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苦手と好物(海老カレーと「私の知らないわたしの素顔」) [散歩・散走]

ウイルスもバグも怖く無いんです、ITエンジニアの端くれですから。
平常心を保って、リスクにどう対処するかを心得ていれば何も恐れることは無い・・・はず・・・?!


コンピュータ・システム上のウイルスやバグなら未然に防ぐ予防策なり対処法、処置は心得ているつもりではあるが、ヒトや生物を媒介とするウイルスや病原菌となると(眼には見えないし)話しは別。
コンピュータでのレスポンスと同様に、感染のリスクを減らし、感染しても発症しないように免疫力、耐力を養っておけば・・・とクチで言うのは容易いけれど、なまなかじゃあ太刀打ち出来ない。今回のように流行が拡大してしまうと、普通に社会生活を営んでいるかぎり、完全な回避は難しい。

実はワタシ、眼に見えないウイルスはともかく、バグ(虫)は苦手。
コンピュータ上のウイルスは感染経路を遮断し(ある程度)防御出来ても、ヒトがプログラミングする以上、うっかりとバグらせてしまうこともある。デバッグしたうえでテストを重ねて都度バグフィクスはするものの、状況によってはそれが出来ない場合もある。

でね。そのせいなのか、実際のムシ、昆虫を初めとする節足動物の類いが好きではない。はっきり言ってキライ、あるいはコワイ。
子供の頃は昆虫採集もしたし、特撮映画『モスラ』に出てくる巨大な蛾を観て感動さえしていたのだけれど、エンジニアになって、身の回りにコンピュータやスマートフォン、タブレットなどの電子機器が増えるにつけ、ムシ→バグ→瑕疵・不具合という短絡的な連想から「忌まわしきもの、苛つかせるもの」として忌み嫌うようになっちゃって、昆虫に触れられなくなり、優雅に舞い飛ぶ蝶々さえ避けるようになって、突発性難聴を患ってからは真夏の蝉の声は耳に障って、挙句に海老や蟹などの甲殻類も殻、外骨格を纏ったままでは恐ろしい、怖くて食べられないほど?!
二対四足ならまだしも、三対六足や四対八足など以ての外の言語道断。この世のものとは思えない。何対かの脚は鋏状、ハサミになっていたりして、もしや地球外生命体ではないかと訝しむ。バルタン星人っぽい??
結婚後奥様にはさすがに「怖いから」とは言えず、「乳母日傘のボンボン育ち故カニやエビは殻を剥いてもらわないと食べられない」と言上したら、ならば食べなくてよろしいとお優しいレスポンス。お寿司の上のむき海老ならば食べられる。頭と脚を取って、天ぷらやフライ、衣をまとえばなお結構。いっそ擂り身にしてくださいませ。

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で、春の限定メニュー「海老カレー」である。
新阪急ホテル地下のパブ・ラウンジ「ビーツ(Beats)」は、ランチタイムはホテル伝統の味が楽しめるカレー専門店(?)で、定番ものとは別に期間限定のメニューも用意されて、カレー・マニアとしては外せないお店ではあるのだが、今回は・・・。

少々腰が引ける。

ライスの上にはシャンと背筋を伸ばして妙に姿勢のいい双子の海老。一方はフライで、もう一方はあられ揚げ、共に外骨格を剥がれて衣を纏ってはいるが頭もあれば尻尾もあって、長いヒゲこそ落とされているが、よく見れば脚も備わっている。
海老出汁で炊かれた(?)ライスの中にも沢山の桜海老が潜んで、こちらは想像通り、食べたらシャリシャリと殻、外骨格の感触。

でも、ね。

不気味でグロいヴィジュアルとは裏腹に、悔しいことに食べれば美味いのだよ、これが。海老フライも海老のあられ揚げもコロモがサクサクで身はプリプリとおいしいのだよ。
海老フライがトッピングされたカレーはよく見かけるけれど、ライスも海老風味はちょっと珍しい。その味が濃厚な分、海老の風味を活かそうと、カレー・ソースは辛さも控え目のあっさり目で、驚きはその色目。

カレーなのに白(っぽ)い。
スパイスの味わいは感じられるのだけど、それを上回るクリーミーなテイスト。オニオンとスパイスを炒め、ミルクで仕上げているのだとか。
定番のお薬味4種とも少し合い難い気がして、見た目からどうしてもカレーを食べているという気分にはなれなくて、風味が濃厚な「海老ピラフのクリームソースがけ」といった雰囲気、後を追うように食道あるいは胃袋辺りが辛味を感じる。
刺激的な辛さもよいけれど、たまになら柔らかいテイストも悪くない。節足動物門・甲殻亜門・軟甲綱・十脚目(エビ目)を退治てやった気にもなる。
シャカシャカと混ぜ合わせるジャー・サラダドリンクまで付いて、とてもお腹イッパイ。苦手なものでも満腹感を感じてしまう。

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ランチを堪能した後はシネリーブル梅田に移って、サフィ・ネブー監督、カミーユ・ロランス原作、ジュリエット・ビノシュ主演のフランス映画『私の知らないわたしの素顔』を鑑賞。フランス映画は苦手と仰る向きが多い気もしますが、ワタシは大好物で。
ウイルス禍にあって三密、閉所は避けるべきなのでしょうが、まァ、そこはそれ。
原題が『Celle que vous croyez』ですから、「あなたが思うもの」、「あなたたちが信じるもの」ということなのでしょうが、この「あなた(たち)」とは誰なのか?
英題が『Who You Think I Am』ですから「私を誰だと思っているの」という問いかけ。誰から誰へのクエスチョン? パブリック・イメージの私とセルフ・イメージのわたし。その「わたしの素顔」とは・・・?!

