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大阪クラシック2017 第81公演 『フィナーレ』 [音楽のこと]

大阪大学豊中キャンパスでのジャワ・ガムランのお稽古を終えたワタシが「大阪クラシック」、今年の締めくくりとなる「第81公演」の会場近くへと着いたのは午後5時を少し回った頃。


台風が接近しているとかで、大阪も朝から雨が降り続く中、他の公演会場へと足を運ぶよりクロージング公演が催されるフェスティバルホールの近くで時間を潰す方がいいだろうと、その地下、フェスティバルシティ内のカフェ、その奥の喫煙室に席をとって、チーズケーキとアイスカフェラテ、三本のタバコを味わいながら、iPadで「第81公演」の演目となる「チャイコフスキー交響曲 第5番 へ長調 作品69」の予習を終えたのが、開場時間を過ぎた18:30。
地下からエントランスを抜けて、レセプションを通過してホワイエ。そこでもう1本タバコを吸ってから指定された座席につく。
第81公演」の開演は19:15であるが、19:00から恒例の「指揮者大植英次によるプレトーク」が始まる。

この公演でのワタシのお席は「1階8列11番」。グランドハープのすぐ前辺り、ステージ下手にかなり寄った位置で、近過ぎて、果たして低音楽器までバランスよく聴こえるのかが心配になる。

19:00。ゲネプロを終えたステージでは、まだ数名のメンバーが残り音作りに余念のないところ。それが裏に下がって、大阪クラシック・プロデューサーの大植英次がご登場。何やら大きな紙袋を持参されておられるが・・・。

まずは、今年も無事に「大阪クラシック」が開催されて、事故もないうちに最終公演まで迎えられたこと、今年も各公演を巡ってみて何処も多くの方に来て頂いたことへの感謝の言葉。そして、出演者やスタッフさんたちへの労い。
で、紙袋の中は何かと言うと、この期間中にプレゼントされたものの数々・・・だとか。大きなルーペや鏡、551蓬莱の豚まんや栄養ドリンク、何故かシークレットブーツや日本語学習用玩具まで、et cetera。多くの聴衆やスタッフさんに労われ、気遣われて、続けていられるのだと仰りたい・・・のでしょう、多分。マエストロも還暦をお迎えになったということで、紅いちゃんちゃんこ・・・ではなく、赤い法被?!
チャイコフスキーの「第5番」についての解説は・・・、まァ、そんなに時間は取れませんわね。

プロデューサーが一旦下がり、入れ替わりに大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバーがステージに登場。夫々の持ち場について、2,700名のオーディエンス、万雷の拍手で最後に迎えられるのは首席コンサートマスター田野倉雅秋さん。
頃合いを見払ってオーボエが”ラ”の音。それまで無秩序に、各々が各々の言語、語法で独り語りしていたのが、それを聴いてひとつの秩序のもとに和合する瞬間。個々の楽器群がオーケストラへと一体化する、”逆バベル現象”とも呼びたいような、秩序と調和の時間。
そして、ひと際の拍手に迎えられ、ステージから一段高いポディウムに、プロデューサーからコンダクターへと変貌した大植英次が登壇することで、ステージのオーケストラと2,700名のオーディエンスがひとつになる刻限。体感的に密度が高まった・・・というか、ホール全体がひとつの結晶へと変化してしまったような印象。

今年の最終公演のプログラムは、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲「交響曲 第5番 ホ短調 作品64」。

クラリネットが密やかに投げ掛ける「運命のモティーフ」。それが低音楽器群に伝播する。静かな熾火のような、ワタシの席から観えないところから広がる「運命動機」が眼の前の第1ヴァイオリンへと伝わると、もう例えようもない絶頂感。その導火線を煽りつつ、鎮めつつ、ステージ上にドラマティックな劫火を操るのはマエストロ大植
秩序と調和・・・ではあるのだけれど、それは激しく揺れ動く。
個々の楽器の楽音がひとつのハーモニーとなってワタシを包み込む。それはひとつの緻密な宇宙となって、そのリズムが胸をときめかせ、メロディがワタシを陶酔させる。フェスティバルホールのシートに座しているはずがふわりと浮き上がったような心持ちがしたかと思うと、ステージへと、ポディウムへと引き寄せられるような、強い重力を感じて・・・。
ドラマティックなチャイコフスキーとセンセーショナルな大植英次が融合反応して作り出す強いグラヴィティ。繰り返し押し寄せる動機に、動悸が同期してドキドキ・・・?! 抑揚が余りに激しくて、揺さぶられようで、軽い目眩を感じる。
我に返った時には、もうフィナーレ、「運命動機」が高らかに鳴り響く。
静かな終演。ホールを揺るがすほどの拍手と歓声、喝采。

そして・・・。

タクトが首席コンサートマスター田野倉雅秋さんへと託されて、アンコールは恒例の「山本直純編『日本の歌メドレー(夕焼け小焼け~七つの子~ふるさと)』」。
ステージを駆け下りたマエストロは、1階客席を駆け抜けたかと思うと、3階席。そして、2階席。『ふるさと』が終わるのと帳尻を合わせるかのようにステージと戻る。
休む間も無く、間髪入れず、大阪市章・澪標を背中にあしらった法被を羽織ると、舞台下手でそれを待ち構えた打楽器奏者、久保田善則さんの手にした拍子木が「チョン!」と鳴って、グランドフィナーレは「外山雄三作曲『管弦楽のためのラプソディ』」から日本民謡『八木節』。
観客総立ちのヒートアップ。
ワタシは立ち上がりこそしたものの、眼は壇上のコンダクターではなく、ステージ奥の打楽器奏者と、その手前のハープに釘付け状態。せっかく8列目の、それも極端に下手に寄った座席、普段あまり着目する機会のない樽太鼓やダブル・アクション・ペダル・ハープの妙技をじっくり観察させて頂いて。思いの外高く澄んだ音で鳴る樽が打ち出すビートを感じ取りながら、華麗に乱舞する平野花子さんの指先を凝視して、独り北叟笑んでおりました。ええ、マニアックですとも。パラノイド?

最高潮まで高まったヴォルテージを全身で押し留めるマエストロ。その熱気は2,700の大喝采へと変換されて、大団円のクライマックスは揮発するように昇華。今年の「大阪クラシック」もこれにて閉幕。
十分堪能させて頂いたような、まだまだ物足りないような。祭りのあとの寂しさと、このもどかしさが来年へのモチベーション?
100年先はともかく、来年はさて、どんな楽曲がどう披露されるのか。鬼が笑おうが、今から一年先が楽しみで・・・。
とりあえず、今年はこれでお開き?
いえいえ、「大阪クラシック・番外編」があるでしょ?!

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