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夜のルーヴル ~ ダ・ヴィンチ没後500年展 [散歩・散走]

さて、今年最初のアート探訪、ミュージアム巡りは、お正月らしく華やかに、おフランスはパリの中心部、第1区に在る世界最大級の史跡にして世界最大級のミュージアム、ルーヴル美術館に参りましょう。
とはいえ、このご時世に渡仏することは適わず、スクリーン越しにヴァーチャルなナイト・ツアー。真っ昼間の大阪に居ながらにして、夜のルーヴル。JR大阪駅上の映画館で「ルーブル美術館の夜 - ダ・ヴィンチ没後500年展(A Night at the Louvre: Leonardo da Vinci)」を鑑賞いたします。
時差的にはちょうどいい?


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ルーヴル美術館
(Musée du Louvre)といえば、世界最大級の大きさ(総面積60,600㎡)、世界最大級の所蔵数(約35,000点)、世界で一番入場者数が多く(年間8,000,000人超)、世界中の誰もが知るミュージアム。
12世紀にフィリップ2世によって要塞として建てられたルーヴル城が増改築を重ね、フランソワ1世の御代には王宮となり、ルイ14世がその住まいをヴェルサイユ宮殿に移してからは王家所有の巨きな大きな宝石箱となって、♪ バラは バラは 美しく散るゥゥゥ ♪な「ベルばら」時代(?)、ルイ16世やマリー・アントワネットが断頭台の露となったフランス革命後にはナポレオン・ボナパルトにも擁護され、憲法制定国民議会によって国有化、あらゆる科学、芸術を集める場所へと改められて今日に至り、遺構そのものが世界遺産ともなっている。
壮大な美術館の数多ある展示品を観て廻るのは1時間や2時間では到底無理。何時間どころか、数日かかっちゃう?!
というわけで、2019年10月24日から2020年02月24日に開催された特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」だけに限定特化して。
観客の途絶えた閉館後のルーヴルにキャメラが入り、二人のキュレーターのご案内でその特別展を観覧するプライベートなナイト・ツアー・・・を遥か極東の地から鑑賞出来ちゃう。
ピエール=ユベール・マルタン監督、ルーヴル美術館広報協力のもと、映画館限定で60カ国、35ヶ国語でライヴ・ヴューイング・・・するシネマ。
ナレーションを担当するのが、コメディ・フランセーズのメンバー、コラリー・ザホネロ
日本版は、4K/5.1ch/カラー/デジタル/フランス語上映/日本語字幕というスペック。
絵画の科学がどのように芸術に奉仕したかを学校で教えるため、教材としてならこの映像が無償提供されるそうで、パリの子供たちはよろしいなァ。

ルーヴルダ・ヴィンチといえば言わずもがな、「モナ・リザ(La Joconde)」があまりにも有名。
フランソワ1世がお買い上げになられて、現在はおフランスの国有財産でもあり、彼女のための特別室に常設展示されて、ルーヴルの顔となる油彩肖像画。
それ1点で1本のドキュメンタリーが作れちゃうのでしょうが、2019年がレオナルド・ディ・セル・ピエロ・ダ・ヴィンチ(Leonardo di ser Piero da Vinci 1452年04月15日 - 1519年05月02日)の没後500年に当たることから企画されたのが今回の特別展で、それを世界中で観られるようにと映像化。
会期中の来場者が100万人を突破しちゃったそうで、有給休暇まで取ってパリまで出掛けたにしても、ゆっくり鑑賞するのは難しいかったでしょうから、大阪の映画館でゆっくりと、プライベート・ヴューイング。

準備に10年余の時間を掛けて、世界中のミュージアムから彼の創造物を借り集め、それらは絵画だけに留まらず、資料、手稿、下絵や習作、彫刻などなど、ダ・ヴィンチに関わる科学と芸術が大集合。
「科学と芸術の叡智」を体現した万能の天才の手になるクリエーションが、世界中から芸術の都パリの、あらゆる科学、芸術が集められる場所でお目見えとなるのですから、ドキュメンタリー映像として後世に伝えないことにはいけないのでしょう。二度とこんな企画は(多分)出来ないでしょうから。

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夜の帳が下りたパリ第1区。その上空からドローン撮影されて、俯瞰のルーヴル。キャメラはゆっくりと旋回しながら中庭、ナポレオン広場ルーヴル・ピラミッドへと近づき、着地したかと思うと、ガラスと金属で作られた金字塔のメイン・エントランスへと進み出す。
扉を潜り、緩くカーブする階段を降りたところが特別展の会場。「LEONARDO DE VINCI」の文字だけがライトアップされるその入り口から先は芸術と科学の異界、ダ・ヴィンチ・ワールド。

