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ワヤンで地獄巡り?! [音楽のこと]

新しい年が明けて、暦は「小寒・芹乃栄(しょうかん・せりすなわちさかう)」で、いわゆる「寒の入り」。これから約30日ほどは一年で一番寒さが厳しい季節。
確かに寒くはあるのだけれど、レイヤリング、重ね着で自己表現し易いから、オシャレ的には愉しめる季節。
二十四節気の面白いところは、「小寒と大寒」、「小暑と大暑」、「小雪と大雪」と、大きく時候が変わる頃合いは「小」と「大」がセットになって、これからいよいよ寒さや暑さ、雪が近づいて来る頃合いとなるからそれに備えよとするのが「小」で、「大」はそれを乗り越えて新しい季節に変わる頃合い。御不浄や御手洗は関係ないのね。お下品ですね、すいません。
事が重大になる前に予兆を感じ取って、それに備える手回しをしろ・・・って、出来ていない事柄が多くあって、いざとなって混迷、恐慌の有様。それでは統制出来ていないのと等しい・・・と思ってしまう今日この頃。


・・・という枕、前振りは全然関係なくて、今年最初に拝見するライヴ・パフォーマンスはガムランの楽音もお賑やかに、ジャワ伝統の影絵芝居ワヤン・クリで演じる「地獄八景亡者戯」。
それをご披露くださるのは、ワタシが2016年11月に初めてガムラン楽器に触れて以来お近づきとなってオッカケ、フォローワー、グルーピー、ストーカー(??)というくらい(?)、公演が開かれる度に拝見させていただいている、何よりココロからガムランを愛しておられる方々。
ガムランに心酔するあまり(?)、変幻自在に複数のユニットを掛け持ちし、幾つかの名義でご活躍されて、今日はAnanto Wicaksono(アナント・ウィチャクソノ)さんを代表とするマギカマメジカとなって、そのメンバーは、イルボンさん、近藤チャコさん、西田有里さん、松田仁美さんの計5名。
臨機応変なアンサンブルもさることながら、ナナンことウィチャクソノさんが演じるワヤン・クリも幾たび拝見したことか。
これまで観たのは伝統に則したインドの古代叙事詩からのエピソードなどでしたが、今日の演目は落語噺を原本とする創作の「地獄めぐり」。ダンテ・アリギエーリ作『神曲』こと『神聖喜劇(La Divina Commedia)』めいた、そうしたお噺しがインド~インドネシア辺りにもあるのかしらン? よう知らんけど。

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池田市に在るオシャレなカフェ・ギャラリーGULI GULIを会場として、9日(土)、10日(日)の二夜連続の予定が、満員御礼で11日(祝)も追加公演、三夜連続となった由。
それぞれにゲストが加わって、今夜は落語家、露の新幸さん。明日、明後日は別の客演が入るそうですが、せっかくの「地獄八景亡者戯」ですから噺家さんがご一緒される時がよろしいかと。
開場が18:00、開演が18:30。
ワタシがそこに辿り着いたのが18時の20分ほど前。
エントランスから石組みが続いて、樹々が植えられたお庭があって、右手にカフェ棟、左手にギャラリー棟が在る・・・はずなのだけど、照明が乏しくて、そこに至る石段すら見えないような・・・。
開場まではホワイエ、ロビー替わりとなるショップで待機。定刻になって通されたのは20㎡ほどの小さなギャラリー。そこが会場。
奥に控え室、ほぼど真ん中に演台が組まれて、その間には影絵芝居用のスクリーンが用意されている。上手のフロアにはガムラン楽器が少しと雑多な玩具楽器やシンバル等々が、下手にもオモチャめいたものが置かれて、客席はパイプ椅子が20客ほど。ワタシはプレミアS席を予約した筈なのですが・・・。

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18:30となって、照明が落とされ、先ずは露の新幸さんの落語から。
プログラムが「地獄八景亡者戯」で、ゲストが落語家さんですから、コラボレーション、噺家の口演と影絵芝居が絡むのかと勘違いしておりましたが、然に非ず。落語を前座として、後座、真打がワヤン・クリ

短い自己紹介かたがた、名刺替りに「サゲ・オチ」のヴァリエーションを示す小噺が4つ、5つ。それで、冷え切ったコンクリート打ちっ放しのギャラリー・ホールに集ったオーディエンスの心持ちを温め、体感的には3~5度ほど高まったでしょうか。
本ネタはお馴染みの「時うどん」。江戸落語では「時そば」となる演目。
合わせて十五文しか持ち合わせていない二人の男が一杯十六文のうどん(蕎麦)を喰おうと算段し、一方はそれを成功せしめ、翌日真似をしたもう一人の男はしくじって三文損をする・・・というお噺し。
現在なら詐欺罪で10年以下の懲役が科せられちゃう立派な犯罪なのですが、口上の巧みさ、人物対比の可笑しさ、うどんを啜り蕎麦を手繰る描写の面白さが受けるのか、上方、江戸の双方で広く知られた演目。
ワタシ的には、江戸時代の時刻制度、時間の数え方「延喜式」から何時なら何文誤魔化せるか、何文損をしてしまうかと数学の問題に出来そうなところが興味深くはあるのですが、そこに思い至るのは難しい? 単純に一つ、二つじゃあないのだよ。何故、清八が一文誤魔化せて、喜六は三文損をしたか、数式化出来る・・・かなァ?
・・・と計算はさておき、都合4名の登場人物の駆け引きでストーリーが長くもなったり短く端折られたりもして、今日はやや短めヴァージョンでしょうか。利発な清八と愚かな喜六の対比、うどんを食する形態模写がメインとなって、うどん屋さん二人はほぼほぼ目立たなくて、それでもお噺しとして成立しちゃうところが落語の面白いとこ? それで上演時間を自在に調整し、「お後が宜しいようで」と後座に場を譲る。インプロビゼーションというより、アド・リブ的なノリなんでしょうね。
どうして二人で十五文しか持っていなかったのか。そこから始まるロング・ヴァージョンも聴かせて頂きたくなりました。

