SSブログ

大阪クラシック2017 第48公演 『ピアノ・スペクタキュラー』 [音楽のこと]

昨夜の「第47公演」に続いて、「第5日」最初の公演に向かいます。えッ、平日のお昼間?
まァ、堅いことは抜きにして・・・。

大阪クラシック」で、ワタシが毎年楽しみにしているもの。
もちろん、オープニングとクロージングの華やかな管弦楽は譲れませんが、もうひとつ、中日辺りに催される『ピアノ・スペクタキュラー』。
複数台のピアノで、管弦楽をトランスクリプションする公演で、プロデューサーでもあり大阪フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者で在らせられる大植英次もピアニストのひとりとして参加するプログラム。
これまでに、昨年はドビュッシーの「」とムソルグスキーの「展覧会の絵」を3台6手で。これには混声合唱がサプライズ参加。
一昨年、2015年には、ピアノ3台でホルスト惑星」。
2014年は3台6手でベートーヴェンの「第九」に合唱付。ベートーヴェンの作曲風景の再現として、マエストロが寝そべってピアノを演奏したのが、衝撃的で今も忘れられませんな。それに4声の独唱と大人数の四部合唱までついて・・・。
2013年は3台6手でベートーヴェンの「第5番」がジャジャジャジャーン!!。
2012年はワーグナータンホイザー序曲」とストラヴィンスキー春の祭典」を4台8手。

ねッ。ちょっとワクワクしちゃうでしょ?! 全部、お仕事をサボって観に行ってしまいました(てへ)。

IMG_1797.jpg

今年は「第5日」の「第48公演」として、大阪市中央公会堂中集会室に於いて、エクトル・ベルリオーズ作曲「幻想交響曲 作品14」をピアノ4台版のアレンジメントで。

開場が12:30で、開演が13:00。
有料公演であるにも関わらず、このプログラムは全席自由でチケットも早々と完売している由。ほとんどの観客は大植英次のご尊顔を拝し奉るのが目的で、彼の近くから席が埋まり、そのために開場時間よりうんと早くからヒトが押し寄せるだろう・・・と計算しておきながら、ワタシが公会堂にたどり着いたのは12:00の少し前。
会場までは階段を登るようにと指示されて、それに従うと、4階には辿りつけず、2階途中が行列の最後尾!!
マジか?!
どうやら中集会室前ロビーにはまだ入れず、4階踊り場が先頭であるらしい。
開場時間が迫って、どうにか4階ロビーに入るが、ワタシの前には約百数十人!! 先頭さんは公会堂オープンと共に飛び込んだとのこと。気合の入り方、入れようが違うのね。全席自由ではあるが、前売りチケットの枚数だけ・・・、約400数十席は用意されているとのことではあるが・・・。
マエストロのご尊顔をお側近くで拝見するより、4台のピアノがバランスよく響く位置が欲しいワタシとしては、大植さんの演奏位置よりピアノのレイアウトが気になるところ。
ロビーでの案内によると・・・、

IMG_1798.jpg

ナニ?! なんだ、このレイアウトは・・・???!
ホールの4面の壁ギリギリにピアノを追いやって、その間を客席で埋めるようではあるが・・・。
昨年はホール中央に3台のピアノを”三ツ矢サイダーのマーク”状に並べて、オーディエンスがそれを取り囲んだ。今年はピアノが4台だから、それが十字に並べられて、聴衆がその周りを囲むのだろうと思っていたのだが・・・。
これだと、ベスト・ポジションは何処だ?! と計算しているうちに開場の時間。
ピアノ4台を対角としてその対角線が交差する、スクランブル交差点中央がバランス的にはいいだろうとそこを目指す。

IMG_1799.jpg
IMG_1800.jpg

その変則レイアウトの400席は全て大植さんが演奏するピアノの方角を向くように置かれて、そのピアノはBösendorfer、他の3台はYAMAHA製。

照明が落とされ、開演の時間。
万雷の拍手に迎えられて、大植さんの登場。
すぐにマイクをとって、挨拶もソコソコに楽曲解説。
どうやら、思い入れが強くて、テンションが上がるとますますエイリアンっぷりが上がってしまうそのトーク。ちょっと要領を得ないので、インタープリテイションすると・・・、

エクトル・ベルリオーズが1830年に作曲した最初の交響曲。そのスコアを初演前に見たフランツ・リストが面白がって、初演に先立ちピアノ4台で演奏してみようと、そのための楽譜を書いて、ピアノが弾けないギター&リュート奏者のベルリオーズに変わって、その演奏会にはリストロベルト・シューマンヨハネス・ブラームスがピアニストとして名を連ねた。もう一人が誰であったかは今もってナゾ、リストの弟子であったか、何処の誰方であったのか・・・。
その際、とある(おそらく広い)サロンの四隅にピアノを置いて、非公開で演奏された・・・らしい。よって、聴衆に向けて公開演奏されるのは、今日が世界初演である・・・とのこと。
そのサロンでの非公開演奏のレイアウトを真似してみたのが、今日のこのスクランブル交差点みたくなったピアノ配置・・・っと。
ホールでの初演前に、前宣伝的というか、前夜祭的に、いわゆるパトロン筋にチラッと披露するのはよく行われたイベント。今日の我々400名が当時のパトロン、ブルジョワって訳ですな。超プチブルですが・・・。

