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硝子の茶室と早春の花 [散歩・散走]

ほんの少し夜が明けるのが早くなって、日中の陽差しも優しく柔らかく感じられて、日の暮れもちょっとだけゆっくりになったでしょうか。そろそろ春が待ち遠しくて、そわそわうずうず。
暦も、一年で一番寒い時期とされる「大寒」とはいえ、沢を流れている水も凍ってしまうほどの寒さを示す「水沢腹堅(さわみず こおりつめる)」からニワトリがタマゴを産み始めるくらいに寒さも緩む「鶏始乳(にわとり はじめて とやにつく)」となって。
今年はちょっとだけ節分立春が早くて、現に今日のお天気も早春のそれ、眩しいほどに陽が差して、コートが必要ないような暖かさ。なんなら、紫外線が怖いくらいで。


大寒」の水は、菌が繁殖するには水温が低過ぎて、腐らない・・・と言われ、寒の入りから九日目に汲んだ水は「寒九の水」と呼ばれ、不純物が少なく身体に良いとされて、「寒仕込み」として酒造などに用いられる。
極限にあってこそ、腐らない、傷まない、饐えない、堕ちない、朽ちない、挫けない、めげない、破れない、負けない、敗れない、究極的に純粋不変であるから流されることもないということなのでしょう。
苦況にあってこそ強くありたいと思う。思えるのだと思う。
大寒」は一年で一番寒い、寒くはあるのだけれど、次に巡ってくるのは「立春」。春の気配が立つのももうすぐ。
底冷えする「大寒」があってこそ、春の訪れが一層心地良く感じられるように思います。
苦悩を突き抜け、歓喜に至れ」とは楽聖さまことルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのお言葉・・・であるらしい。Durch Leiden Freude・・・でしたっけ。「困難は克服の母」とも言いますし、面倒事や煩い事、障碍が大きいほど、それを乗り越えた時の喜びひとしおだと考えれば、苦しいことなど何もない。乗り越える手立てを考えるのが面白いと思える。
寒九」と「第九」の字面が似ていて、「かんく」は「歓喜」に響きが似て。今朝の陽射し、暖かさがあまりに気持ちよくて、ついそんなことを想ってしまいました。

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さぁ、じっとしてちゃあ勿体無いようなお天気、ちょっとお散歩に出掛けましょう。
季節が「立春」へ戻るのに合わせて、心身をリセット。そのために糺の森まで行こうかと考えたのですが、先々々週に意識を無くして倒れちゃった時にどこかにぶつけた足が、正座さえ出来ないくらい、(まだ)痛んでペダルを踏むにも歩くにも(やや)困難。それに何やら、お昼間でもあまりうろちょろと出歩いてはいけない・・・らしい。不要不急がどうたらこうたら。緊急がどうしたこうした。
で、街中近場の散歩にとどめ。

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岡崎公園
へ参ります。
平安時代には六勝寺・・・六つの巨大寺院があった故地で、明治の御代には平安遷都千百年紀念祭や内国勧業博覧会が開催されて、会期後は平安神宮として整備され、京都市動物園が開園し公園となって、その広大な敷地内に図書館や美術館、コンサートホールなどが建設されて今に至る。
美術館だけでも、「京都ミュージアムズ・フォー(Kyoto museums 4)」のうちの二つ、京都国立近代美術館京都市美術館改め京都市京セラ美術館が相並び建って、どちらも現在エキシビションを開催中ではあるのですが・・・。
近代美術館で昨日から催されているのは「分離派建築会100年 建築は芸術か?」と建物、建築物を主題とした内容で、多少興味は惹かれるものの、アタマが凝ってて少々しんどい上にワタシの趣味の範疇からは少し遠い。それほど時間も取れないし。

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で、お邪魔するのは京都市京セラ美術館の方。
と言っても鑑賞するのは、本館で開催中の「成安造形大学 卒業制作展2021」や別館での「第20回京都芸術高等学校 卒業制作展」、新館を会場とする「平成美術:うたかたと瓦礫(デブリ)  1989-2019」などでもなく・・・、10:00の開館とともに正面エントランスから本館へ入り、展示室には進まずにそのまま裏口へ通り抜け、本館裏の日本庭園。そこに設けられた茶室。

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2020年に京都市美術館京都市京セラ美術館としてリニュアルオープンした際の杮落としとして開催されたのが「杉本博司 瑠璃の浄土」という催しで、その時に庭園の池の上に置かれたのが現代美術作家・杉本博司 作『硝子の茶室 聞鳥庵』。
エキシビションは終わっているのですが、茶室だけが今月いっぱい残されて、今日を最後に別の何処かに移されちゃうのだとか。

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天井(屋根)と壁面はガラス製の立方体。四方の壁の一辺はおよそ2.5mで、茶室としては二畳敷きに少し余る空間が確保されて、木製の茶道口と躙口は型通りの設えで、床(ゆか)は畳敷きとした小さな和室、茶室。
茶道口が南面で、躙口が真北を向いて、床(とこ)や棚などの拵えは無く、ガラスと木材とイグサと作られた、約15.6㎥の小間(こま)の茶室。
「直心の交(じきしんのまじわり)」には適しても、換気のための窓も無くて、今のご時世、二人っきりでも密になっちゃう?

