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岸城神社でガムラン [音楽のこと]

今日は他にも色々とイベントが有ったのですが・・・。
岸和田市の、勇壮なだんじりで知られる岸和田祭発祥の宮、岸和田城下総鎮守、岸城神社に参ります。

行楽日和の五月とあってか、今日は各地で様々なイベントが催され、自転車関連だけでも、豊中市の服部緑地では自転車のスワップミート「シクロジャンブル」があり、堺市の大仙公園付近では自転車ロードレース「Tour of Japan (T.O.J.)堺ステージ」も行われる。

先週の「母の日」は「ワンコイン市民コンサート」が重なったものだから実家には帰れず、その代わりというのも何だけど、今週は堺市の実家で独り身の余生を過ごす母を見舞うつもりで、そのついでにT.O.J.観戦を予定していたのですが、それより優先したいような音楽イベント、ガムラン関係の催しがあるとの報を得て、ならば何をおいてもそちらに伺わねばと相成って・・・。

岸和田市の岸城神社では月に一度「むすび市」と呼ばれる手づくり市が催されるそうで、今月はそれに「ジャワ舞踊奉納公演」が加わるのだという。

岸城神社での『ジャワ舞踊奉納公演「観月のゆうべ」』は以前から行われていたようで、ワタシもガムランを演り始めてからそれを知って、お誘いも頂いたのですが、夜公演で日時が合わずにいました。
それが、今回は日曜日のお昼どきの開催になるとのこと。

実家の在る堺市から岸和田市、それほど遠いという距離でもない。
独立するまで堺市で過ごし、泉州界隈でもヴイヴイ徘徊していて、岸和田方面にも母方の親類縁者が居たりもしたのですが、結婚後の新居は大阪市内北部に落ち着いて、買い物なり、散策するのも梅田界隈から北摂近辺、実家には月に一度は帰っても、親戚筋も代替わりし、堺市より南へは脚も遠のいて。
こんなキッカケでもないと、もう訪ねることもないのではないかと。

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午前中を実家で過ごし、早めの昼食を摂って、いざ、岸和田へ。
ジャワ舞踊奉納公演」は12h30の開演予定。
Facebookで開催日時と場所を見掛けただけで、内容的なことは不案内のまま。が、行けばなんとかなるでしょうと、岸和田城近くに着いたのが12h20ごろ。

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岸城神社
にはすぐに行き着いて、境内に立ち入ってみる。
内外には「むすび市」と染め抜かれた幟が立ってはいるが、マーケット会場となっているご神域は意外なほどひっそり閑としている。
露店が幾つか並んではいるが、人影は思いの外疎らで、これから舞踊公演が始まるという気配も感じられない。
もしかして、ご本殿の中でのパフォーマンスかと、参道を辿るとその傍らに茣蓙が敷かれ、見覚えのある青銅製の楽器が整然と並べられている。
辺りにパフォーマーの姿は見掛けられず、観覧席も無ければ、日除けの類いも見られないで、これでは楽器の虫干し、天日干し。

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とりあえず、ご本殿に参拝。
岸城神社の境内地は当時の岸和田城主、小出秀政によって隣邑に鎮座していた牛頭天王と、岸和田城築造以前に当地で祀られていた天照大神と八幡神が併せられ成立したそうで、岸和田城の本丸と二の丸を重ねた形が「ちきり」に似ているところから、かつて「千亀利(ちきり)城」と呼ばれ、その鎮守神であった岸城神社が「千亀利のお宮」として、幅広くご縁を結ぶ神様と信仰されてきたのだという。縁結びの神様。縁結びから「むすび市」。

むすび市」をひと通り見て廻る(そういえば、そちらの写真を撮るのを忘れておりました)。食べ物、飲み物も商われているが、お腹が空いてるわけでもなく、特に気を引くようなものもなくて、ご本殿前に戻ってみると、そこに見知ったお顔が二つ、三つ。
ご挨拶をし、お話しを伺うと、公演プログラムは、バリの舞踊があって、それに続いてジャワ舞踊、人形芝居を挟んで、さらにジャワ舞踊が続くとのこと。

12h30を過ぎた頃から会場設営。
ガムラン楽器が並ぶのはご本殿に向かって参道の左側で、参道の右側に床几台が三つ、四つ並べられ、PAとスピーカーが用意される。
伝統芸能もはんなりしているけれど、何から何までのんびりしているのがインドネシアン・スタイルなのかしらン?! ともかく、用意された床几に腰掛け、開演を待つ。そうするうちに、オーディエンスも三々五々。

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用意が整ったところで、バリ舞踊から。
バリの伝統芸能というと、同じガムランでも勇壮なイメージがあったのですが、今回は女性7名でのダンスで、神社に奉納する踊りということでもあるのでしょう、ゆったりと嫋やか。音楽は生演奏ではなく、PAを通したレコード。

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バリ・ダンス隊がはけたら間を置かず、聞き慣れた青銅楽器の楽音が続きます。その音に導かれるように、今度は思い思いに色とりどり(ピンク多め!!)の衣装を着けたジャワ舞踊の一行、こちらも女性ばかり5名が参道へと歩み出す。
演奏されておられる方々も色とりどりで、男性はナナンことアナント・ウィチャクソノさんお独りだけで、あとは全員お美しい女性陣でまさに百花繚乱の風情(ここは一応大書・太書しておきますね)。

ワタシも縁あって、ジャワ・ガムランのワークショップに通い、もう2年半にもなって、年に二回の定期演奏会にまで都合5回も出演させて頂きながらも、まだまだその真髄に届くわけもなく、その調べを聴いてもなんの曲かは俄かに分からない。
元来、譜面やスコアのないガムランは、2つの音階を使い分けたり、その時々に応じて調子を変えてみたり、その折り折りで編成員数も変わってしまう。使われる音域も狭くて、音楽的変化に乏しいのだけれど、テンポやグルーヴはその時の気分次第。伝統芸能でありながら、実に大らか。楽曲ごとに、特徴的なモティーフやメロディを持っていたり、リズムが大きく異なるわけではないので、判別が難しいのね。
が、当然、分かる人には判るわけで、ワタシも何れそうならないといけないのでしょうが、今日はガムランのアナライズに来たのではなくて、舞踊鑑賞が主体で、目の保養、耳の癒やし・・・としておきましょう。

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踊り手が変わって、グループ・ダンスからソロ。
員数が変わっても、その振り付けに大きな違いは無いようにも見えて、どちらもいわゆるキレッキレのダンスといった印象ではなく、極ゆったりとしたしなやかな動き。その意味するところは分からないけれど、手指の仕草、脚の運びに約束事、”型”があってそれをはんなりとした流れで繋いでいるのでしょう。バレエで言うところの・・・ええ、ワタシの場合、血中仏蘭西人濃度が高いもので・・・「パ(Pas)」を繋いだ「アンシェヌマン(Enchainement)」にも近い印象。ジャワの「ヴァリアシオン(Variation)」も見応えは充分。ジャワ中央部の宮廷で育まれたらしい雅やかなダンスは、その楽音とも相まって、実に優雅で気品溢れるもの。

極日本的な宗教施設にインドネシア、バリやジャワの伝統芸能。多少違和感を覚えるかとも思えるのですが、さにあらず。奉納公演ということもあって、それに相応しい演目を選ばれているということもあるのでしょうが、違和感どころか、うってつけの場所のようにも思えます。
以前に一度、お寺さん(浄土真宗本願寺派正福寺)での報恩講の一環としてジャワ舞踊が奉納されるのを拝見させて頂いたのですが(→記事参照)、その時は日暮れの薄暗い堂宇にお灯明が揺れて、そこで舞われる姿はまさに “浄土の天人”といった趣きで、なんとも幻想的。数名の僧侶による読経とのコラボレーションだったのですが、それが当たり前のトラディショナルなスタイルなのではないかと思えるくらいドンピシャにフィットしているようにも感じられて、今回は縁結びの神様の御前、御神楽や神楽舞いと同等ということでこちらでの奉納上演も許されているのでしょうね。
言葉は違っても、音律や節回し、振り付けが異なっても、祈りの気持ちは変わらない・・・ってことなのでしょうね。

このブログでも時々記しているように、ワタシは常々、(いい)音楽は祈り、願いだと考えます。
ワタシ自身は、信仰心や宗教への関心は薄いのですが、ただ漠然とした祈り、あるいは一途な想いだと感じます。
「ラーメン食べたい」でも、「あなたに逢いたい」から、「良縁祈願」や「安産祈祷」、「病気平癒」、「五穀豊穣」、「国家安寧」、もっと崇高な祈り、願いでも、「心願成就」、「神恩感謝」、エトセトラ、祈祷したいことは人それぞれ。その祈りの言葉に節が付いて音楽になって、宗教と音楽は密接な関係。礼拝のための宗教音楽になって、さらには、言葉で表せないこと、口にすることを憚られる言葉をエキスプレッションするためにダンスになって、想いをコレオグラフィーに込めたのでしょう。祈りの言葉、願いの音楽をより具象化した形でもあるのでしょう。