案内役となるのは絵画部門主任学芸員ヴァンサン・ドリューヴァンと素描・版画部門統括学芸員ルイ・フランクのお二方。このエキシビションの準備に10年係わったお二人。

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キュレーター二人に導かれて辿る展示室。そこに掲げられる作品はほぼほぼ制作年代順に並び、レオナルドくんが14歳で入門した工房の親方、アンドレア・デル・ヴェロッキオ作となる彫像「聖トマスの懐疑」から。
フィレンツェのオルサンミケーレ教会のファサードを飾るブロンズ群像の一部で、現在、外壁に置かれているのはレプリカとなり、本物は教会内に安置されて、聖トマスの衣装の一部がレオナルドの手になると伝わる作品。パリに運ばれたのは本物? レプリカ?

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それを皮切りに、これも師ヴェロッキオとの合作でフィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵される油彩画「受胎告知」、バチカン美術館からは「聖ヒエロニムス」、ルーヴルが保有する方の「岩窟の聖母」、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館から遥々と「ブノワの聖母」、ミラノのアンブロジアーナ図書館から「音楽家の肖像」、ルーヴルに常設展示される「ラ・ベル・フェロニエール(ミラノの貴婦人の肖像)」、パルマ国立美術館から「ほつれ髪の女」、ルーヴル所蔵の油彩画「聖アンナと聖母子」には(ロンドン・)ナショナル・ギャラリー所蔵の素描画「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」が連なって、「洗礼者聖ヨハネ」も忘れちゃいけない。
英国やロシアを含む全欧の美術館所蔵品に米国の個人が所有する「糸車の聖母(ランズダウンの聖母)」まで、15作前後とされる絵画作品の2/3がここに集って、それだけでも圧巻を超えるヴォリューム。
他にも門外不出となるダ・ヴィンチ作品は幾つかあって、さすがにサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の食堂の壁に描かれた「最後の晩餐」は持ってくることが出来ないのでお弟子さん、マルコ・ドッジョーノが模写した複製画。
落札額が¥51,000,000,000を超えたと言われる本物はルーヴル・アブダビ所有となった「サルバトール・ムンディ(救世主)」もお弟子さんによる模写を出展。
加えて、素描画や下絵、数々の手稿、さらには著名な画家がダ・ヴィンチ作品を模写した複製画も多く展示され、それらを解説付きで観て廻るナイト・ツアー。
油彩画や素描画などの絵画作品だけでお腹いっぱい。科学な部分となる、戦車やヘリコプター(?)、教会や邸宅の設計図や詳細な解剖図などは、展示はされているものの映像では素通りしちゃって、もしかしたら他の学芸員のご案内でPart2、Part3が出るのかしらン?!

ほんとに、お腹いっぱい? んン?! なんか、物足りない!?

どうせならロンドンにある方の「岩窟の聖母」も一緒に観比べたいが、恐らく動かせないのでしょう。真贋が疑われているものが有ったり、500年を経て傷みが激しいものもあり、全作品を一堂に会することは到底不可能なのでしょうねェ。
それにしても、「ラ・ベル・フェロニエール」や「岩窟の聖母(パリ版)」、「聖アンナと聖母子」に「洗礼者聖ヨハネ」、ルーヴルが所蔵するダ・ヴィンチ作品4点までがここにあって、肝心要、一番知られたあの肖像画は・・・??

五百周年に向けて10年を費やした、ルーヴル挙げてのダ・ヴィンチ研究は、例えば油彩画の塗料の下にまで及び、殆どの絵画作品は赤外線三次元分析や高解像度マルチスペクトルカメラによるデジタルデータ化が施され、「モナ・リザ」ことリザ・デル・ジョコンドのポートレイトもスッピンか骨格、内臓に当たるところまで詳らかにされちゃって、そのプリントが特別展の会場に展示される。
で、現物はというと・・・。

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特別展会場を後にした二人のキュレーターは、長い回廊を辿り、多くの美術品が並ぶ展示室を抜けて、ドゥノン翼2階の「国家の間」へと至ります。
イタリア絵画が並ぶその一角、防弾ガラスに守られているのは「永遠の微笑」を湛えた女性の肖像画。
未完ながらダ・ヴィンチの代表作、最高傑作とされ、多くの謎を秘めた油彩ポートレイト。フィレンツェで手掛けてから、天才画家がフランスで亡くなるまで15年に渡って筆を入れ続けた作品。
フランソワ1世がお買い上げになられた後は概ねパリに在ったとはいえ、描かれてから約500年を経て、大戦の戦禍を避けて疎開したり、ルーヴルの修復費を稼ぐためだったりフランスの外交目的だったりで外遊もし、盗難や損壊事件の被害も被り、永遠の微笑も少々翳りがち? 全館エア・コンディショニングされるルーヴル内でも特別、防弾ガラスの中、彼女の居室は温度・湿度がしっかりきっちりコントロールされて、年に一度の定期検診まで受けて完全管理。それこそ国宝級の扱いを受ける。
ルーヴルの顔、アイコン、アイドル(?)でもあるから、通常展示だけを観に来た方々のために、定位置で微笑んでいないといけないのでしょう。同じ館内とはいえ、「国家の間」を離れて、特別展会場まで赴くこともままならないルーヴルの女王。
案内役の学芸員二人は、ダ・ヴィンチがこの肖像画に込めた想い、その謎めいた表情を読み取りながら、彼女が如何に館内でも特別な存在であるかを語る。これから先も永遠に特別な存在であると・・・。

