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番外編パート2? 近藤浩志(Vc)&河合珠江(Pf)リサイタル [音楽のこと]

陽光が朗らかな土曜日の午後。今日は逸翁美術館マグノリアホールを訪ねます。

小春日に
  楽音温し
    チェロソナタ
      (42点・凡人)

先達て訪れたのは、ヴァイオリン奏者の林佳南子さんとコントラバス奏者の池内修二さんにチェンバロ奏者の吉竹百合子さんを加えた、「大阪クラシック」番外編っぽい、古楽器トリオでの「マグノリア・サロンコンサート」でしたが、今日は、同じく大阪フィルハーモニー交響楽団からチェロ・トップ奏者の近藤浩志さんがご登場。

近藤さんといえば、大フィルのトップ・チェリストでもあり、他のグループやソロでもご活躍中で、「大阪クラシック」でも多くの聴衆を集める名物パフォーマー。

ワタシも機会があれば、毎回「大阪クラシック」での演奏を拝聴するようにしていたのですが、今年は行列と立ち見がしんどいからと休日の、それも有料公演ばかり巡って、その演奏に触れることはなかった。多方面でお忙しく活躍されておられる中、毎年、年末にはマグノリアホールでリサイタルされるので、そちらでゆっくり聴かせて頂けたら・・・と心待ちにしていたわけですな。

今回は、「大阪クラシック2017」の『第24公演』と『第64公演』でも共演されておられたピアニスト、河合珠江さんをパートナーとしたチェロとピアノでのディオ・リサイタル。
プログラムも『第24公演』と同じグリーグチェロソナタ イ短調 作品36。まさしく「大阪クラシック」の再演といった感じですな。

先月までは、「秋風のヴィオロン」と、まァ、ポール・ヴェルレーヌを気取っていたわけですが、木枯らしが色づいた木々の葉を振るい落とし、それに加えて時折り振る雨が雪に変わろうかというこの時期になって、”頻にうら悲しきヴィオロンの音”は少々寒々しい。
凩、時雨の哀れさに相応しいのは・・・チェロの声音。冬凪の静けさに染み入るのはチェロ・・・とひとり決め。初冬の小春日のような、どこか暖かさを醸す低くて柔らかな楽音。
昔観たフランス映画、クロード・ルルーシュ監督作品「A NOUS DEUX(夢追い)」の中で、主演のカトリーヌ・ドヌーヴが弾くチェロが燃え上がる様があまりに印象的で、それは彼女の夢の中での現象だったのだけど、それが今以て忘れられず、人肌恋しい冬の訪れにはチェロ・・・、以来、チェロはワタシにとって憧れの楽器のひとつ。

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今日は途中寄り道する余裕がなかったので、逸翁美術館内の喫茶室IAMでランチ。
ポットに入れられた「レトロなビーフカレー」を一気に飲み干してお腹を満たし、甘い香りが芳しい「オレンジペコ」でココロまで満たされたら、ちょうど受付開始の時刻。
ワタシの隣りのテーブルでは本日の出演者2名とスタッフさんがフツーに昼食を摂っておられた。

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開場が13:15で、開演が14:00。チェロとピアノのデュオで、さて、どちらを重点的に聴き止めるか・・・と思いながらも、1905年製Steinway & Son B-211の装飾的なスコア・スタンドがほぼ正面に見える席を確保。ここならスコアを追いながら、お二方の手元も観えて、演奏を視覚的にも捉えることが出来る。いや、なに、細かい音符の、オタマジャクシの頭までは視えなくても、ざっくりと音形が、流れが追えればそれでいい。

そこに用意される譜面は、
ヨハネス・ブラームスチェロソナタ 第1番 ホ短調 作品38
エドヴァルド・ハーゲルップ・グリーグチェロソナタ イ短調 作品36

毎回、マグノリアでの近藤さんのリサイタルは、歌曲をチェロにアレンジメントしたものや他の楽器用の楽曲をトランスクリプションしたものを演奏されることが多かったはずですが、今日は”本気の”、いや、いつも以上に気合いを入れて臨まれるとのこと。
その、演奏前の前説では、このブラームスの「第1番」は、東京藝術大学在学中によく演奏されていたそうで、その当時は喫茶店のマダムから「まだまだだね」と言われて、それ以来封印し、今日のリサイタルで30年ぶりに開封するという曰く付き(?)。
チェロソナタ」となっているが、『ほとんど協奏曲のように、相競って演奏されるヴァイオリン助奏つきのピアノソナタ』・・・、(それだとベートーヴェンになってしまうので)ヴァイオリンをチェロに置き換えて、チェロ助奏つきピアノソナタ。近くに居ながら遠くに在るような、寄り添っているようでありながら融和仕切れないような、着かず離れず、もどかしく思わせぶりな距離感がピアノとチェロ、双方を引き立て合っているようでいい塩梅。同じ”ドイツ三大B”に連なるJ.S.バッハやベートーヴェンのいいところを引き継いだような、伝統芸能的に安心して聴いていられる作品。
それを奏でる近藤さんのチェロは、弦の高張力を感じさせるくらいに硬質な音色。しなやかな弓使いで、それをコントロール。千変万化、硬柔自在に歌わせている印象。
対する珠江さんのSteinwayはというと、煌めく余韻が視えるほどに輝くような、黒くて大きな宝石箱。出しゃばらず、かといって控え過ぎず、チェロとのバランスも申し分なし。
ここの1905年製ヴィンテージ・スタインウェイは、少々ツンデレ、弾き手の力量を如実に映す鏡のように思えて、そこが面白いと感じるのだけれど、さて、実際演奏してみてどうなんでしょうね。

休憩なしに2曲目。
大阪クラシック」でも披露されたグリーグの「ソナタ イ短調 作品36」。聞けば、この楽曲、近藤さんと珠江さんでレコーディングもされて、近々CDとして販売されるのだとか。
グリーグ唯一のチェロソナタで、アマチュア・チェリストである兄のために作曲したと伝えられる作品。
第1楽章のドアタマや端々にキラメク小春日を連想させるようフレーズも織り込まれて美しさは感じるのだけれど、お兄さんからのリクエストだったのでしょうか、ブラームスの「第1番」がパパ・バッハや楽聖さまから引き継いだ伝統芸なら、こちらは自家薬籠中の物、自身の作品の美味しいところが幾つか引用されて、それがかえってちょっと纏まりに欠けるような・・・。
かなり高い音域まで要求されるチェロ。汗だくで演奏する近藤さんに対して、涼し気な表情のままスタインウェイを弾く珠江さんと好対照で、ちょっと笑っちゃう・・・。いやいや、お二人とも大熱演で、CDの仕上がりも楽しみなところ。

アンコールは、カミーユ・サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭(動物学的大幻想曲)」から『第5曲 白鳥』。ソナタ2題で手一杯、時間がなくてアンコールは定番曲・・・と仰るが、これも十分に聴かせてくださる。
さらに鳴り止まない拍手に応えて追加のアンコールは、珠江さんをじっと座らせたまま、近藤さんがヨハン・ゼバスティアン・バッハ無伴奏チェロ曲。オーディエンスだけでなく、ピアニストまでうっとりため息で終演。最後まで楽しませて頂きました。

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