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さて、祈祷の踊りは一旦置いて、演台が用意されて、人形芝居が始まります。
本来はジャワ伝統の影絵芝居「ワヤン・クリ」。それから光源とスクリーンを取り去っちゃって、お昼間の屋外ヴァージョン? 水牛の革に極彩色で色付けしたお人形をハッキリスッキリ見せようということでもあるのでしょう。
本日の演目は、小さなジャワマメジカ(カンチル)が大活躍、森の仲間たちと活劇を繰り広げる「ワヤン・カンチル」。
お昼間の公演ということで、小さなお子さんたちも多くて、分かり易いようにというご配慮なのでしょう。だから、マメジカはマメジカ、オニはオニ、ゾウさんはゾウさんと分かるように、影絵ではなく、光源とスクリーンを廃しちゃって、人形の操演と台詞、効果音まで担当するのはナナンさんお一人ですが、セリフは日本語化されて、別途ナレーターとインタヴュワまで付いて、お子様からお年寄りまで誰もが楽しめるような演出とされている。その人形芝居を盛り上げるように、ガムランとともに歌われるのも日本語化されたもの。
ストーリーは・・・、森林を破壊するオニをカンチルがトンチを使って懲らしめる・・・というシンプルなもので、森の動物・・・オニを恐るカエルやトリ、サルも登場すれば、因果応報、落とし穴に落とされたオニを助け出してあげるのは力持ちのゾウさん。
ワヤン・カンチル」はこれまで2回拝見して、これで3回目なのですが、その度に登場する動物も変わって、ストーリーやセリフも異なって、演者の気分次第(?)、何回観ても飽きることなく楽しめるようになっている? 今回も熱演でした。

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舞踊に戻って、今度は三人での踊り。
バレエなら「パ・ド・トロワ(Pas de Trois)」となるのですが、ジャワ・ダンスの場合はなんと言うんでしょう。衣装も、先の2組と異なって、その頭上には派手やかな飾りまで戴いて、様式なり流儀が違うのでしょうか。お作法的なことは理解が及ばないのですが、とてもトラディショナルなものを感じます。

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最後は「ヴァリアシオン(Variation)」・・・ソリストの踊り。
こう言うとパフォーマーの方々に叱られちゃうかも知れないのですが、ここまで2時間ちょっと拝見してきて、「バリ&ジャワ舞踊奉納公演」であることを忘れて、3幕5場のグランド・バレエ(Grand Ballet)を観ているような気さえするような・・・。
バリやジャワの伝統舞踊、その”型”には深い意味が込められているのでしょうが、門外漢のワタシからしたらそれは美しい「パ(Pas)」。バリのPas de SeptからジャワのPas de Cinq、Variationに続いて第2幕は劇中劇、あるいはディベルティメント(Divertiment)的な「ワヤン・カンチル」、第3幕はPas de Troisから最後のVariation、その一連は古典的で最上級なクラシック・バレエ・・・みたいな。
長い歴史の中で磨かれた伝統的な様式美。バレエのようなエンターテイメントではなく、もっと深い意味、意義を持つ祈りの踊りなのでしょうが、それを読み解くにはもう少し時間が掛かりそうで。それが理解出来るようになればもっと楽しめるとも思います。まァ、クラシック・バレエにもファランドール(Farandole)やボレロ(Bolero)などなど伝統的な民族舞踊も出てきますし、祈りの心が国を問わないのと同様に、踊りの優美は洋の東西を問わない・・・としておいてくださいな。

それはそうと、今回ブログ用に多くの写真を撮影し、最後に集合写真まで撮らせて頂いたのですが、断りもなく公にするには気が引けて、その多くはFacebookで限定公開にさせて頂きました。と、それはFacebook上の友達の輪として瞬く間に広まって、ご出演されておられた方々から友達申請を頂戴することとなって、それこそ「千亀利のお宮」の縁結びのご利益を感じないではいられません。これをご縁に、ワタシももうちょっとガムランを頑張らなアカンなァとも思った次第で。
それもあって、目の保養、耳の癒やしという以上に、愉しませて頂きました。

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