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このライヴ・ヴューイング、最新のデジタル撮影技術での映像もさることながら、それに添えられたサウンドトラックスもなかなかのラインナップ。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品が多く使われて・・・「教会カンタータキリストは死の縄目につながれたりBWV4」を始め、「カンタータ6番 BWV6」、「同31番 BWV31」、「同134番 BWV134」、「同145番 BWV145」、「ミサ曲 ロ短調 BWV 232」、「パッサカリア ハ短調 BWV582」、『フルートとチェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031』から第2楽章『シチリアーノ』・・・、その息子、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハは「オルガン・ソナタ ト短調 H.135 Wq.65/32」、フランス古典音楽ならマルカントワーヌ・シャルパンティエ真夜中のミサ曲 h416」に、大バッハに並ぶ大クープランことフランソワ・クープランの『2つのミサ曲からなるオルガン曲集・修道院用ミサ曲』から「第5番 アニュス・デイ」、ジャン=フェリ・ルベルリュリの墓』から「第5番 後悔、深刻」、ギヨーム・ド・マショーの歌曲(B23)にマラン・マレのヴィオラ・デ・ガンバのための作品が2曲、イタリア初期バロックからジョヴァンニ・マリア・トラバーチやジョヴァンニ・ジローラモ・カプスペルガーに作者不詳の歌曲、ロシアからはアレクサンドル・ポルフィーリエヴィチ・ボロディン韃靼人の踊り」とセルゲイ・ラフマニノフの「幻想的絵画」、英国を代表してジョン・ダウランド」とヘンリー・ローズ前奏曲」、等々がダ・ヴィンチ没後五百年展に花を添える。
ブリジット・エンゲラーボリス・ヴァディモヴィチ・ベレゾフスキーによるラフマニノフ2台のピアノのための組曲 第1番幻想的絵画作品5」の「第2楽章 夜と愛と ニ長調」なんてアカンくらいにヤバイでしょ。他もスンゴイんだけど。BGMに没入してしまいそうになって、画面を見落としてしまいそう。
何れもこのドキュメンタリーのための新録ではなく、既録アルバムからの引用のようですが、楽曲に相応しい錚々たる演奏家が名を連ね、チェンバロ(クラブサン)にオルガン、ピアノ、リュートやフルート、アンサンブルに合唱まであって、映像そっちのけでも楽しめそう?!
ワタシ的には、(いわゆる)バロック音楽よりフランス古典音楽、なんですけど。
で、なんで、ラフマニノフ?? あッ、ダ・ヴィンチの作品をして『幻想的な絵画(Fantaisie-tableaux)』ってことか!?

ピタゴラスが音楽と数学の繋がりを教えてくださった先生なら、ダ・ヴィンチは芸術と科学の融合を示してくださった大先生。尊敬などという言葉では追いつかないくらいの大々々偉人。音楽を含む芸術が全ての学問に通じることを知らしめてくださった超々々エライヒト。Part2やPart3で、今回の特別展に出展された全てが網羅されることを望んじゃいます。

おフランス全土でも新型コロナ・ウイルス、それによる感染症が拡大の一途を辿り、そのため様々な規制が施され、入国するには3日以内に行ったPCR検査の陰性証明の提示と7日間の自己隔離、その後のPCR再検査を義務付けられていて、それを押してお上りさん出来たとしても、ルーヴル美術館は休館中であるとか。
ルーヴルに限らず、こうしたライヴ・ヴューイングが増えてくれるとそれはそれで有り難くはあるものの、やっぱり美術品は映像ではなく直視して、音楽もその場で生演奏を聴くのがいい・・・はず。
規制が緩んだ途端にヒトが動いて、感染がぶり返す可能性も高くて、いつになったら落ち着くのかが見極められないような状況。
今はとにかくお家に居て、映画からフランス語の学習をして、絵画や音楽、芸術のお勉強をしておかないと・・・?

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