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ここで暫しの休憩。インターミッションは舞台の変換。
高座がわりのテーブルと脚立(!!)が掃けて、真打として登場するのはダヤン(人形遣い)のナナンさん。その手にはちょっと大振りのお人形。
上手には主にガムラン楽器を担当する女性陣、チャコさん、有里さん、仁美さんが、下手にはイルボンさんがスタンバイ。
本来なら影絵芝居。客席と光源の間にスクリーンがあって、演者は光源側で操演し、観客は影を観る物なのでしょうが、水牛の皮に彩色を施したお人形も観てもらおうとスクリーンの客席側で演じられることが多くなって来ているのだとか。
今日もダヤンとお人形はスクリーンの客席側で・・・。

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落語版「地獄八景亡者戯」も演者や持ち時間によって展開が変わり、セリフやストーリー、登場するキャラクターにまで変化があったりするのだけれど、ワヤン・クリ版ではシンプルに、路上で危険な踊りを披露している軽業師のブジョが主人公。それに絡むのが地獄の亡者や妖怪、閻魔大王。
スクリーンの客席側、姿が見える方を娑婆、スクリーンの向こうで影となってしまう方を冥界とする設定のようで、まずはシャバでご挨拶がわりの準備運動から。

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十分に身体が解れたところで(?)大一番の綱渡り。
スクリーンの前に綱が張られて、ナナンさんに操られたブジョが器用にそれを渡って・・・。
行く筈が足を滑らせ真っ逆さま!!

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気が付いたら、ごくらくとじごくの分かれ道。さて、ブジョの運命や如何に!!

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セクシーな妖女に謀られ地獄に入ったブジョは、閻魔大王のお裁きを受けて、巨きなトラがいる猛獣地獄、火の玉野郎がいる火炎地獄、沸屎に塗れた肥溜地獄、巨大な人喰い鬼が住まう人喰地獄を巡ることになり・・・。

これまで拝見した伝統的ワヤン・クリでは、人形の操演にその台詞、さらには歌や演奏、効果音まで一人のダヤン(人形遣い)に委ねられて、それを主として他のメンバーはお囃子方となっていたのですが、今回は口演部分は傍らに控えるメンバーさんたちのご担当。下手に控えるイルボンさんがストーリーテラーとなってお噺しをリードし、上手の女性陣がお賑やかに歌と演奏。
普段使われることのないシンバルやタンバリン、空き瓶や銅羅がわりの大きなトレイをお囃子として、オリジナルを交えた歌がブジョの地獄譚を彩って。
少々お下品、お下劣ではあるのだけれど、肥溜地獄での「う○この歌」が耳から離れませんて!!

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ちゃらんぽらんと機転を利かせ、巨虎を退け、火の玉を掻い潜り、糞便を躱し、人喰い鬼の腹から抜け出したブジョは、閻魔さまに呆れられた末に娑婆へと還るのですが、その背後ではガイコツや妖怪の影が怪しく蠢いて・・・、というのがワヤン・クリ版「地獄八景亡者戯」。
落語同様、演じられる度に展開は変わっちゃうのでしょうか。ブジョの冒険と同じくらいいい意味でいい加減、気分次第ではあるのでしょう。


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トラディショナルな演題とも違って、オリジナリティの高い新ネタ。ガムランワヤン・クリの範疇からも飛び出しちゃう、変幻自在なユニットのフレキシブルなパフォーマンス。
あっという間ではありましたが、いや、愉しませて頂きました。

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みつばち

OCCAにいつも参加してる方達と、昨日GULIGULIでランチしました。ホントにオシャレなお店でした(3人で230歳)有難う[るんるん]早くコンサートを再開して欲しいですね、寂しいです。
by みつばち (2021-02-18 10:10) 

JUN1026

みつばちさん、コメントありがとうございます。
私は一度、阪大へ向かう前にランチに寄ったら、予約で満員ということで、お昼を食べ損ねて以来、行ってなかったのですが、こうしたご縁で訪ねることが出来ました。
ランチも一度味わってみたいです。
3人で230歳の女子会、楽しそうですね。皆さん、3月公演にはいらっしゃるのですか?
久しぶりにお逢い出来るのを楽しみにしています。
by JUN1026 (2021-02-18 19:09) 

みつばち

えっ~、知らなかったです[涙] 今ホームページを確認しましたが、満席で当日券は無いそうです。4月を申し込みしてみます[るんるん]
by みつばち (2021-02-19 00:07) 

JUN1026

えェ〜、ご存知なかったのですか?
私も先生もFacebookで告知していたのですが…。
このブログでもご報告すれば良かったです。広報が足りなかったですね。
残念ですが、またの機会にお逢いしましょう。
by JUN1026 (2021-02-19 20:30) 

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