パリの高層マンションに暮らす美しき大学教授のクレール・ミヨー(ジュリエット・ビノシュ)は、齢50を過ぎてバツイチで子持ち(男児二人)。年下の愛人もいて、それなりに満たされた生活をしていたはずが、その愛人リュド(ギヨーム・グイ)が心変わりし若い女の元へと去って・・・(以下ネタバレ注意)。

クレール教授の告白を受け入れるのは新しく担当になった精神科の医師カトリーヌ・ボーマン(ニコール・ガルシア)。
ストーリーはフランスを代表する二大女優の対峙を軸に進むのですが、カトリーヌは言葉少なく時折り相槌を打つに留め、クレールの深層心理を炙り出していく。

リュドと別れその寂しさからクレールはSNS、Facebookを始めるのですが、本性を偽って、24歳の独身女性クララを名乗ります。
クレール(Claire)からクララ(Clara)は察しがついてニックネームかなと思いもするのですが、ご丁寧に若い女性のポートレイトをプロフィールに添えて、年齢も半分以下に、サバ読み過ぎ!!
彼女が本性を偽ってFacebookを始めたのは心を移したリュドの行動を探るため・・・だというから恐ろしい。SNS上でリュドに近づき、彼が誰といるかを突き止めんがため。
が、美しいクララに魅せられたのはリュドの友人で同居人のアレックス(フランソワ・シビル)。彼を通じてリュドを追ううちにクレールアレックスの直向きさに打たれ惹かれていくのですが、逢いたいと請われても、触れたいと望まれてもクララは偽り、逢うことは適わず・・・。
DMを遣り取りするうち熱意に絆され”動くクララの映像”をアップロードしちゃうのですが、プロフィールにも使われたこの若い女性はさて誰でしょう?
本性を明かして、アレックスに受け入れられたい。クララとしてではなく、クレールとして愛し合いたい。その思いはギリギリのところで思い止まって、すれ違う二人。
それを機会に、アレックスから頻繁に届いていたクララ宛てのDMは途絶え、不安に思ったクレールが探ってみると、クララにフられたショックからアレックスは自死を選んだという報せ。

一人の青年の死に至ったヴァーチャルな擬似恋愛。それをリセットするために、クレールはオートフィクション、私小説を執筆し、クララアレックスの本懐、二人の愛を成就させる。

・・・とここで終わっちゃあ詰まらない。ここからが真骨頂。
アレックスの自殺は、クララの本心を探るためにリュドと仕組んだ嘘。
仮想と嘘と虚構が交錯する中、カトリーヌ医師が知ったクララことカティア(マリー=アンジュ・カスタ)の真実とは・・・。
クララは、クレールの姪で夫ジル(シャルル・ベルリング)を寝取った女カティアへの復讐心から、夫を寝取られた妻クレールが作り出したアバター。

ジルカティアへの復讐なら、リュドアレックスではなく、クララとしてジルに近づけばよかったのでは・・・と思うのですが、ジルはSNSやってなかったんやろね、多分。ジルへの愛情よりリュドとの愛欲が優っていたんやろね、きっと。そこにアレックスとの疑似恋愛が絡んで・・・。
何れにせよ、恐ろしいお話しで。サイコロジカルサスペンスというより軽くホラーですか。

このシネマ、ジュリエット・ビノシュの新境地という謳い文句なのですが、確かに、大学教授クレールとSNS上でのアバター、クララを演じ分け、カトリーヌに向かって魔性めいた笑みを浮かべながらアナタはFacebookをやっているのと挑発するサイコパスな一面も見せて、どれが「素顔」なのかと思わせる。
公序良俗に即して暮らすクレールと夫を寝取った姪のような奔放で率直な生き方を望むクララ。その二面に挟まれた精神病質で孤独な女。
大きく化けているわけではないのだけれど、メイクや衣装も変わっているのでしょうか、クレールに扮している時とクララを演じている(クレールの)時とでは醸し出す雰囲気まで異なるようにも見えて。プロフェッサーなマダムと恋するマドモワゼルがそこに居て。
対するニコール・ガルシアもさすがの風格。ほとんど台詞もないのだけれど、表情と仕草だけでジュリエットと張り合っちゃうあたりは貫禄さえ感じさせる。

クレールリャドクララアレックス、それぞれの熱情は仮想現実の中の駆け引きとなって、最後は別れた夫ジルと、夫を寝取った女カティアへのジェラシー、リベンジ。そして、クレールVSカトリーヌ。美しさに老いという翳りを迎えた、知性とプライドの人、六条御息所のような女性。
とにかく、ワタシもSNS、FacebookやInstagram、Twitterのお友達は吟味しなければ。誰彼なく繋がっちゃあいけないんでしょうなァ。プロフィール画像に騙されるなってことやね。違うか!?

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