙本着色のものは、色目が面白いからか八重の牡丹咲きで斑入りや絞りが目立つ官能的な品種。花びらの重なりやピンク色のグラデーションが絵心をそそるのでしょうね。こちらは、Camellia japonicaの香り立つ艶やかさ。
描かれた時代が異なるというわけでもないようで、描き終えて展示される時のことまで念頭に置いて画材と画題を選んでいるのでしょうね。

日本人画家による洋画は12点。
児島善三郎橋本花岸田劉生福井良之助椿貞雄鳥海青児糸園和三郎熊谷守一香月泰男の9名で、筆致も様々なら椿の描き方も色々、こちらも和魂洋才なのか洋魂和才なのか、用いられているのが油彩絵具とキャンバスというだけで、日本画と洋画を区別する必要がないのではとさえ思わせる近代絵画集。
1、2点は古典的手法に倣っているのですが、大半はテンコ盛りにマチエールするフレンチ・モダン風。当時、最先端の先っちょで、アヴァンギャルドでア・ラ・モード、それがかっこよく見えて、その手法を採り入れようとされていたのでしょう。
大正〜昭和のそれがあって、今だに日本ではフランスの印象派絵画やそれに続く近代芸術の人気が高いのかしら?
モダンな技法が輸入されての二次創作。それがメディアを通じて、さらに広がっちゃったのでしょうか、ね。

そうそう、やはり縁起が悪いとされるのか、ここまで観てきた中に「落椿」が無いなァと思っていたら、最後の最後、熊谷守一春の日」が5輪の落椿。背景も無く、極端にデフォルメされて、5つの赤いになっちゃっているのだけれど、白と黄色の雄蕊が描かれて、うん、確かに落椿。これが一番カワイイかも。

生花が、美しく、眺めて心嬉しいのはもちろんのことですが、こうして絵画になっても心惹かれて愉しませてくれる。2,200種の品種をさらにヴァリエーションさせるような椿画・椿絵コレクション、堪能させて頂きました。「咲き誇る - 名品」とタイトルされるだけのことはありました。

龍安寺のお庭、「石庭」と「知足の蹲踞」を拝見した後の椿コレクション。
もしかしたら、仏教の祖国、インドで聖樹とされる復活・再生・若返りの象徴「生命の木」に擬したフタバガキ科サラノキ属サラソウジュ(沙羅双樹 Shorea robusta)。それが日本には根付かずに、それに似たツバキ科ナツツバキ属ナツツバキ(夏椿 Stewartia pseudocamellia)で代用しようとしたのが、何処かでツバキ違い、繁殖しやすいキク類ツツジ目ツバキ科ツバキ属ヤブツバキ(藪椿 Camellia japonica)に置き換わっちゃって広まった・・・のかも(個人的見解です)?! となると、ツバキはお釈迦さまに繋がる????

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美術館の敷地内には起伏に富んだお庭もあって、その奥にアトリエ。
細い通路が縦横に通るお庭のそこここに置かれるのは20体の彫刻作品。「椿」と同時開催の「第4回 京都府立堂本印象美術館 野外彫刻展」の会場となって、そこの番犬みたくリアルなワンコが2匹居て、SNSにアップしたら叱られちゃいそうな裸婦像や女性像が4体、あとはなんだかよく分からない?? なんで、「花のいのち」がピンク色の禿頭なん?! どうして、タコの足なん? 「」とはステンレスの枕みたいの? 真っ白い「椿娘」はちょっと怖いぞ???
作品と一緒に記念撮影してくださいという意図なのか、全て撮影可能で、それらの横には印象さんがデザインされた(ちょっと座り心地の悪そうな)椅子が置かれています。

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ここまで脚を運んだ甲斐はありました。
で、お腹が空きましたね。「吾唯足知」も空腹には勝てませんて。
食べられるものは限られて、あまりジャンクなものも受け付けないから、今日は宇和島名物の「鯛めし」をチョイス。
京都で宇和島? いいでしょ、別に。
鯛めし」というと炊き込みご飯を連想するのですが、こちら鯛めし 槇 金閣寺店では生のお刺身を白ご飯にトッピングして、出汁醤油で出汁茶漬け風にする宇和島スタイル。
それも、食べ方にお作法があって、

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先ず、鯛が描かれた木箱を開けて写真を撮る。

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次に、天然真鯛の切り身を傍らの出汁醤油に全部漬け込んで、それを味わう。

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それから、漬けになったお刺身をご飯の上に載せて出汁醤油を掛けてお茶漬け風。

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そして、卵までトッピングしたら最終形態。
最初に勢い込んでご飯を食べ過ぎないようにするのが注意点でしょうか。何事もバランスが大切。
お豆腐やきな粉のお団子も付いているのが、京都風? 香の物が載った鯛形皿も可愛くて。
椿鯛めしも、眼福に口福、いや、美味しゅうございました。
ここまで来たら金閣寺にも寄りたいところですが、タイムアウトで時間いっぱい。

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