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2014年にヴェネツィア建築ビエンナーレ関連展出品作品としてサン・ジョルジョ・マッジョーレ島でタイル張りの水景の上に作られ、水と硝子の都ヴェネツィアでのイベント終了後には光の都パリ、ヴェルサイユ宮殿現代美術プロジェクトに合わせてトリアノン離宮の敷地内のプラ・フォン池に設えられ、昨年に京都市京セラ美術館日本庭園へと運ばれた、移動可能なガラス張りの茶室。
武者小路千家家元後嗣の千宗屋を亭主に迎え、杉本博司氏が正客となって、茶室披きも行われた由。

清貧と質素、侘び寂びをコンテンポラリーなミニマルと解釈すればこういう形となるのかしら。近代美術館で開催中の「建築は芸術か?」をこれひとつで体現するようなお茶室。
ワタシも京都府下のお庭に設えられた茶室を幾つか拝見しましたが、そのどれもが小さな窓や躙口から見える狭い坪庭や遥かな風景を借景とする、究極的に無駄を省いた小さな和室。
この茶室は、四方の壁だけでなく天井(屋根)まで一枚のガラスで、水平線から上の全空間をまるっと取り込んじゃって、借景だとか坪庭という概念も無くしちゃったのでしょうか。
水の上に置かれるのなら床面もガラスにすれば・・・とも思うのですが、畳が有っての和室、そこに炉が切られ、茶道口と躙口が有っての茶室なのでしょう。6面全部がガラスだとただの箱になっちゃう。

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その代わり(?)、京セラ版では茶室に至る橋掛かりまでガラス製。
・・・でもね。不法侵入を避けるために(?)、今は1.5mほど隙間が作られていて、渡れない、入れない。
まァ、ワタシの長ァァァ~~~い御御足をもってすればひと跨ぎに渡れる・・・はず。
ええ、そんな大人気ないことはしませんよ、もちろん。
躙口に回ろうと思えば、幅30〜40㎝ほどの敷石を渡らなければならなくて、まさに一歩間違えば水没の危機!?

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そうそう、「聞鳥庵」は「もんどりあん」と読んで、オランダ出身の画家、ピート・モンドリアンの代表作「コンポジション」から着想しているのだとか。
千利休が作り、今は現存する日本最古の茶室として国宝に指定されている「待庵」の壁面構成と庭石の配置がモンドリアン的抽象に通じるということ・・・らしい。端正だけど、意義深いニュアンスを含んでいるということですかね。
芸術として観るなら静謐な抽象、茶席と見るなら隔離保護された野点。

面白いものを拝見しましたが、それだけで街散歩を終わらせるわけにはいきませんな。
とはいえ、今日はアタマを使うようなところも行きたくないし、ヒトの多いところへは行くわけにもいかない。
そういう時は庭の花。
そろそろ蠟梅が見頃ではないかと・・・。

かつて京都が都として機能していた頃に帝や高位の貴族が住まいしていたところを訪ねます。
東西約700m、南北1,300m、総面積92ヘクタールの国民公園は、その内部に御所の名残りや貴族邸の遺構が遺る場所。そこには500種以上、約50,000本の樹木が生育しているのだとか。

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その中で、春一番に咲くのは、分けても蠟梅
中国原産で「唐梅(カラウメ)」とも呼ばれ、ロウバイには蝋梅蠟梅臘梅の字が当てられるが、クスノキ目ロウバイ科ロウバイ属に属する落葉樹で、同じ中国原産ながらバラ目バラ科サクラ属に属するウメとは全くの別種。花の香りや咲く時期と咲き方が似てる?
句歌歳時記などでは、小寒ごろの晩冬から立春の前日までの季語とされるから、ちょうど今が旬となるお花。
その名の通り蝋細工のようにも見えて、俯き加減のお花が咲き誇るよりちょっと控えめな感じもして、とても愛らしい。
蕾や花弁から作られる蝋梅油には抗菌作用や抗炎症作用があるとかで、今のご時世にもピッタリ?

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それを探しに出掛けてみると、今日の暖かさに慌てちゃったのか、気の早い早咲きのウメまでがチラホラと。
蠟梅の黄色に、白梅紅梅。数こそ多くないものの、三色並んで色香を競う。
そういえば、飛んで行っちゃう方の北野天満宮梅苑もそろそろ開園ではなかったか。天神さんまでとなったら散歩の域をちょっと超えちゃうかなァ。

広い園内を散策しているうちにお昼時。お腹も空いてきたような。
きょうのランチは、パリ発祥のパティスリー・ブーランジェリー、LIBERTÉ PÂTISSERIE BOULANGERIEで頂きます。
店名には「菓子作りの繊細さで作るパン」という意味が込められ、「透明性」、「親近感」、「品質」の3つのコンセプトを大切にしているとのことで、カフェスペースも解放的で、入り口脇には現代美術作家・ヤノベケンジの作品が番犬みたく控えていて、それがいい感じにカワイイ。最近一番のお気に入り。

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無水ビーフカレー」。ええ、パン屋さんでもカレーなんですけど。
フランス産の小麦粉、AOPバター、塩を使って作られるパンやお菓子。ランチに付くパンは食べ放題ではあるのですが、3~4年前に急性胃腸炎で緊急入院して以来、グルテニンだかグリアジンだか、とにかくグルテン、小麦粉に弱くなっちゃったようで、パンやケーキ、パスタにラーメン、et cetera、あんまり粉もんは食べられなくなって、低グルテン・ダイエットを実施中。腹七分目でもあるし、パン食べ放題より別腹に甘いものを入れたいでしょ。
と思っていたが、お腹いっぱいで、パンのお代わりも別腹用のスイーツも入らしまへん!!

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