ベルリオーズ
がロンドン滞在時に観たシェイクスピア劇「ハムレット」の主演女優に懸想して、その想いが受け入れられず、彼女への憎しみが募り、その後別の女性ピアニストと恋愛関係に発展するさなかに作られたのがこの楽曲で、『ある芸術家の生涯の出来事、5部の幻想的交響曲』が正式タイトル。「恋に深く絶望しアヘンを吸った、豊かな想像力を備えたある芸術家」の物語・・・って、恋の悩みによる絶望の発作からアヘンによる服毒自殺を図るなんて、かなりヤバい奴じゃあないか!!

解説のあとは、三名のピアニストが呼び込まれ、紹介もそこそこにその三名が持ち場に散って、演奏開始。
昨年は、ヴィクトル・ハルトマンの遺作絵画を掲示するために立ち回ったパフォーマー大植も、今年はBösendorferの演奏と他三名への指揮、指示に徹して・・・。
ファンタジックな交響曲が4台のピアノにどう割り振られるのか。管弦楽版での予習はしてきたけれど、フランツ・リスト版のスコアは見たことがないし、4台8手ピアノ版は何しろ今日が世界初演ということですし・・・。
マエストロBösendorferが序奏部を奏でたかと思うと、それを美和さんが拾って、史郎くんに繋ぐ・・・が、んン、さすがに真後ろになる有飛さんのYAMAHAが聴こえ辛い。
ざっくり分けると、2台4手を×2して、それぞれの役割をローテーションしている感じ。「幻想交響曲のキャッチボールやァァァ!!!!」的な・・・?! 面白いけれど、眼が回る・・・というか、耳が廻る。

中集会室に入る前は、どうせ有料ならば以前のようにフェステバルホールなり大きな会場で、全席指定公演として頂いた方が公平なのでは・・・と思ったが、昨年に続いて公会堂中集会室にされたのは、ピアノのレイアウトに拘ってということですな。ピアノを4台も贅沢に使うのだから、もっと音のいいところで聴きたいとも思ったが、この演出なら通常のホールでは無理。
去年の”三ツ矢サイダーのマーク”はピアノ3台がその先端をくっつけていたので音が交錯し、どのピアノがどのパートを演奏しているかが分析出来なかったけれど、今回は4台のピアノは限界まで遠く離れて、それぞれが何を奏でているかは解りやすくなった。が、やはり真後ろが聴き取り辛くて・・・。首を何度も捻って、肩凝っちゃいましたよ。
しかし、まァ、ピアノ4台に囲まれるなど、当然初めての体験。いや、他の楽器でもほとんどあり得ない。そのアイディアも面白く、初めて聴いたリスト版4台8手も卒無くまとまっているように感じられました。最初こそ、どっちを向いていいか分からなかったのですが、第3楽章辺りで要領を得て、ストーリーに没頭出来るようになって、第4〜第5楽章では照明まで明滅、もう劇的な臨場感を覚え、自ら「魔女の夜宴」に列席しているような気になってしまいました。・・・が、ワタシは別に”いけないおクスリ”を服用している訳ではありません。

リストが試みた4台8手、変則レイアウトでの「幻想交響曲」。その夢想的ストーリーの中に聴衆を引き入れようとしたのでしょう。オーケストラ版よりもよりプリミティヴな、鍵盤打楽器としてのピアノ。そのアルカイックなビートの只中にリスナーを追い込んで、「ワルプルギスの夜の夢」を演出しよう、魔女のサバトを体感させようと企てたのでしょうか。『怒りの日(Dies Irae)』で寒からしめようというのは、ちょっと悪趣味に過ぎるような気もします。面白いけど・・・。
全ては悪夢、演奏が終われば醒めてしまう。

IMG_1802.jpg
IMG_1801.jpg

毎回趣向を凝らす『ピアノ・スペクタキュラー』。まさか、ピアノの配置が”キモ”だとは、恐れ入りました。
次回はどの楽曲がどうトランスクリプションされるのか、どんな演出でアレンジメントされるのか、今からすでに心待ち。

そうそう、『トランスクリプション・プログラム』と言えば、我らが「ワンコイン市民コンサートシリーズ」の11月12日(日)公演は『松尾久美ピアノリサイタル〈全改編曲プログラム〉 ~ 作曲者と改編者の間に横たわるのは愛か妬みか?』。
大阪大学会館常設の1920年製Bösendorfer252で演奏されるのは、さて、どんな曲? それがどうトランスクリプションされて、どうアレンジメントされるのか。ご興味のある方は是非ぜひ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント